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お席間違ってませんか?

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そんなヴィヴィニーアの忍耐力を試される時間が、まさかこんな接待の席であろうとは。
「いやはや!さすがラーウェン属王国の姫君!お美しさはかねがね!!」
「……さようですか」
いったいどうして自分は下座に座らされ、自分の婚約者は自分の隣にいないのか。
立食式のパーティーではないため、ガウシェーン公国大公殿下であるマレク・デミアン・ガウシェーンと名乗った男のそばに席を変えることもできない。
しかも何故か自分の横には、ロメリアとは違ってしっかりとメイクを施し──大聖女であるロメリアはほぼ化粧をする必要がないほど美しい肌にほんのわずか光るおしろいと瑞々しい薄紅色の口紅を差しただけであり、義姉である王太子妃リーニャも公式の場に出る時ですら過剰な化粧をしない──料理どころか鼻に近付けたグラスに注がれたワインの香りすらわからなくなるほどの香水をつけるそれこそガウシェーン大公の妹君であるエミリア殿下が座っている。
「……で、ですのねぇ。ねぇ、そうでしょう?」
「……ッチ」
「……そうお思いになるでしょっ!?ねぇ、やっぱりお似合いよねっ!我が兄とあなた様の妹君!」
「は?」
怪訝な顔をしたのはヴィヴィニーアとは逆のエミリア殿下横に同席させられていた、ロメリアの専属従者であるアディーベルト・ギャラウ・ドルントであり、同じ言葉を放ちながらヴィヴィニーアは先ほどまで何とか繕っていた優しさの仮面を思いっきり脱ぎ捨てて、強い匂いと共に身を寄せてきたエミリア殿下を蔑みの目で睨んだ。
「……私に妹はおりませんが」
「え?ではあの娘はなぁに?ヴィヴィ様と同等に扱えと通達されたのよ?まさかご愛人ですの?」
「…………ガウシェーン公国公女殿下、わたくしはダーウィネット属王国第二王子としてこちらにおります。親しく名を呼ばれますと、周りに在らぬ誤解を招かれるため、正式な名をお呼びください」
「あらぁ!誤解なんてぇ……よろしいじゃありませんの!いずれ夫婦になるのですもの!今から愛称で呼び慣れておきませんと……よろしければ、わたくしのことは『リア』と」
「……大公殿もあなたも何か誤解されているようですが、わたくしの婚約者は何故かわたくしの席から離されているようですが、どのような理由で?」
「え?え?な、何のことやら………」
ヴィヴィニーアの冷たい視線にようやく気付いたようで、エミリアの言葉と視線が揺れる。
しかもどうやらロメリアがヴィヴィニーアの婚約者であることはきちんと認識された上で、わざと『妹君を連れてこられた』という『誤解情報があった』という建前で、今回このように引き離されたことを理解した。
「……なるほど。私の『リア』をお側に置かれるように手配されたのは大公殿下のご意志ではなく、宰相殿以下采配役が手違えと?」
「そ、そうかもしれませんわね、オホホ……」
どうやらエミリア殿下は嘘というか腹芸ができないらしい。
そう思いながらアディーベルトは自分も含め、下座にいる招待客はなかなか美形の男性ばかりがおり、逆に上座にいる大公殿下のそばには大聖女ロメリアだけでなく自分の妻であるホムラや、候補らしい美女がおそらくその地位に合わせて座らされているのを見て、ヴィヴィニーアに劣らず不機嫌な顔になった。


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