3 / 5
検査と測定
しおりを挟む
検査室の内部は、外側から想像していた広々とした近未来的なイメージとは異なり、思わず「意外と狭い」と感じてしまうほどコンパクトで、白を基調とした壁面に沿って銀色の精密機械がいくつも規則的に並び、その中央にはリクライニングチェアが一脚だけぽつんと置かれ、まるでその椅子こそが今日の主役であると言わんばかりに、その周囲を取り囲むように複数のモニターが半円状に配置されていた。
「どうぞ、こちらにお座りください」
白衣の女性検査員が、落ち着いた柔らかな声で仁を促し、仁はその声に従ってチェアへ腰を下ろすと、背もたれがゆっくりと自動で倒れていき、身体が半ば仰向けに近い姿勢へと導かれていった。
「これから、頭と手首、足首にセンサーを取り付けます。少しひんやりしますが、すぐ慣れますよ」
「は、はい」
額にコツン、と小さく冷たい感触が触れ、続けてこめかみ、耳の後ろ、そして手首や足首へ帯状の器具が巻かれ、カチッとバックルが留まる控えめな音が部屋の静寂に溶けていく。
頭上には銀色の金属製リングがそっとセットされ、じんわりとした重みが加わるものの、不快と呼ぶほどではなく、ただ「今、自分は検査という行為の中心にいるんだな」と実感させられる程度の存在感だった。
「では、これから五分ほど目を閉じてリラックスしてください。途中でいくつか質問をさせていただきますが、難しく考えず、思ったことをそのまま答えてくださいね」
「わかりました」
仁が目を閉じると、それだけで外界の情報が一気に遠のき、冷たい空気の静けさの中で、機械の低く一定した駆動音と、どこかで点滅しているランプの規則的な電子音だけが、世界の全部であるかのように耳へ流れ込んでくる。
「では、始めます。……はい、脳波測定スタート。最近、寝不足などはありますか?」
「昨日は、ちょっとだけ……」
「ちょっと、というのは?」
「二時まで起きてました」
「それは“ちょっと”の範囲を超えてますね」
女性検査員のくすっと笑う気配がして、仁の緊張もほんの少し溶けていく。
「普段は何時頃に寝ますか?」
「十二時前後……ですかね」
「朝食は?」
「ちゃんと食べてます」
「運動習慣はありますか?」
「部活は入ってないですけど、たまに走ったりはします」
質問内容はどこまでも事務的で、特別な意図があるようには思えないのに、答えるたびにまるで自分という存在が数値と波形へと変換されていき、人間からデータへと姿を変えられているような奇妙な感覚があった。
「小さい頃に大きな怪我や病気をしたことは?」
「……大きな怪我は特には。風邪を引いたりはしましたけど」
「そうですか。ありがとうございます。では、あと一分ほど、何も考えないようにしてみてください」
(何も考えない、って言われると逆に何か考えちゃうんだよな……)
まぶたの裏には、先ほどの廊下の光景が残像のように浮かび、相川、黒瀬、桜──三人の顔が並び、説明ホールの大画面が淡く蘇る。
やがて、機械が小さく音を変えた。
「……はい、脳波測定終了。次に、能力因子リズムの測定に移ります。少しだけ、体の奥が温かくなったり、しびれるような感覚があるかもしれませんが、危険はありませんから安心してください」
「しびれる、って聞くとちょっと怖いんですけど……」
「大丈夫ですよ。痛みを感じるようならすぐ教えてくださいね」
検査員の声は最初からずっと落ち着いていて、それが仁の心を静かに支えていく。
胸の奥に、ほんのりとした温かさが広がった。
まるで体の深層で、ゆっくりとした回転が始まったような、不思議な感覚が生まれる。
(……これが俺の中の“能力因子”ってやつなのか?)
