年下神官長殿にエセ聖女やらされてます

にんじんうまい

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コンコン。私の足音が闇にこだまする。いくら歩いたのだろう、どんなに歩いても先が見えない。
ジメジメしていて、たまに光る鉱石を目印に、私は一人奥へ進んだ。
もうーいきなり展開早すぎるよ。それに何を見つけろというのかしら。
そういえば、御光こういう時に限って差さないのよね、まあ、ここに光なんてないし無理か。



あれ?



なんだか遠くに、差し込む光が見える?
もしかして遠隔御光???


私はその光に向かって一直線で走った。



ついてみると大きく開けた場所に出た。ドーム状の天井の岩肌に穴が所々あき、その隙間から光がさしているのがわかる。ずっと暗がりにいたから目がチカチカするけど、よくみると上には木の葉っぱが見えた。

やった!この上に登れば外に出られる。


見渡すと、岩がちょうどよく積まれて階段になっているところがあり、それを辿って上まで登った。
地上に近づくに連れ、草むらの匂いが強くなり、何やら眩しい光を感じる。



わぁああ


思わず口に出してしまう。
岩肌からひょっこり顔を出すとそこには、月色に光る美しい森に出ていたのだから。
綺麗な虫の音に、近くに流れる小川の水音。よくみるとその水面には森の草花たちの灯りがゆらゆら揺れている。


空を見上げれば、これまた月色に光枝葉が覆い、その隙間から満天の星空が見える。


そして同時に私ははっとし、辺りを見回した。


しまった...あまりの光景に忘れていたけど、今、夜なんだ。どうしよう、外に出てしまった....



草を踏み分け歩く音がする。そしてその主が私に声をかけるのだった。



「やっと会えた、小さな我が君」



鈴を鳴らした様な可愛らしい声が降ってきた。
声のする方を見ると、前足が何やらもふもふしていて、これは.....



恐る恐る見上げると、そこには月色のライオンが私を見下げていた。
黄金の瞳には強い光があり、私を見据えている。




「びっくりしたでしょ?ここはね、夜だけどあなたに危害を加えるような場所ではないから安心して。あっそうだ!あそこに美味しい果実があるの。食べてみない?」


そういって、ライオンは私の襟を丁寧に加えて地上に引っ張り上げてくれた。
キョトンとする私に、目の前の木からとった果物を渡してくる。


洋梨のような形をしていて、よく見ると金箔の様な粉がついていてキラキラと輝く。
かじって見ると、瑞々しさの中に華やかな香りと甘さが鼻をスッと抜けた。



「よかった。気に入ってくれると思ったの!古い友人の好みは全部覚えているんだから!」



「ありがとう。果物ご馳走様です。でも、ここはどこなんですか?そしてあなたは?」




「ここは、あなたの深層風景、そして私はルナ!よろしくね!」



ピカッと光ったと思うと、さっきまでいたライオンがいなくなり代わりに、ふわふわとした髪の毛に、くりっと愛らしい瞳をした私と同い年くらいの少女が立っていた。



「ソフィー!私あなたをずっと待っていたの!あなた、私の友達になって!」



「あ、ルナ?あなたは一体....」



「私はね、月魔法を保護する聖獣なの!女神とも....昔友達だったんだよ!ソフィーは魔法使いたいんだよね?私、あなたのこの世界が気に入った!魔法使わせてあげる、その代わりお友達になって!」



わからないことが多すぎて目が回りそうだ。
ルナはいい子そうだしお友達になるのは構わないけれど...
そう思った矢先に意識を失った。





****



何やら頭の下が柔らかい。
目を開けると、そこには絶世の美少女の顔があった。


「ソフィー起きた?」



天使の様な笑顔を向けるこの少女に今膝枕をされているみたい。



「ソフィーにはまだ深層幻影世界を維持するのは難しかったかな。私の魔力を補充しといたからきっと動けるはず!とりあえずこの洞窟を抜けよう!って言いたいところだけど、今きっと夜なんだよね。ソフィーは夜で歩いちゃダメだからもう少しここで休んでいようね。」



この体制がちょっと恥ずかしくて私は起き上がると彼女の方を見た。
よく見ると、光の塊が私たちを囲んでいるおかげで少し安心する。


「ソフィー。ガールズトークしない?」


「はい???今?突然じゃない?」


するとルナはイヤイヤ~絶対する~といって転げ回っている。
なんとも愛嬌のある子だ。



「ガールズトークの前に、まずはルナのこともっと知りたいし、私師匠から探せって言われてるものがあって、それを探したいんだけど....」



「それはもう見つかってると思うよ!探すものって、それきっとルナのことじゃないかな?」











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