205 / 281
月光の花嫁
金があっても得られないものがそこにある
しおりを挟む
「この部屋は……」
大地が先行して入った部屋は他の部屋よりも暗い作りになっていた。なぜこの部屋だけそうなっているかわからないが、流石に罠の類いは無いだろうと思い足を進める。
その部屋の中央には一つの何かが置かれていた。その下に視線を移して全体を見ると凝った作りの台座だ。それはとても大事な物を置く為に作られたのだと考えられる。
大地が再び視線を上に戻して台座に乗っている物をまじまじと見る。
「これが魔道具か」
「でもこれは何でしょう?」
「お、おい」
隣でリリアが不思議そうに見る。そして大地が止める間もなくリリアはそれに手を伸ばして取った。
くるくると見回していく。形は円柱で大きさはさほど大きくないが。リリアの手ならば両手で握って一周出来るくらいだろう。
何かボタンらしき物を見かけたリリアは好奇心が覗かせたのか直ぐにボタンを押してしまった。
カチッと音がなると魔道具の中央部が発光する。それも魔道具だけではなく辺りを照らすような眩し光を放っているのだ。
「これって凄い物なのか……?」
元の世界にも似たような道具があるからこそ大地はこのランタンの様な魔道具が凄いと言われてもピンとこなかった。
「ダイチさん。これは凄い魔道具ですよ。今、私は魔力を込めてないんです」
ソレが何を意味するのかわからない大地としては「そ、そうなのか」と相槌を打つ。
「あの、大地さん。この魔道具を渡して報告したいんですが……その、良いでしょうか?」
「ん?たしか、ここの依頼ってお城の人関係だっけか」
「はい。魔道具を研究して開発しているところからです。なので……」
先程から言いにくそうにしているのは何故かわからないが、国の発展のために渡したいことくらいはわかる。
「それなら渡していいぞ」
「……大地さん。この魔道具は凄いんですよ?」
「それはさっき聞いたぞ?」
「それでも渡して良いんですか?」
「ん?いいぞ?」
何故か念を押して聞いてくるリリアが何を言いたいのかわからない故に大地は考えずに『ヨシ!』の精神で頷いた。その不毛なやり取りを見かねたグラネスが割って入る。
「ダイチ。リリアさんは研究者に魔道具を渡すよりも売った方がお金になると言っているんだ。俺やリリアさんはさほど困っていないが、お前は何時も持ってないだろう?」
「ん?ダイチ様は貧乏なのですか?」
ぐはぁっ……。この魔道具、誰にも言われたことがない事をシレッと言いやがって……。
「ちょっと金がないだけだ」
「……やっぱり渡さずに売りましょうか……そうすればダイチさんは――」
国とダイチを天秤にかけた結果、リリアが取った答えがそれであった。しかし、それに納得いくかと言われると……無理である。
「いや、報告時に渡してくれ。だいたいそれでも金が入るんだから良いだろ」
「でも……大金ですよ?」
その言葉には若干くらりと来るものがあるけれど……一度言ってしまった事による意地もある。だからもう一度断ろうかと思った矢先に手に握るマーガレットの魔道具が見えた。
「それなら……渡す条件としてその研究所?でマーガレットの体を作ってやれないか?」
「え?……うーん、お願いは出来ますけれど、作れるかわかりませんよ?」
「ああ。それでいい。マーガレットもそのままじゃ不便だろうしな」
掌で収まる魔道具を見ながら大地がそう言うと、リリアは頷いて「わかりました」と言って納得してくれた。
こうして無事に遺跡探索が終りホワイトキングダムへと戻った。だが国へ足を踏み入れた途端、大地に違和感が走った。
何か……視線を感じるな。
自分だけに向けられているのか、全員を対象にしているのかまではわからないが悪意は無さそうだ。
「グラネスさん。お願いがあるのですが」
歩きながらリリアはグラネスへ顔を向けて言う。本当ならこのまま依頼した研究者へ報告に行く所なのだが今朝のウサギ耳の女性が気になってしまっているのだ。
その事情をグラネスに話すと「そんなことが……わかりました。報告は俺が行ってきます」と引き受けてくれた。そこにリリアがその研究機関の依頼人へ手紙を用意してグラネスに魔道具(マーガレット込み)を託す。
そうしてグラネスと別れた後、リリアが取っている宿へと向かった。
宿に入り大地とリリアは部屋の近くまできた。そしてノックをするために大地が扉の前へ近づいていくと勢いよく扉が開いた。
その部屋から飛び出してきたのは薄いピンク色の長い髪の女。その顔立ちは少女と女性の中間と言う感じだが、メイド服により少しだけ女性よりに見える。
「ハンナさん!?」
リリアが取っている部屋から出てきたのはメイドのハンナだった。ハンナにはウサギ耳の女性の看病を頼んでいたからこの部屋から出てくること自体に驚きはない。だが、勢い余って大地へ突撃したハンナはそのまま押し倒して廊下で上下に重なっているのだ。
急展開で流石のリリアも名前を呼んで固まってしまった。
「リリア様!今、お部屋を覗いたらシーラ様がいなくなってしまいました!!」
ハンナは大地に乗りながら焦ったようすでそう言った。
大地が先行して入った部屋は他の部屋よりも暗い作りになっていた。なぜこの部屋だけそうなっているかわからないが、流石に罠の類いは無いだろうと思い足を進める。
