年下神官長殿にエセ聖女やらされてます

にんじんうまい

文字の大きさ
7 / 17

07

しおりを挟む
「どうされたんですか?なにか神官長に言われましたか?」

ラモンの部屋から命辛々逃げてきた私は、やはりサングラス越しでも赤いのだろうか。マリーに心配されてしまう。
心配というよりニヤニヤしているけど。

マリーに案内されてラモンが用意してくれた私の部屋に向かう。使用人が使うような部屋を想定したいたけど、こ、これ絵本に出てくるお嬢様の部屋みたい!!!
白ベースで揃えられたインテリアは、シンプルだけど女の子らしい部屋だった。真っ白な天幕付きのふかふかのベットに、ふわふわ絨毯。カトラリーやカップにソーサー、食器も、細かな花柄が描かれた高級なものだった。

目を丸くして立ち尽くす私を、そっと近くのソファーにマリーは座らせると、紅茶をなれた手つきで淹れてくれた。
その横に何やら分厚い本がそっと置かれる。

「ソフィー様。差し出がましいようですが、神官一族に伝わる月の女神に関する神話の写しをご用意させていただきました。よろしければ一読してみてください。」


そうか。私、いくら偽ものでも聖女名乗るんだったら、神話くらいすらすら言えないとダメよね。あいつが言ってた月の女神についてもお勉強しないと。



私はその分厚い書物を手に取るのだった。




******




美しかった。
黄金の瞳を持つ己を一度は呪ったというのに、彼女の瞳は全てを飲み込むほどに美しく澄んでいた。



僕の名は、ラモン・ラスティーノ。本名を信用ならぬものに言えば、呪われる可能性があるため、上に立つものは普通名乗らない。だからラモンというのは偽名だ。

彼女、ソフィーは、実はラスティーノ一族では有名だ。私の父の叔父は、伯爵の娘と非公式ではあったが結ばれ、その間に二人の子供を授かった。双方ともに女神の姿、ラスティーノ一族の特徴を強く持つ子供だった。上の兄は、ラスティーノ本家が養子として引き取ることになったのだが、問題なのは下の子供が女であることだった。ラスティーノ家の遺伝は男のみに発現するはずで、女に遺伝することは滅多にないことであったし、不吉な兆候として伝えられている。伝書によれば、その子供が誕生する年より、夜間に魔物の数が圧倒的に増加し、災害に見舞われ、国が転覆するとまで言われている。事実かどうかわからない、確かにある確率で女児が生まれるのは確かだが、長生きはできなかったのかもしれない。またそれと同時に、聖女が誕生することも記されていた。しかし、これはただの作り話、信憑性には欠ける。
それからその女児をどうしたかというと、流石に殺すのは心苦しかったのか、妻の家である伯爵家で幽閉されたと聞いていた。それなのに、その母が突然亡くなり、孤児院に娘が出されたと知ったのは、信託を受け彼女について調べたつい最近のことだった。


そう、僕は女神の信託を受けることができる。女神がこう告げたのだ、

晴わたる日和の午後、シュラの森、奥深くの湖で私と似て異なる容姿を持つ娘に会いなさいと。

はじめその信託の真意がわからなかった。
会ってどうするというのだ、捕まえるのか、殺すのか。考えてもわからない、まずその娘にあってそのとき受けた信託によって対処しようと決め、あの日僕は湖へと向かったのだった。


湖のほとりに、月色の髪の娘が水を汲んでいた。
娘はひどく長い髪の毛が邪魔なのか、前髪をかきあげている。思わず僕はその瞳の色を確認しようと、地面に体をつけながら彼女の表情を覗き込んだ。

すると、呆れるほど晴れていた空が急に雲で覆われ、光が二筋、僕と彼女に注がれたのだった。


あの光景は人生で見た中で最も神々しかった。そのときの温かい光を体で感じた僕は、女神の真意を知ることになる。


彼女を助けてあげて。


案の定、気の良さそうな娘は僕が行き倒れていると勘違いしたのかこちらへ向かってくる。ちょうど良い。


まあ、その後顔に水かけられるわ、ハンカチでべたっと押さえつけられるわで、雑な扱いを受けたけれども。



その後、彼女を迎えに来た神官とともに、明朝、神殿に戻るつもりでいた。しかし、予定が崩れた。彼女が夜だというのに外に出てしまったのだ。彼女がひどく怒り怯えた表情をあの神官にむけていた意図がいまだよく分からない...
それに加えて、また厄介だったのはあの男だ。ヨド帝国のハルミド殿下、あの男に向けるソフィーの視線がまず気に入らないし、月の女神を信仰するマリーナ教会に対して、闇の神を信仰するヨド帝国にあまり貸しをつくりたくはなかったのだが.....仕方ない。


ダメだ、また先ほどの事を思い出してしまう。僕は気を取り直そうとステンドガラスから中庭をみる。
今まで前髪で覆われていて彼女の顔を正確に見たのはあの時が初めてのことだった。

美しかった。
白く薄く輝くような透明感のある肌に、月の女神への想像をかき立てられる顔の造形美。ほんのりと赤い頬に、薄紅珊瑚色の唇。あんなに綺麗な娘だとは思っていなかった。

サングラスを外して、後悔した。
ああ、なんて綺麗なんだろう。もう、彼女を他の男に見せたくない。
大切な宝物をこっそり隠してしまいたくなる、そんな自分に気づいてしまったが苦しかったから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】

青緑 ネトロア
恋愛
女神に今代の聖女として選定されたメリシャは二体の神獣を授かる。 親代わりの枢機卿と王都を散策中、初対面の王子によって婚約者に選ばれてしまう。法衣貴族の義娘として学園に通う中、王子と会う事も関わる事もなく、表向き平穏に暮らしていた。 辺境で起きた魔物被害を食い止めたメリシャは人々に聖女として認識されていく。辺境から帰還した後。多くの王侯貴族が参列する夜会で王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。長い間、我儘な王子に我慢してきた聖女は何を告げるのか。 ——————————— 本作品の更新は十日前後で投稿を予定しております。 更新予定の時刻は投稿日の17時に固定とさせていただきます。 誤字・脱字をコメントにて、何話の修正か記載と同時に教えてくださると幸いです。 また読みにくい部分に対してはルピを追記しますので、同様に何話のことかお教えいただけると幸いですm(_ _)m  …(~2025/03/15)… ※第一部が完結後、一段落しましたら第二部を検討する予定です。 ※第二部は構想段階ですが、後日談のような第一部より短めになる予定です。 ※40話にて、近況報告あり。 ※52話より、次回話の更新日をお知らせいたします。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...