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PROLOGUE【絶望の闇】
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誰もが皆、口をそろえてこう言う!アニメの見すぎだ……っと、人をバカにしたような態度で言ってくるが、これは……現実の話だ!
三陸の海はもう三月だと言うのに海岸から吹き荒れる冷たい海風が街や校舎を通りすぎてゆく。あんなに晴れていた空は、今では薄暗く曇り泣き出しそうな顔をしている。
当時九歳だった俺はなにも知らず、こんな退屈な日常と学校生活を過ごしていくものだと信じていた。あの惨劇が起きるまでは……
昼過ぎの六限目、うざい国語の授業も聞かず、俺はぼーっと教室の窓から見える海を眺めていた。
今日に限って無数のカラスがうるさいほど鳴いている。大きく翼をばたつかせ、大空高く群れを成して飛び立ってゆく、その姿は不気味としか言いようがなかった。
ゴゴゴゴゴ……と遠くから地響きが波のように押し寄せてきた。教壇に飾られた花瓶が、ガタガタと揺れ始めたかと思うと、床に落ちて花瓶が割れてしまった。
いつもならすぐに収まるはずの地震が、今日に限って激しさを増して揺れている。
いつもはお母さんのように優しい笑顔が絶えない先生の顔が強ばってゆくのがわかった。それを見た生徒達も恐怖に怯えた空気が伝染してゆく。
「みんな机の下に隠れるだっちゃよ……」
今までに感じたことのない揺れに先生の声がうわずって聞こえた。俺達はすぐに先生の言う通り机の下へと身を竦め、地震が収まるのを待った。教室の窓ガラスが全て割れ床に落ちた。
「きゃああああぁぁぁ……」
女子児童達は、悲鳴をあげ泣き出すものさえもいた。誰も彼もがその恐怖に怯えていた。
2011,03,11 14時46分18秒
震度7.0 マグニチュード8.4の地震が発生!これが歴史に名を残した巨大地震 東日本大震災である。
揺れが収まると、俺達は先生の指示に従い、指定されていた高台へと避難した。警察官だった、俺の父さんは一足先に住民をこの高台まで誘導していた。
「陸も無事だったか?よかった……」
「うん……先生やみんなと一緒に逃げて来たんだ」
ここまでくれば、一安心だ……児童達も地べたに座り、ホッとしたのか安堵に満ちた表情を浮かべて泣き出していた。そうなると家族の安否が気にかかる。みなが自分の家族がこの高台まで来ているのかを探し回っていた。
「そうか、他のみんなは無事か?」
「わかんないよ。俺も今来たばかりだから、その辺を探してくるよ」
「わかった。父さんも探してくる」
それは俺も同じであった。俺と父さんは二手に別れて自分の家族を探した。俺の家族は両親と二つ年下の妹、風花がいる。彼女も担任の先生に連れられてここにたどり着いた。
母さんは、俺達より先に来て、避難民を受け入れる手伝いを行っていた。よかったみんな無事だ……
「父さん、大丈夫みんな無事みたいだ!」
「そうか、それはよかった」
ホッとしたのもつかの間……おぃ、まだ逃げ遅れたものがいるらしいぞ!消防団の団員が発したその一言で、その場にいた住民達に緊迫した空気感が漂い始める。
消防隊員達は口々にどうするかを相談し始めていた……どうする助けに行くか?今からじゃ遅すぎる死にに行くようなもんだ。
「逃げ遅れたものがいるって言うのは、本当なのか……」
相談をしていた消防隊員達の中へ、父さんが割って入った。そして父さんは決死の覚悟を決めた。
「陸!父さんな……やらなくちゃいけないことが出来た。だから母さんと風花ことは、おまえが守ってやってくれないか……頼む」
「そんなの、あたり前じゃないか!俺が母さんと風花を守ってやるぜ。だから早く帰ってきてくれよな」
「あたり前だ。俺にはおまえからもらったお守りがあるからな!」
父さんは懐に挿した拳銃を、俺にチラりと見せてくれた。そこには去年、俺が父さんの誕生日にプレゼントとした〘メダルドライブ オッズ〙のステッカーが貼られていた。
〘メダルドライブ オッズ〙とは
ドライブシリーズの作品で、ベルトのスロットにメダル三枚を入れ、変身して戦う特撮ヒーローである。
当時の俺には、まだ父さんが言ったことの本当の意味をわからずにいた。それは正義感が強かった父さんが死ぬ覚悟を決めて出て行くことを意味していたのだった。
「それなら大丈夫だ!どんなやつが来たって、父さんには敵わないさ!」
俺はグッジョブサインで、父さんを見送ると、父さんもグッジョブサインで返すと、すぐに街に向かって走り出した。それが父さんを見た、最後の瞬間となった。
高台の先から街を一望することができた。どんよりとした暗雲が、さらに不安を掻き立てる。街に戻った父さんは大丈夫なのだろうか?