その部屋の中央には一つの何かが置かれていた。その下に視線を移して全体を見ると凝った作りの台座だ。それはとても大事な物を置く為に作られたのだと考えられる。
大地が再び視線を上に戻して台座に乗っている物をまじまじと見る。
「これが魔道具か」
「でもこれは何でしょう?」
「お、おい」
隣でリリアが不思議そうに見る。そして大地が止める間もなくリリアはそれに手を伸ばして取った。
くるくると見回していく。形は円柱で大きさはさほど大きくないが。リリアの手ならば両手で握って一周出来るくらいだろう。
何かボタンらしき物を見かけたリリアは好奇心が覗かせたのか直ぐにボタンを押してしまった。
カチッと音がなると魔道具の中央部が発光する。それも魔道具だけではなく辺りを照らすような眩し光を放っているのだ。
「これって凄い物なのか……?」
元の世界にも似たような道具があるからこそ大地はこのランタンの様な魔道具が凄いと言われてもピンとこなかった。
「ダイチさん。これは凄い魔道具ですよ。今、私は魔力を込めてないんです」
ソレが何を意味するのかわからない大地としては「そ、そうなのか」と相槌を打つ。
「あの、大地さん。この魔道具を渡して報告したいんですが……その、良いでしょうか?」
「ん?たしか、ここの依頼ってお城の人関係だっけか」
「はい。魔道具を研究して開発しているところからです。なので……」
先程から言いにくそうにしているのは何故かわからないが、国の発展のために渡したいことくらいはわかる。
「それなら渡していいぞ」
「……大地さん。この魔道具は凄いんですよ?」
「それはさっき聞いたぞ?」
「それでも渡して良いんですか?」
「ん?いいぞ?」
何故か念を押して聞いてくるリリアが何を言いたいのかわからない故に大地は考えずに『ヨシ!』の精神で頷いた。その不毛なやり取りを見かねたグラネスが割って入る。
「ダイチ。リリアさんは研究者に魔道具を渡すよりも売った方がお金になると言っているんだ。俺やリリアさんはさほど困っていないが、お前は何時も持ってないだろう?」
「ん?ダイチ様は貧乏なのですか?」
ぐはぁっ……。この魔道具、誰にも言われたことがない事をシレッと言いやがって……。
「ちょっと金がないだけだ」
「……やっぱり渡さずに売りましょうか……そうすればダイチさんは――」
国とダイチを天秤にかけた結果、リリアが取った答えがそれであった。しかし、それに納得いくかと言われると……無理である。
「いや、報告時に渡してくれ。だいたいそれでも金が入るんだから良いだろ」
「でも……大金ですよ?」
その言葉には若干くらりと来るものがあるけれど……一度言ってしまった事による意地もある。だからもう一度断ろうかと思った矢先に手に握るマーガレットの魔道具が見えた。
「それなら……渡す条件としてその研究所?でマーガレットの体を作ってやれないか?」
「え?……うーん、お願いは出来ますけれど、作れるかわかりませんよ?」
「ああ。それでいい。マーガレットもそのままじゃ不便だろうしな」
掌で収まる魔道具を見ながら大地がそう言うと、リリアは頷いて「わかりました」と言って納得してくれた。
こうして無事に遺跡探索が終りホワイトキングダムへと戻った。だが国へ足を踏み入れた途端、大地に違和感が走った。
何か……視線を感じるな。
自分だけに向けられているのか、全員を対象にしているのかまではわからないが悪意は無さそうだ。
「グラネスさん。お願いがあるのですが」
歩きながらリリアはグラネスへ顔を向けて言う。本当ならこのまま依頼した研究者へ報告に行く所なのだが今朝のウサギ耳の女性が気になってしまっているのだ。
その事情をグラネスに話すと「そんなことが……わかりました。報告は俺が行ってきます」と引き受けてくれた。そこにリリアがその研究機関の依頼人へ手紙を用意してグラネスに魔道具(マーガレット込み)を託す。
そうしてグラネスと別れた後、リリアが取っている宿へと向かった。
宿に入り大地とリリアは部屋の近くまできた。そしてノックをするために大地が扉の前へ近づいていくと勢いよく扉が開いた。
その部屋から飛び出してきたのは薄いピンク色の長い髪の女。その顔立ちは少女と女性の中間と言う感じだが、メイド服により少しだけ女性よりに見える。
「ハンナさん!?」
リリアが取っている部屋から出てきたのはメイドのハンナだった。ハンナにはウサギ耳の女性の看病を頼んでいたからこの部屋から出てくること自体に驚きはない。だが、勢い余って大地へ突撃したハンナはそのまま押し倒して廊下で上下に重なっているのだ。
急展開で流石のリリアも名前を呼んで固まってしまった。
「リリア様!今、お部屋を覗いたらシーラ様がいなくなってしまいました!!」
ハンナは大地に乗りながら焦ったようすでそう言った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!
つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。
冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。
全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。
巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる