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馬車が留まった。
扉が開くとそこには真っ白に光り輝く宮殿があった。人のスケールを超えた巨大な柱に、細やかな装飾が施され、その部分を見ても神聖な場所であることが一目でわかるような空間だった。中心には池のように巨大な噴水がそびえ立ち、落ち葉一つ落とさない庭園は荘厳だった。
神官達なのだろうか、ラモンの着ている服のマークが刺繍された青い衣を着た人たちに馬車を降りるのを手伝ってもらった。初めて乗った馬車だから体がふわふわするし、この真っ白な空間もなんか気持ちをふわふわさせる、天空の国に降り立ったみたいだ。
殿下は優しい笑顔を浮かべ、
「またいずれお会いしましょう。」
と一言残して帰っていってしまった。
そしてさっきから、いえ、ずーっと前から聞きたいことがあります。
聖女って何?
そしてなんで私、ラモンに強制同行させられているの?
です。
そんな私に構うこともなくラモンが侍女?に何やら指示を出すと、また後でねと言ってどこかに消えてしまった。
「さあ、聖女様!どうぞこちらに何から何まで任せてくださいまし!」
腕をたくしあがた侍女さんが近づいてきた。
***
まず風呂に入れられ、髪を洗われ...そして私の瞳を見て、やはり侍女さんは一瞬固まった。
「聖女様の瞳のお色は...」
といいかけ首を振りまた私を洗うのに専念してくれる。
後から話を聞くと、この侍女さんはマリーというらしい。神官の家系のさらに傍系にあたる彼女は、髪は黄金色でカーブがかかり、瞳の色はサファイアのような青をしている、母性溢れる美人さんだ。年齢は20代かな?聞けなかたっけど。
そして私は、真っ白な衣に手を通させられる。絹織物で、よく見ると透かし模様が入った最高級品だ。最初はこんな高級なものと、嫌がっていた私も、マリーに丸め込まれ着ることにした。ラモンからの指示みたいだし。
鏡の前に立つと、私は別人のような服装をしていたが、髪の毛は相変わらず、艶は出たものの、顔のほとんどを覆い隠し、足元まで伸びている。
「ソフィー様。椅子に座ってください。」
私は鏡を向いたまま椅子に座った。
優しい手つきでマリーが私の前髪の方からゆっくり持ち上げる。
ガラスから暖かな光が差し込み、私の虹彩がキラキラと反射する。
私ってこういう顔だったんだ...
不意に涙が頬を伝った。
いつからだろう、私は自分の顔を鏡で見ることはなくなった。
母が殺された日に、言われたあの言葉がどうしても私の容姿を許してくれなかった。
常に前髪で瞳と顔を隠し、自分から自分であろうとすることを遠ざけていた。
鏡の向こうには、母の面影を残す、大きくなった私がいた。笑顔に涙を浮かべた自分、私はまたそれを見て泣きたくなった。
「ソフィー様、いかがされましたか?前髪をあげれるのは泣くほど嫌なことでしたか?」
「そういうわけではなくて。訳あって、私鏡で自分の顔見るのとっても久しぶりだったんだ。だから、その、」
「ソフィー様、もったいないでございますわよ!こんなに綺麗なお顔をされていますのに!きっと、月の女神様を見ることができたなら、ソフィー様のような容姿なのでしょうね。」
陶酔気味の表情でマリーが鏡の中の私を見つめる。
「月の女神様の容姿??それはどういう感じのことを言うの?」
月の女神という言葉は、あの母を殺した男も言っていた。それは何か、知りたい。
「ですから、ソフィー様のようなお姿のことです。月色の髪に、黄金の瞳を持つ美しい女性のことですよ。」
私のポカンとした表情を見て察してくれたのか説明してくれた。
「ほら、神官たちは皆金髪に金色の瞳をしていますよね。私も傍系ですので、髪の色は彼らと同じです。しかし、なぜかその金色の髪に金色の瞳を持つのは男のみにしか発現しないのです。それは、呪いとも言われていますが、女神の特徴であるその容姿は、彼女に仕える男には遺伝しても、決して同等であろうとする女には遺伝しないというのですよ。ですから、私は、女神様と同じご容姿を持つ女性、ソフィー様を初めて見て感動したのです!」
そういうことか。
あの忌々しい男が言っていた、月の女神に仕えるという意味や容姿の話。
あの男は私を不吉に思っていたらしいが、なぜかマリーは違って私を咎めない。
「その、マリーは私みたいな異端を不吉であるようには思わないの?」
マリーは目を大きく広げ少し黙ると、話始める。
「ソフィー様、何か嫌な経験をされたのですか?確かにそう思う輩もいるかもしれません。しかし私は、そうではなく、女神様が新しい世を築き上げるため、自らを遣わしてくださったのだと、そう信じておりますわ。」
トントントン。
ノックと共にこの話は打ち切られ、ラモンのもとに案内された。
扉が開くとそこには真っ白に光り輝く宮殿があった。人のスケールを超えた巨大な柱に、細やかな装飾が施され、その部分を見ても神聖な場所であることが一目でわかるような空間だった。中心には池のように巨大な噴水がそびえ立ち、落ち葉一つ落とさない庭園は荘厳だった。
神官達なのだろうか、ラモンの着ている服のマークが刺繍された青い衣を着た人たちに馬車を降りるのを手伝ってもらった。初めて乗った馬車だから体がふわふわするし、この真っ白な空間もなんか気持ちをふわふわさせる、天空の国に降り立ったみたいだ。
殿下は優しい笑顔を浮かべ、
「またいずれお会いしましょう。」
と一言残して帰っていってしまった。
そしてさっきから、いえ、ずーっと前から聞きたいことがあります。
聖女って何?
そしてなんで私、ラモンに強制同行させられているの?
です。
そんな私に構うこともなくラモンが侍女?に何やら指示を出すと、また後でねと言ってどこかに消えてしまった。
「さあ、聖女様!どうぞこちらに何から何まで任せてくださいまし!」
腕をたくしあがた侍女さんが近づいてきた。
***
まず風呂に入れられ、髪を洗われ...そして私の瞳を見て、やはり侍女さんは一瞬固まった。
「聖女様の瞳のお色は...」
といいかけ首を振りまた私を洗うのに専念してくれる。
後から話を聞くと、この侍女さんはマリーというらしい。神官の家系のさらに傍系にあたる彼女は、髪は黄金色でカーブがかかり、瞳の色はサファイアのような青をしている、母性溢れる美人さんだ。年齢は20代かな?聞けなかたっけど。
そして私は、真っ白な衣に手を通させられる。絹織物で、よく見ると透かし模様が入った最高級品だ。最初はこんな高級なものと、嫌がっていた私も、マリーに丸め込まれ着ることにした。ラモンからの指示みたいだし。
鏡の前に立つと、私は別人のような服装をしていたが、髪の毛は相変わらず、艶は出たものの、顔のほとんどを覆い隠し、足元まで伸びている。
「ソフィー様。椅子に座ってください。」
私は鏡を向いたまま椅子に座った。
優しい手つきでマリーが私の前髪の方からゆっくり持ち上げる。
ガラスから暖かな光が差し込み、私の虹彩がキラキラと反射する。
私ってこういう顔だったんだ...
不意に涙が頬を伝った。
いつからだろう、私は自分の顔を鏡で見ることはなくなった。
母が殺された日に、言われたあの言葉がどうしても私の容姿を許してくれなかった。
常に前髪で瞳と顔を隠し、自分から自分であろうとすることを遠ざけていた。
鏡の向こうには、母の面影を残す、大きくなった私がいた。笑顔に涙を浮かべた自分、私はまたそれを見て泣きたくなった。
「ソフィー様、いかがされましたか?前髪をあげれるのは泣くほど嫌なことでしたか?」
「そういうわけではなくて。訳あって、私鏡で自分の顔見るのとっても久しぶりだったんだ。だから、その、」
「ソフィー様、もったいないでございますわよ!こんなに綺麗なお顔をされていますのに!きっと、月の女神様を見ることができたなら、ソフィー様のような容姿なのでしょうね。」
陶酔気味の表情でマリーが鏡の中の私を見つめる。
「月の女神様の容姿??それはどういう感じのことを言うの?」
月の女神という言葉は、あの母を殺した男も言っていた。それは何か、知りたい。
「ですから、ソフィー様のようなお姿のことです。月色の髪に、黄金の瞳を持つ美しい女性のことですよ。」
私のポカンとした表情を見て察してくれたのか説明してくれた。
「ほら、神官たちは皆金髪に金色の瞳をしていますよね。私も傍系ですので、髪の色は彼らと同じです。しかし、なぜかその金色の髪に金色の瞳を持つのは男のみにしか発現しないのです。それは、呪いとも言われていますが、女神の特徴であるその容姿は、彼女に仕える男には遺伝しても、決して同等であろうとする女には遺伝しないというのですよ。ですから、私は、女神様と同じご容姿を持つ女性、ソフィー様を初めて見て感動したのです!」
そういうことか。
あの忌々しい男が言っていた、月の女神に仕えるという意味や容姿の話。
あの男は私を不吉に思っていたらしいが、なぜかマリーは違って私を咎めない。
「その、マリーは私みたいな異端を不吉であるようには思わないの?」
マリーは目を大きく広げ少し黙ると、話始める。
「ソフィー様、何か嫌な経験をされたのですか?確かにそう思う輩もいるかもしれません。しかし私は、そうではなく、女神様が新しい世を築き上げるため、自らを遣わしてくださったのだと、そう信じておりますわ。」
トントントン。
ノックと共にこの話は打ち切られ、ラモンのもとに案内された。
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…(~2025/03/15)…
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