しばらくの沈黙。
キーボードの打鍵音と、モニターの切り替わる電子音が、規則正しく空間に響く。
「……?」
ふいに空気がわずかに変わった気がした。
目を閉じていてもわかる。
検査員がモニターを凝視し、小さく首をかしげた気配。
「どうかしました?」
思わず尋ねると、女性検査員は声だけはすぐいつもの柔らかさに戻した。
「いえ、大丈夫ですよ。ただ、少し面白い波形が出ていまして。悪い意味ではありませんから、安心してください」
「お、おもしろい……?」
脳波が面白いと言われても困るが、それ以外にどうリアクションしていいかもわからない。
「はい、測定終了です。お疲れさまでした」
金属リングが外され、手首と足首のバンドが解かれていくと、重りを外したように身体がふっと軽くなった気がした。
「検査結果の詳細は後ほど担当者から伝えられます。今は他の皆さんと合流して、待機スペースでお待ちください」
「わかりました。ありがとうございました」
軽く礼をして検査室を出ると、第三グループの他三人がすでに廊下の待機スペースに集まっていて、他のグループの生徒たちも合流しつつあった。
「どうだった?」
相川が勢いよく身を乗り出す。
「いや、なんか……頭に輪っか付けられて、ピコピコって感じだった」
「お前もその説明かよ!」
つい先ほど自分が言ったのとまったく同じ説明を聞かされ、相川は頭を抱えた。
「でも、検査員さんがちょっと首かしげてた気はする」
「え、それって大丈夫なの?」
「さあ……まあ、悪い意味ではないって言ってたし」
そんな会話をしているところへ、先ほどの職員がまた姿を現した。
「第三グループの皆さんですね。これで全員の測定が終わりましたので、これから体育フロアに移動して身体能力テストを行います。他のグループも順次合流しますので、指示に従ってください」
四人は顔を見合わせ、立ち上がる。
体育フロアは学校の体育館をより機械的にしたような空間で、床にはコースラインが引かれ、壁際には自動計測機能付きの装置が整然と並んでいた。
「はい、これから行うテストは“基礎的な身体能力”の測定です。皆さんの能力発現に直接関わるわけではありませんが、重要なデータになりますので、真面目に取り組んでくださいねー」
若い男性職員が明るい声で説明し、「握力、反復横跳び、五十メートル走、立ち幅跳び、反応速度テスト」の順に回るよう案内した。
「お、運動テストなら任せろ!」
相川が途端にテンションを上げ、仁は呆れ混じりに笑いながら握力計の列に並ぶ。
金属のグリップを握り込むとモニターに数値が表示され、職員が淡々と記録していく。
各測定は順調に進み、相川が次々と高い数値を叩き出すたび、「だろ?俺、覚醒する未来のエースって感じじゃない?」と調子に乗り、仁が「まだ結果出てないうちからエース名乗るな」と突っ込むやり取りが続いた。
そうして全種目が終わり、給水スペースで水を飲んで一息ついていると、そばで職員同士がひそひそと話しているのが耳に入った。
「第三グループの何人か、解析終わってますね」
「じゃあ、順番に呼んでいきましょうか」
その直後、相川が最初に呼ばれ、嬉しそうに別室へ消えていき──そして満面の笑みで戻ってきた。
「聞いてくれよ!俺、“衝撃”を溜めたり増幅したりできるらしい!正式には『衝撃操作系ギフト《インパクト・ドライブ》』!かっこよくない!?」
周囲の三人が呆れながらも羨望混じりに反応していると、次に黒瀬の番がきて、落ち着いた様子で別室へ向かい、しばらくして戻ってくるなりこう告げた。
「俺は、体から電気を発生させる系統らしい。『雷撃操作系ギフト《ライトニング・コントロール》』だって」
相川が「雷!?強そう!」と目を輝かせ、桜が「黒瀬くんっぽいような……違うような……」と不思議そうに呟き、黒瀬は苦笑していた。
次に桜の名前が呼ばれ、控えめに微笑んで「行ってくるね」と言ってから別室へ向かい、戻ってきたときにはほんの少し頬が赤くなっていた。
「……私ね、手から光が出るみたい。『治療系ギフト《ヒール・ライト》』って。練習したら、怪我を治せるかもしれないんだって」
桜の指先がかすかに光を帯びた気がして、相川が「ヒーラーじゃん!絶対パーティに必要なやつだろ!」とはしゃぎ、仁は「ゲームじゃないって」と呆れつつも、どこか胸の奥が温かくなるのを感じた。
