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どうしてこうなった...
部屋の蝋燭がラモンのそれは白く美しい顔を照らし、彼は依然と私に微笑み続けている。この状況はなんだ?
「本当に君は何も知らないんですか?何かひとつくらい知っているのではないですか?それともまだ信用しきれていないと?」
信用も何もあったもんじゃない!名前も偽るしこの胡散臭い笑みが何よりもの怪しい証拠!!
「はあ。あなたは8歳で孤児院に預けられたと聞きました。個人的なことを院長に聞いてしまったことは謝りますが、その亡くなられたお母様はあなたに何か言ってはいませんでしたか?」
私は思い出す、母様とのことを....
母様はなぜあの日殺されなくてはならなかったの...
****
母様はそれはそれは美しく気品に満ちた優しい人でした。
父様は私が生まれた時からいないらしく、母様の実家伯爵家で育ちました。しかし、あの頃は気づきませんでしたが、今となってはわかります。私たちはおそらく伯爵家に歓迎されていなかたのでしょう、伯爵家の裏庭にある小さな古い館で私と母様、そして数人の召使とともに生活していました。
「母様お花あげる」
この秘密の裏庭にはたくさんの種類の草花が植えられ、この館で最も手入れされている場所でした。母様と私の不自由を思ってのことか、祖父のしてくれる最大限の償いだったのかもしれません。
「この花、母様好きでしょ?」
スイートピーをそっと母様に渡すと、少し驚いた表情をしてから丁寧に受け取ってくれました。
「ありがとう、ソフィー。」
そしてついにあの日はやってきました。
私はあの夜まで伯爵家の者以外を見たことがなく、いいえ、興味を持つことのないように避けるように暮らしてきたため、あの男の一言に衝撃を受けました。
「本当にいたのか?月の女神に使えし氏族の見目を引き継ぐ娘というのは。なんと不吉な...」
真っ白い服に銀色の剣を持つその大きな体の男に、私は斬りかかられそうになったのです。そしてその男の瞳はあの夜の空に浮かぶ満月と同じ色をしていたのです。
バサッ
剣が何かを切りつける音と胸をくすぐる優しい香りがしました。
「母様ーいやぁぁぁ」
私の悲鳴を聞きつけ伯爵家の家来たちがこの場に駆けつけると同時に、あの男は姿を消しました。
「早くお医者様を」
大人たちが騒いでいる中、真っ白の寝具を赤く染める母様を私は泣きながら抱きしめていました。
「母様、死なないで、いやだ」
幼い子供にでもわかる母様の温もりが徐々に下がっていくこの状況に私は完全に取り乱していました。
「ソフィー。夜のお外に出てはだめだと言ったでしょう?特にこんな満月の夜は危ないわ...」
「母様約束破ってごめんなさい。もう二度としないからだから許して、死なないで」
母様は苦しいはずなのに精一杯の笑顔を私に向けた。
「もちろんよ、ソフィー。誰よりも愛してるわ。幸せになってね。」
それから後のことは覚えていません。
****
私は唇を噛みしめ俯いていた。何度思い出してもこの悲しみと憎しみは止んでくれない。
あの後、私は初めて祖父に会って、二度と伯爵家に関わらないことを約束することを条件に、母様を伯爵家の裏庭に葬り弔ってもらうことになった。母様の好きなスイートピーがたくさん咲き誇るあの場所で。
それからこの孤児院に預けられ今に至る。私が母様から教えられていたこと、それは...
「母様は私に、夜に外を出歩かないことを言っていました。それなのにあの夜私は外を興味本位で歩いてしまった。母様との約束を破ってしまった...だから母様は...」
そっと背中をさすられる、ラモンの温もりが伝わる。
「ごめんなさい...嫌なことを思い出させてしまって...ソフィーは強い。」
私の震えた肩が治るまでラモンはそばに居てくれた。
「でも、ソフィー。夜に出歩くことは僕も賛成しません。なぜなら夜は...」
トントン
突然ドアのノックがする。
「モリス様。モリス様の従者様がおいでになっております。」
「わかった。今いく。」
ラモンは名残惜しそうに私の隣から立ち上がると下に降りていった。
私はそんなラモンを窓際からそっと覗いた。
ラモンと話している従者..どこかで見たことが.....
それがわかった瞬間、全身に血流が洪水のように巡った。
そう、彼があの時の男だったからだ。
部屋の蝋燭がラモンのそれは白く美しい顔を照らし、彼は依然と私に微笑み続けている。この状況はなんだ?
「本当に君は何も知らないんですか?何かひとつくらい知っているのではないですか?それともまだ信用しきれていないと?」
信用も何もあったもんじゃない!名前も偽るしこの胡散臭い笑みが何よりもの怪しい証拠!!
「はあ。あなたは8歳で孤児院に預けられたと聞きました。個人的なことを院長に聞いてしまったことは謝りますが、その亡くなられたお母様はあなたに何か言ってはいませんでしたか?」
私は思い出す、母様とのことを....
母様はなぜあの日殺されなくてはならなかったの...
****
母様はそれはそれは美しく気品に満ちた優しい人でした。
父様は私が生まれた時からいないらしく、母様の実家伯爵家で育ちました。しかし、あの頃は気づきませんでしたが、今となってはわかります。私たちはおそらく伯爵家に歓迎されていなかたのでしょう、伯爵家の裏庭にある小さな古い館で私と母様、そして数人の召使とともに生活していました。
「母様お花あげる」
この秘密の裏庭にはたくさんの種類の草花が植えられ、この館で最も手入れされている場所でした。母様と私の不自由を思ってのことか、祖父のしてくれる最大限の償いだったのかもしれません。
「この花、母様好きでしょ?」
スイートピーをそっと母様に渡すと、少し驚いた表情をしてから丁寧に受け取ってくれました。
「ありがとう、ソフィー。」
そしてついにあの日はやってきました。
私はあの夜まで伯爵家の者以外を見たことがなく、いいえ、興味を持つことのないように避けるように暮らしてきたため、あの男の一言に衝撃を受けました。
「本当にいたのか?月の女神に使えし氏族の見目を引き継ぐ娘というのは。なんと不吉な...」
真っ白い服に銀色の剣を持つその大きな体の男に、私は斬りかかられそうになったのです。そしてその男の瞳はあの夜の空に浮かぶ満月と同じ色をしていたのです。
バサッ
剣が何かを切りつける音と胸をくすぐる優しい香りがしました。
「母様ーいやぁぁぁ」
私の悲鳴を聞きつけ伯爵家の家来たちがこの場に駆けつけると同時に、あの男は姿を消しました。
「早くお医者様を」
大人たちが騒いでいる中、真っ白の寝具を赤く染める母様を私は泣きながら抱きしめていました。
「母様、死なないで、いやだ」
幼い子供にでもわかる母様の温もりが徐々に下がっていくこの状況に私は完全に取り乱していました。
「ソフィー。夜のお外に出てはだめだと言ったでしょう?特にこんな満月の夜は危ないわ...」
「母様約束破ってごめんなさい。もう二度としないからだから許して、死なないで」
母様は苦しいはずなのに精一杯の笑顔を私に向けた。
「もちろんよ、ソフィー。誰よりも愛してるわ。幸せになってね。」
それから後のことは覚えていません。
****
私は唇を噛みしめ俯いていた。何度思い出してもこの悲しみと憎しみは止んでくれない。
あの後、私は初めて祖父に会って、二度と伯爵家に関わらないことを約束することを条件に、母様を伯爵家の裏庭に葬り弔ってもらうことになった。母様の好きなスイートピーがたくさん咲き誇るあの場所で。
それからこの孤児院に預けられ今に至る。私が母様から教えられていたこと、それは...
「母様は私に、夜に外を出歩かないことを言っていました。それなのにあの夜私は外を興味本位で歩いてしまった。母様との約束を破ってしまった...だから母様は...」
そっと背中をさすられる、ラモンの温もりが伝わる。
「ごめんなさい...嫌なことを思い出させてしまって...ソフィーは強い。」
私の震えた肩が治るまでラモンはそばに居てくれた。
「でも、ソフィー。夜に出歩くことは僕も賛成しません。なぜなら夜は...」
トントン
突然ドアのノックがする。
「モリス様。モリス様の従者様がおいでになっております。」
「わかった。今いく。」
ラモンは名残惜しそうに私の隣から立ち上がると下に降りていった。
私はそんなラモンを窓際からそっと覗いた。
ラモンと話している従者..どこかで見たことが.....
それがわかった瞬間、全身に血流が洪水のように巡った。
そう、彼があの時の男だったからだ。
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