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「どうされたんですか?なにか神官長に言われましたか?」
ラモンの部屋から命辛々逃げてきた私は、やはりサングラス越しでも赤いのだろうか。マリーに心配されてしまう。
心配というよりニヤニヤしているけど。
マリーに案内されてラモンが用意してくれた私の部屋に向かう。使用人が使うような部屋を想定したいたけど、こ、これ絵本に出てくるお嬢様の部屋みたい!!!
白ベースで揃えられたインテリアは、シンプルだけど女の子らしい部屋だった。真っ白な天幕付きのふかふかのベットに、ふわふわ絨毯。カトラリーやカップにソーサー、食器も、細かな花柄が描かれた高級なものだった。
目を丸くして立ち尽くす私を、そっと近くのソファーにマリーは座らせると、紅茶をなれた手つきで淹れてくれた。
その横に何やら分厚い本がそっと置かれる。
「ソフィー様。差し出がましいようですが、神官一族に伝わる月の女神に関する神話の写しをご用意させていただきました。よろしければ一読してみてください。」
そうか。私、いくら偽ものでも聖女名乗るんだったら、神話くらいすらすら言えないとダメよね。あいつが言ってた月の女神についてもお勉強しないと。
私はその分厚い書物を手に取るのだった。
******
美しかった。
黄金の瞳を持つ己を一度は呪ったというのに、彼女の瞳は全てを飲み込むほどに美しく澄んでいた。
僕の名は、ラモン・ラスティーノ。本名を信用ならぬものに言えば、呪われる可能性があるため、上に立つものは普通名乗らない。だからラモンというのは偽名だ。
彼女、ソフィーは、実はラスティーノ一族では有名だ。私の父の叔父は、伯爵の娘と非公式ではあったが結ばれ、その間に二人の子供を授かった。双方ともに女神の姿、ラスティーノ一族の特徴を強く持つ子供だった。上の兄は、ラスティーノ本家が養子として引き取ることになったのだが、問題なのは下の子供が女であることだった。ラスティーノ家の遺伝は男のみに発現するはずで、女に遺伝することは滅多にないことであったし、不吉な兆候として伝えられている。伝書によれば、その子供が誕生する年より、夜間に魔物の数が圧倒的に増加し、災害に見舞われ、国が転覆するとまで言われている。事実かどうかわからない、確かにある確率で女児が生まれるのは確かだが、長生きはできなかったのかもしれない。またそれと同時に、聖女が誕生することも記されていた。しかし、これはただの作り話、信憑性には欠ける。
それからその女児をどうしたかというと、流石に殺すのは心苦しかったのか、妻の家である伯爵家で幽閉されたと聞いていた。それなのに、その母が突然亡くなり、孤児院に娘が出されたと知ったのは、信託を受け彼女について調べたつい最近のことだった。
そう、僕は女神の信託を受けることができる。女神がこう告げたのだ、
晴わたる日和の午後、シュラの森、奥深くの湖で私と似て異なる容姿を持つ娘に会いなさいと。
はじめその信託の真意がわからなかった。
会ってどうするというのだ、捕まえるのか、殺すのか。考えてもわからない、まずその娘にあってそのとき受けた信託によって対処しようと決め、あの日僕は湖へと向かったのだった。
湖のほとりに、月色の髪の娘が水を汲んでいた。
娘はひどく長い髪の毛が邪魔なのか、前髪をかきあげている。思わず僕はその瞳の色を確認しようと、地面に体をつけながら彼女の表情を覗き込んだ。
すると、呆れるほど晴れていた空が急に雲で覆われ、光が二筋、僕と彼女に注がれたのだった。
あの光景は人生で見た中で最も神々しかった。そのときの温かい光を体で感じた僕は、女神の真意を知ることになる。
彼女を助けてあげて。
案の定、気の良さそうな娘は僕が行き倒れていると勘違いしたのかこちらへ向かってくる。ちょうど良い。
まあ、その後顔に水かけられるわ、ハンカチでべたっと押さえつけられるわで、雑な扱いを受けたけれども。
その後、彼女を迎えに来た神官とともに、明朝、神殿に戻るつもりでいた。しかし、予定が崩れた。彼女が夜だというのに外に出てしまったのだ。彼女がひどく怒り怯えた表情をあの神官にむけていた意図がいまだよく分からない...
それに加えて、また厄介だったのはあの男だ。ヨド帝国のハルミド殿下、あの男に向けるソフィーの視線がまず気に入らないし、月の女神を信仰するマリーナ教会に対して、闇の神を信仰するヨド帝国にあまり貸しをつくりたくはなかったのだが.....仕方ない。
ダメだ、また先ほどの事を思い出してしまう。僕は気を取り直そうとステンドガラスから中庭をみる。
今まで前髪で覆われていて彼女の顔を正確に見たのはあの時が初めてのことだった。
美しかった。
白く薄く輝くような透明感のある肌に、月の女神への想像をかき立てられる顔の造形美。ほんのりと赤い頬に、薄紅珊瑚色の唇。あんなに綺麗な娘だとは思っていなかった。
サングラスを外して、後悔した。
ああ、なんて綺麗なんだろう。もう、彼女を他の男に見せたくない。
大切な宝物をこっそり隠してしまいたくなる、そんな自分に気づいてしまったが苦しかったから。
ラモンの部屋から命辛々逃げてきた私は、やはりサングラス越しでも赤いのだろうか。マリーに心配されてしまう。
心配というよりニヤニヤしているけど。
マリーに案内されてラモンが用意してくれた私の部屋に向かう。使用人が使うような部屋を想定したいたけど、こ、これ絵本に出てくるお嬢様の部屋みたい!!!
白ベースで揃えられたインテリアは、シンプルだけど女の子らしい部屋だった。真っ白な天幕付きのふかふかのベットに、ふわふわ絨毯。カトラリーやカップにソーサー、食器も、細かな花柄が描かれた高級なものだった。
目を丸くして立ち尽くす私を、そっと近くのソファーにマリーは座らせると、紅茶をなれた手つきで淹れてくれた。
その横に何やら分厚い本がそっと置かれる。
「ソフィー様。差し出がましいようですが、神官一族に伝わる月の女神に関する神話の写しをご用意させていただきました。よろしければ一読してみてください。」
そうか。私、いくら偽ものでも聖女名乗るんだったら、神話くらいすらすら言えないとダメよね。あいつが言ってた月の女神についてもお勉強しないと。
私はその分厚い書物を手に取るのだった。
******
美しかった。
黄金の瞳を持つ己を一度は呪ったというのに、彼女の瞳は全てを飲み込むほどに美しく澄んでいた。
僕の名は、ラモン・ラスティーノ。本名を信用ならぬものに言えば、呪われる可能性があるため、上に立つものは普通名乗らない。だからラモンというのは偽名だ。
彼女、ソフィーは、実はラスティーノ一族では有名だ。私の父の叔父は、伯爵の娘と非公式ではあったが結ばれ、その間に二人の子供を授かった。双方ともに女神の姿、ラスティーノ一族の特徴を強く持つ子供だった。上の兄は、ラスティーノ本家が養子として引き取ることになったのだが、問題なのは下の子供が女であることだった。ラスティーノ家の遺伝は男のみに発現するはずで、女に遺伝することは滅多にないことであったし、不吉な兆候として伝えられている。伝書によれば、その子供が誕生する年より、夜間に魔物の数が圧倒的に増加し、災害に見舞われ、国が転覆するとまで言われている。事実かどうかわからない、確かにある確率で女児が生まれるのは確かだが、長生きはできなかったのかもしれない。またそれと同時に、聖女が誕生することも記されていた。しかし、これはただの作り話、信憑性には欠ける。
それからその女児をどうしたかというと、流石に殺すのは心苦しかったのか、妻の家である伯爵家で幽閉されたと聞いていた。それなのに、その母が突然亡くなり、孤児院に娘が出されたと知ったのは、信託を受け彼女について調べたつい最近のことだった。
そう、僕は女神の信託を受けることができる。女神がこう告げたのだ、
晴わたる日和の午後、シュラの森、奥深くの湖で私と似て異なる容姿を持つ娘に会いなさいと。
はじめその信託の真意がわからなかった。
会ってどうするというのだ、捕まえるのか、殺すのか。考えてもわからない、まずその娘にあってそのとき受けた信託によって対処しようと決め、あの日僕は湖へと向かったのだった。
湖のほとりに、月色の髪の娘が水を汲んでいた。
娘はひどく長い髪の毛が邪魔なのか、前髪をかきあげている。思わず僕はその瞳の色を確認しようと、地面に体をつけながら彼女の表情を覗き込んだ。
すると、呆れるほど晴れていた空が急に雲で覆われ、光が二筋、僕と彼女に注がれたのだった。
あの光景は人生で見た中で最も神々しかった。そのときの温かい光を体で感じた僕は、女神の真意を知ることになる。
彼女を助けてあげて。
案の定、気の良さそうな娘は僕が行き倒れていると勘違いしたのかこちらへ向かってくる。ちょうど良い。
まあ、その後顔に水かけられるわ、ハンカチでべたっと押さえつけられるわで、雑な扱いを受けたけれども。
その後、彼女を迎えに来た神官とともに、明朝、神殿に戻るつもりでいた。しかし、予定が崩れた。彼女が夜だというのに外に出てしまったのだ。彼女がひどく怒り怯えた表情をあの神官にむけていた意図がいまだよく分からない...
それに加えて、また厄介だったのはあの男だ。ヨド帝国のハルミド殿下、あの男に向けるソフィーの視線がまず気に入らないし、月の女神を信仰するマリーナ教会に対して、闇の神を信仰するヨド帝国にあまり貸しをつくりたくはなかったのだが.....仕方ない。
ダメだ、また先ほどの事を思い出してしまう。僕は気を取り直そうとステンドガラスから中庭をみる。
今まで前髪で覆われていて彼女の顔を正確に見たのはあの時が初めてのことだった。
美しかった。
白く薄く輝くような透明感のある肌に、月の女神への想像をかき立てられる顔の造形美。ほんのりと赤い頬に、薄紅珊瑚色の唇。あんなに綺麗な娘だとは思っていなかった。
サングラスを外して、後悔した。
ああ、なんて綺麗なんだろう。もう、彼女を他の男に見せたくない。
大切な宝物をこっそり隠してしまいたくなる、そんな自分に気づいてしまったが苦しかったから。
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