余震も収まることを知らず、なんどもなんどもやって来る。電柱がなぎ倒され、建物は全壊や半壊、そこに真っ黒い波が押し寄せてくる。
波が二波三波と押しよせ、留まることを知らなかった……
先生や大人達は、なす術もなく高台の上から流されてゆく街並みを呆然と眺め立ち尽くしていた。
海に目をやると水平線に黒くうねるものを見た。多分それは波であろうと始めは思っていた。だがそれは……波ではなかった。蛇に似た眼光が俺を睨みつけていた。
「あれは龍だ……真っ黒な黒い龍がいる……」
俺にはそれが黒い鱗に覆われた巨大な龍が、水平線の向こうから、こちらに向かって大きな波を作り襲いかかってくる姿が見えた。
「えぇ……この子はなにを言っているんだ?龍なんているわけがないだろう……」
「多分、津波の恐ろしいさで、そう見えるんだろうね……可哀想に……」
大人達に黒い龍のことを伝えたが、大人達は笑いながら、テレビの見すぎだとバカにしていたが……あれは間違いなく龍でだった。
その後父さんは帰らぬ人となり、遺体すらも戻ってくることはなかった。
その時、俺は思った父さんは、あの黒い龍に食われてしまったに違いないと……
津波の龍
【厨二病のこの俺が津波から町を救う夢を見る】
三陸の海はもう三月だと言うのに海岸から吹き荒れる冷たい海風が街や校舎を通りすぎてゆく。あんなに晴れていた空は、今では薄暗く曇り泣き出しそうな顔をしている。
当時九歳だった俺はなにも知らず、こんな退屈な日常と学校生活を過ごしていくものだと信じていた。あの惨劇が起きるまでは……
昼過ぎの六限目、うざい国語の授業も聞かず、俺はぼーっと教室の窓から見える海を眺めていた。
今日に限って無数のカラスがうるさいほど鳴いている。大きく翼をばたつかせ、大空高く群れを成して飛び立ってゆく、その姿は不気味としか言いようがなかった。
ゴゴゴゴゴ……と遠くから地響きが波のように押し寄せてきた。教壇に飾られた花瓶が、ガタガタと揺れ始めたかと思うと、床に落ちて花瓶が割れてしまった。
いつもならすぐに収まるはずの地震が、今日に限って激しさを増して揺れている。
いつもはお母さんのように優しい笑顔が絶えない先生の顔が強ばってゆくのがわかった。それを見た生徒達も恐怖に怯えた空気が伝染してゆく。
「みんな机の下に隠れるだっちゃよ……」
今までに感じたことのない揺れに先生の声がうわずって聞こえた。俺達はすぐに先生の言う通り机の下へと身を竦め、地震が収まるのを待った。教室の窓ガラスが全て割れ床に落ちた。
「きゃああああぁぁぁ……」
女子児童達は、悲鳴をあげ泣き出すものさえもいた。誰も彼もがその恐怖に怯えていた。
2011,03,11 14時46分18秒
震度7.0 マグニチュード8.4の地震が発生!これが歴史に名を残した巨大地震 東日本大震災である。
揺れが収まると、俺達は先生の指示に従い、指定されていた高台へと避難した。警察官だった、俺の父さんは一足先に住民をこの高台まで誘導していた。
「陸も無事だったか?よかった……」
「うん……先生やみんなと一緒に逃げて来たんだ」
ここまでくれば、一安心だ……児童達も地べたに座り、ホッとしたのか安堵に満ちた表情を浮かべて泣き出していた。そうなると家族の安否が気にかかる。みなが自分の家族がこの高台まで来ているのかを探し回っていた。
「そうか、他のみんなは無事か?」
「わかんないよ。俺も今来たばかりだから、その辺を探してくるよ」
「わかった。父さんも探してくる」
それは俺も同じであった。俺と父さんは二手に別れて自分の家族を探した。俺の家族は両親と二つ年下の妹、風花がいる。彼女も担任の先生に連れられてここにたどり着いた。
母さんは、俺達より先に来て、避難民を受け入れる手伝いを行っていた。よかったみんな無事だ……
「父さん、大丈夫みんな無事みたいだ!」
「そうか、それはよかった」
ホッとしたのもつかの間……おぃ、まだ逃げ遅れたものがいるらしいぞ!消防団の団員が発したその一言で、その場にいた住民達に緊迫した空気感が漂い始める。
消防隊員達は口々にどうするかを相談し始めていた……どうする助けに行くか?今からじゃ遅すぎる死にに行くようなもんだ。
「逃げ遅れたものがいるって言うのは、本当なのか……」
相談をしていた消防隊員達の中へ、父さんが割って入った。そして父さんは決死の覚悟を決めた。
「陸!父さんな……やらなくちゃいけないことが出来た。だから母さんと風花ことは、おまえが守ってやってくれないか……頼む」
「そんなの、あたり前じゃないか!俺が母さんと風花を守ってやるぜ。だから早く帰ってきてくれよな」
「あたり前だ。俺にはおまえからもらったお守りがあるからな!」
父さんは懐に挿した拳銃を、俺にチラりと見せてくれた。そこには去年、俺が父さんの誕生日にプレゼントとした〘メダルドライブ オッズ〙のステッカーが貼られていた。
〘メダルドライブ オッズ〙とは
ドライブシリーズの作品で、ベルトのスロットにメダル三枚を入れ、変身して戦う特撮ヒーローである。
当時の俺には、まだ父さんが言ったことの本当の意味をわからずにいた。それは正義感が強かった父さんが死ぬ覚悟を決めて出て行くことを意味していたのだった。
「それなら大丈夫だ!どんなやつが来たって、父さんには敵わないさ!」
俺はグッジョブサインで、父さんを見送ると、父さんもグッジョブサインで返すと、すぐに街に向かって走り出した。それが父さんを見た、最後の瞬間となった。
高台の先から街を一望することができた。どんよりとした暗雲が、さらに不安を掻き立てる。街に戻った父さんは大丈夫なのだろうか?
余震も収まることを知らず、なんどもなんどもやって来る。電柱がなぎ倒され、建物は全壊や半壊、そこに真っ黒い波が押し寄せてくる。
波が二波三波と押しよせ、留まることを知らなかった……
先生や大人達は、なす術もなく高台の上から流されてゆく街並みを呆然と眺め立ち尽くしていた。
海に目をやると水平線に黒くうねるものを見た。多分それは波であろうと始めは思っていた。だがそれは……波ではなかった。蛇に似た眼光が俺を睨みつけていた。
「あれは龍だ……真っ黒な黒い龍がいる……」
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「えぇ……この子はなにを言っているんだ?龍なんているわけがないだろう……」
「多分、津波の恐ろしいさで、そう見えるんだろうね……可哀想に……」
大人達に黒い龍のことを伝えたが、大人達は笑いながら、テレビの見すぎだとバカにしていたが……あれは間違いなく龍でだった。
その後父さんは帰らぬ人となり、遺体すらも戻ってくることはなかった。
その時、俺は思った父さんは、あの黒い龍に食われてしまったに違いないと……
津波の龍
【厨二病のこの俺が津波から町を救う夢を見る】
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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