そして──残るは仁ひとり。
だが、どれだけ待っても名前が呼ばれることはなく、三十分が過ぎたころ、ようやく別の職員が緊張した面持ちで近づいてきた。
「神無月仁くん……だよね?ごめんね、君のデータの解析に時間がかかっていて、少し特別な処理が必要みたいなんだ。危険とかじゃないよ。ただ既存のデータパターンと一致しない部分があってね、それで“上の方”に確認してもらっている」
「上の方……」
曖昧な言葉が胸に引っかかり、仁は返事に迷いながらも「わかりました」と頷くしかなかった。
「なんか、すごそうじゃね?」と相川が言い、「……まあ、特別感はあるよな」と黒瀬が冷静に呟き、桜は「仁は仁だから。どんな結果でも大丈夫だよ」と微笑んだが──胸のざわつきは収まらない。
そんなときだった。
体育フロアの入口付近で職員たちがざわめき、誰かが姿勢を正し、会釈をしている。
そこに現れたのは、落ち着いたグレーのスーツに身を包んだ男で、四十代後半と思われるその人物は、整った立ち姿と経験を積んだ者だけが持つ静かな威圧感をまとい、歩みを進めるたびに革靴の音がフロアに反響した。
「局長、自ら……?」
職員の小声が耳に入る。
男は生徒たちをざっと見渡したあと、迷いなくこちらへ歩いてきた。
その手にあるファイルの表紙には──はっきりと、こう印字されている。
神無月 仁
足を止めた局長は顔を上げ、静かな声で問いかけた。
「……神無月仁くんは、いるかね?」
「どうぞ、こちらにお座りください」
白衣の女性検査員が、落ち着いた柔らかな声で仁を促し、仁はその声に従ってチェアへ腰を下ろすと、背もたれがゆっくりと自動で倒れていき、身体が半ば仰向けに近い姿勢へと導かれていった。
「これから、頭と手首、足首にセンサーを取り付けます。少しひんやりしますが、すぐ慣れますよ」
「は、はい」
額にコツン、と小さく冷たい感触が触れ、続けてこめかみ、耳の後ろ、そして手首や足首へ帯状の器具が巻かれ、カチッとバックルが留まる控えめな音が部屋の静寂に溶けていく。
頭上には銀色の金属製リングがそっとセットされ、じんわりとした重みが加わるものの、不快と呼ぶほどではなく、ただ「今、自分は検査という行為の中心にいるんだな」と実感させられる程度の存在感だった。
「では、これから五分ほど目を閉じてリラックスしてください。途中でいくつか質問をさせていただきますが、難しく考えず、思ったことをそのまま答えてくださいね」
「わかりました」
仁が目を閉じると、それだけで外界の情報が一気に遠のき、冷たい空気の静けさの中で、機械の低く一定した駆動音と、どこかで点滅しているランプの規則的な電子音だけが、世界の全部であるかのように耳へ流れ込んでくる。
「では、始めます。……はい、脳波測定スタート。最近、寝不足などはありますか?」
「昨日は、ちょっとだけ……」
「ちょっと、というのは?」
「二時まで起きてました」
「それは“ちょっと”の範囲を超えてますね」
女性検査員のくすっと笑う気配がして、仁の緊張もほんの少し溶けていく。
「普段は何時頃に寝ますか?」
「十二時前後……ですかね」
「朝食は?」
「ちゃんと食べてます」
「運動習慣はありますか?」
「部活は入ってないですけど、たまに走ったりはします」
質問内容はどこまでも事務的で、特別な意図があるようには思えないのに、答えるたびにまるで自分という存在が数値と波形へと変換されていき、人間からデータへと姿を変えられているような奇妙な感覚があった。
「小さい頃に大きな怪我や病気をしたことは?」
「……大きな怪我は特には。風邪を引いたりはしましたけど」
「そうですか。ありがとうございます。では、あと一分ほど、何も考えないようにしてみてください」
(何も考えない、って言われると逆に何か考えちゃうんだよな……)
まぶたの裏には、先ほどの廊下の光景が残像のように浮かび、相川、黒瀬、桜──三人の顔が並び、説明ホールの大画面が淡く蘇る。
やがて、機械が小さく音を変えた。
「……はい、脳波測定終了。次に、能力因子リズムの測定に移ります。少しだけ、体の奥が温かくなったり、しびれるような感覚があるかもしれませんが、危険はありませんから安心してください」
