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呼び止める者。
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普通に商売物を摘んだ荷馬車であればあり得ないほどの速さでバルトロメイは運ばれ、ロダーが言っていた『町』だと思われる塀が見えてきた。
今までバルトロメイが旅をしてきた中で大きな町と言えば、ドファーニ商会が支店を置いていた町ひとつだったが、魔物や魔獣に対する防御力が高く冒険者も集まりやすい場所だったこともあり、特に頑健な囲いがあったわけでもなく、見上げるほど高い切り出し石を積み上げた塀というのは初めて見る。
そしてここに来るまでにすれ違った者もなく、さっきの商人に紹介できる者に託できなかったことだけが心残りだ。
「まったくもう……エンもヤシャもどうしたのさ?いつもより悪い子で……さっきも困っていた人がいたのに。あ、でもなんか出てくる人がいるから……」
ブツブツと文句を言いながらも前を見れば検問所があり、先ほどの商人より立派な箱型馬車が3台ほど連なって出てきた。
ドファーニたちとはまた別の商会の者らしく、護衛の数はずっと少ない。
「すいませーん」
「え?あ…何だおま……あー!!あん時のひよっこかぁ!」
「え?」
気軽に声を掛けたバルトロメイだったが、怪訝な顔で応対した冒険者に指をさされて、思わずキョトンと目を丸くした。
「え……?俺たちの前に出ていった商人……?」
これからバルトロメイが来た方へ行こうとしていた彼らは何故か立ち止まり、少年が声を掛けられたという状況を詳しく知りたがった。
わざわざ護衛と一緒に検問所に戻ってまで聞きに行ってくれた商人が戻って来て、バルトロメイが会ったという人物の記録はないと伝えに来る。
「やはりこの町から出ていった商人……いや、こちらの門から出ていった者は、今日はいないそうだ。だいたい我々以外でこの町から行商に出る予定は2日後だったから、今日を出立日と決めたのだしな」
「え?そうなんですか?」
「ああ。行商隊が一斉に発ってしまったら冒険者たちがみんな町からいなくなってしまうし、街道は混んでしまうし、何より商売が成り立たなくなってしまうからね」
「俺たち冒険者だって護衛をやるったって、相手にするのはほとんど魔獣だし、人間だって山賊とか野盗とかだ。同じ冒険者同士が傷つけ合ったり殺し合ったりしたら、それこそいくらいたって足りねぇよ」
どうやらこの行商隊の責任者だという柔らかい印象の男が、何が起きているのかわかっていないバルトロメイに説明してくれる。
それに口を添えてさらに付け加えるのはドファーニ商会の後方護衛についていた冒険者で、彼がいてくれたからこそバルトロメイの身元も証明してくれたし、おかげで話を聞かせてもらえた。
「とにかく君が言っていた人相の人間がこの町の……少なくとも、こちらの門から出ていないことは確かだね。ひょっとしたらこの先で待ち伏せしているかもしれないけれど、教えてもらったから警戒もできるしね」
「それにあれだな……珍しくお前さんが手を貸さなかったっていう奴らも怪しいな。おい、お前ら2,3人斥候で……ああそうだな」
今回の護衛のリーダーである男が冒険者たちに向かって指示を出すと、比較的身綺麗な格好をした男女が頷いて馬を相乗りでさっさと駆け出した。
今までバルトロメイが旅をしてきた中で大きな町と言えば、ドファーニ商会が支店を置いていた町ひとつだったが、魔物や魔獣に対する防御力が高く冒険者も集まりやすい場所だったこともあり、特に頑健な囲いがあったわけでもなく、見上げるほど高い切り出し石を積み上げた塀というのは初めて見る。
そしてここに来るまでにすれ違った者もなく、さっきの商人に紹介できる者に託できなかったことだけが心残りだ。
「まったくもう……エンもヤシャもどうしたのさ?いつもより悪い子で……さっきも困っていた人がいたのに。あ、でもなんか出てくる人がいるから……」
ブツブツと文句を言いながらも前を見れば検問所があり、先ほどの商人より立派な箱型馬車が3台ほど連なって出てきた。
ドファーニたちとはまた別の商会の者らしく、護衛の数はずっと少ない。
「すいませーん」
「え?あ…何だおま……あー!!あん時のひよっこかぁ!」
「え?」
気軽に声を掛けたバルトロメイだったが、怪訝な顔で応対した冒険者に指をさされて、思わずキョトンと目を丸くした。
「え……?俺たちの前に出ていった商人……?」
これからバルトロメイが来た方へ行こうとしていた彼らは何故か立ち止まり、少年が声を掛けられたという状況を詳しく知りたがった。
わざわざ護衛と一緒に検問所に戻ってまで聞きに行ってくれた商人が戻って来て、バルトロメイが会ったという人物の記録はないと伝えに来る。
「やはりこの町から出ていった商人……いや、こちらの門から出ていった者は、今日はいないそうだ。だいたい我々以外でこの町から行商に出る予定は2日後だったから、今日を出立日と決めたのだしな」
「え?そうなんですか?」
「ああ。行商隊が一斉に発ってしまったら冒険者たちがみんな町からいなくなってしまうし、街道は混んでしまうし、何より商売が成り立たなくなってしまうからね」
「俺たち冒険者だって護衛をやるったって、相手にするのはほとんど魔獣だし、人間だって山賊とか野盗とかだ。同じ冒険者同士が傷つけ合ったり殺し合ったりしたら、それこそいくらいたって足りねぇよ」
どうやらこの行商隊の責任者だという柔らかい印象の男が、何が起きているのかわかっていないバルトロメイに説明してくれる。
それに口を添えてさらに付け加えるのはドファーニ商会の後方護衛についていた冒険者で、彼がいてくれたからこそバルトロメイの身元も証明してくれたし、おかげで話を聞かせてもらえた。
「とにかく君が言っていた人相の人間がこの町の……少なくとも、こちらの門から出ていないことは確かだね。ひょっとしたらこの先で待ち伏せしているかもしれないけれど、教えてもらったから警戒もできるしね」
「それにあれだな……珍しくお前さんが手を貸さなかったっていう奴らも怪しいな。おい、お前ら2,3人斥候で……ああそうだな」
今回の護衛のリーダーである男が冒険者たちに向かって指示を出すと、比較的身綺麗な格好をした男女が頷いて馬を相乗りでさっさと駆け出した。
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