「しびれる、って聞くとちょっと怖いんですけど……」
「大丈夫ですよ。痛みを感じるようならすぐ教えてくださいね」
検査員の声は最初からずっと落ち着いていて、それが仁の心を静かに支えていく。
胸の奥に、ほんのりとした温かさが広がった。
まるで体の深層で、ゆっくりとした回転が始まったような、不思議な感覚が生まれる。
(……これが俺の中の“能力因子”ってやつなのか?)
しばらくの沈黙。
キーボードの打鍵音と、モニターの切り替わる電子音が、規則正しく空間に響く。
「……?」
ふいに空気がわずかに変わった気がした。
目を閉じていてもわかる。
検査員がモニターを凝視し、小さく首をかしげた気配。
「どうかしました?」
思わず尋ねると、女性検査員は声だけはすぐいつもの柔らかさに戻した。
「いえ、大丈夫ですよ。ただ、少し面白い波形が出ていまして。悪い意味ではありませんから、安心してください」
「お、おもしろい……?」
脳波が面白いと言われても困るが、それ以外にどうリアクションしていいかもわからない。
「はい、測定終了です。お疲れさまでした」
金属リングが外され、手首と足首のバンドが解かれていくと、重りを外したように身体がふっと軽くなった気がした。
「検査結果の詳細は後ほど担当者から伝えられます。今は他の皆さんと合流して、待機スペースでお待ちください」
「わかりました。ありがとうございました」
軽く礼をして検査室を出ると、第三グループの他三人がすでに廊下の待機スペースに集まっていて、他のグループの生徒たちも合流しつつあった。
「どうだった?」
相川が勢いよく身を乗り出す。
「いや、なんか……頭に輪っか付けられて、ピコピコって感じだった」
「お前もその説明かよ!」
つい先ほど自分が言ったのとまったく同じ説明を聞かされ、相川は頭を抱えた。
「でも、検査員さんがちょっと首かしげてた気はする」
「え、それって大丈夫なの?」
「さあ……まあ、悪い意味ではないって言ってたし」
そんな会話をしているところへ、先ほどの職員がまた姿を現した。
「第三グループの皆さんですね。これで全員の測定が終わりましたので、これから体育フロアに移動して身体能力テストを行います。他のグループも順次合流しますので、指示に従ってください」
四人は顔を見合わせ、立ち上がる。
体育フロアは学校の体育館をより機械的にしたような空間で、床にはコースラインが引かれ、壁際には自動計測機能付きの装置が整然と並んでいた。
「はい、これから行うテストは“基礎的な身体能力”の測定です。皆さんの能力発現に直接関わるわけではありませんが、重要なデータになりますので、真面目に取り組んでくださいねー」
若い男性職員が明るい声で説明し、「握力、反復横跳び、五十メートル走、立ち幅跳び、反応速度テスト」の順に回るよう案内した。
「お、運動テストなら任せろ!」
相川が途端にテンションを上げ、仁は呆れ混じりに笑いながら握力計の列に並ぶ。
金属のグリップを握り込むとモニターに数値が表示され、職員が淡々と記録していく。
各測定は順調に進み、相川が次々と高い数値を叩き出すたび、「だろ?俺、覚醒する未来のエースって感じじゃない?」と調子に乗り、仁が「まだ結果出てないうちからエース名乗るな」と突っ込むやり取りが続いた。
そうして全種目が終わり、給水スペースで水を飲んで一息ついていると、そばで職員同士がひそひそと話しているのが耳に入った。
「第三グループの何人か、解析終わってますね」
「じゃあ、順番に呼んでいきましょうか」
その直後、相川が最初に呼ばれ、嬉しそうに別室へ消えていき──そして満面の笑みで戻ってきた。
「聞いてくれよ!俺、“衝撃”を溜めたり増幅したりできるらしい!正式には『衝撃操作系ギフト《インパクト・ドライブ》』!かっこよくない!?」
周囲の三人が呆れながらも羨望混じりに反応していると、次に黒瀬の番がきて、落ち着いた様子で別室へ向かい、しばらくして戻ってくるなりこう告げた。
「俺は、体から電気を発生させる系統らしい。『雷撃操作系ギフト《ライトニング・コントロール》』だって」
相川が「雷!?強そう!」と目を輝かせ、桜が「黒瀬くんっぽいような……違うような……」と不思議そうに呟き、黒瀬は苦笑していた。
次に桜の名前が呼ばれ、控えめに微笑んで「行ってくるね」と言ってから別室へ向かい、戻ってきたときにはほんの少し頬が赤くなっていた。
「……私ね、手から光が出るみたい。『治療系ギフト《ヒール・ライト》』って。練習したら、怪我を治せるかもしれないんだって」
桜の指先がかすかに光を帯びた気がして、相川が「ヒーラーじゃん!絶対パーティに必要なやつだろ!」とはしゃぎ、仁は「ゲームじゃないって」と呆れつつも、どこか胸の奥が温かくなるのを感じた。
そして──残るは仁ひとり。
だが、どれだけ待っても名前が呼ばれることはなく、三十分が過ぎたころ、ようやく別の職員が緊張した面持ちで近づいてきた。
「神無月仁くん……だよね?ごめんね、君のデータの解析に時間がかかっていて、少し特別な処理が必要みたいなんだ。危険とかじゃないよ。ただ既存のデータパターンと一致しない部分があってね、それで“上の方”に確認してもらっている」
「上の方……」
曖昧な言葉が胸に引っかかり、仁は返事に迷いながらも「わかりました」と頷くしかなかった。
「なんか、すごそうじゃね?」と相川が言い、「……まあ、特別感はあるよな」と黒瀬が冷静に呟き、桜は「仁は仁だから。どんな結果でも大丈夫だよ」と微笑んだが──胸のざわつきは収まらない。
そんなときだった。
体育フロアの入口付近で職員たちがざわめき、誰かが姿勢を正し、会釈をしている。
そこに現れたのは、落ち着いたグレーのスーツに身を包んだ男で、四十代後半と思われるその人物は、整った立ち姿と経験を積んだ者だけが持つ静かな威圧感をまとい、歩みを進めるたびに革靴の音がフロアに反響した。
「局長、自ら……?」
職員の小声が耳に入る。
男は生徒たちをざっと見渡したあと、迷いなくこちらへ歩いてきた。
その手にあるファイルの表紙には──はっきりと、こう印字されている。
神無月 仁
足を止めた局長は顔を上げ、静かな声で問いかけた。
「……神無月仁くんは、いるかね?」
0
あなたにおすすめの小説
かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?
久野真一
青春
2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。
同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。
社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、
実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。
それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。
「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。
僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。
亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。
あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。
そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。
そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。
夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。
とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。
これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。
そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる