TSUNAMIの龍〘 厨二病のこの俺が津波の龍から町を救う夢をみる〙

三毛猫69

文字の大きさ
3 / 20

極道先生あらわる!

しおりを挟む
 春・夏・秋・冬四つの四季の中で、この春と言う季節が嫌いだ。父さんが死んだ季節というのもあるのだろうが、憂鬱になるのが……嫌いだ!
 

 キャーキャーキャーと女子生徒の甲高く黄色い声が校庭内で飛び交っている。春一番の突風でセーラー服のスカートがめくれ上がり、必死に抑えているのだ。

春は嫌いだが、春一番は……大好きだ!
 
 そんな四月の桜舞い散る、うららかな春の日にやってまいりました。町立耐真中学校《たいしんちゅうがく》……
 なぜ廣河中学《こうがちゅうかく》ではなく耐真中学なのかというと…俺もよく知らないので、またの機会に話すとして、いわゆる伝統ある学校ということだ。

 俺の担任になった先生は丘石  英樹《おかいし    ひでき》先生であった。目の調子が悪いらしく、いつも色つきのメガネをかけ、貫禄のある活かしたスーツを着こなしていた。そんな丘石先生を少しビビっていた。

 廊下を歩く丘石先生の後ろを、俺がついて歩くと生徒が注目した目で見ている。まるで有名人にでもなったかのようだ。まぁ、転校生がもの珍しい気持ちもわかる……そう思っていた。

「先生今日はどこの組を襲撃に行くんですか?」
 はぁ~!?意味のわからんことをいうやつだなぁ!襲撃ってなんだよ。ヤクザ映画でもあるまいし……ん?ヤクザ映画……?
 トイレにあった鏡をチラッと眺めてわかった。学ランの襟元からパーカーのフードを出し、頭は金髪の不良少年の姿が鏡に映っている。
 
 なるほど!そういう意味かぁ。こわもての丘石先生が中卒上がりのチンピラを率いてどこかの組を襲撃にやってきたかのような光景であった。

 それには丘石先生も気づいたようで、怒りが爆発していた。
「どこに誰が何しに行くってえぇ……バカやろ~早く席につけ、朝礼始めるぞ!」
 ドスの効いた声が響いて桜吹雪が舞い散った。まさにヤクザの世界、極道の花道である。

「おまえも……その頭、明日までになんとかしてこい」
 その話はさっきみっちりと聞いたばかりであった。今日のところは仕方ないから、そのままでいいって言ってたのに、どういうことだ……完全に八つ当たりだ!

「あとそのフード!中に閉まっておけ!」
「はぁ~ぃ」
 急いでフードを学ランの中に入れた。明日までに髪を染めないとマジで殺されかねない。
 
 ……そんな丘石先生もひとたび教室に入れば、生徒達に人気の優しい先生であった。
「先生今日のスーツ、決まってますね。かっこいい……さすがは組長の息子だぁ!」
「バカヤロー組長じゃね!町長だ。そこだけは間違えるんじゃねぇぞ!早く席につけ、朝礼初めっぞ!」

 みんな楽しそうな笑顔で席着いたが、ざわつきが収まる気配を見せなかった。やはり転校生の俺が気になるようだ。
 
 ヤバいあの髪見て……まさかの不良怖い……などの話声が聞こえてくる。
 もぅその句たりは、いいつうの……どんな生徒がいるのかと確かめて見た。
 
――あれ?あの子は、この前……確か浜辺で……
 このクラスの中に浜辺で見かけた少女が席に座っていたのだ!

 自分が緊張していたとは思っていなかったが、知っている顔を見てホッとしている自分がいることに気づいた。

「お~い、静かにしろ~えぇっと今日は最初に転校生を紹介する」
 先生は黒板に俺の名前をでかでかと書き出した。

『五條  陸』これが俺の名前だ!

「それじゃ、簡単に自己紹介やってみようか……」
 先生は頑張って喋れよっと言わんばかりに俺の背中を優しくポンと押し出してくれた。
 
 「ハイ……」
――ヨシ!俺もここはかっこよく、バイブス燃やすぜ!……勇み足で意気揚々と自己紹介を始めた。
 
 「ごじょう  りくです。千葉県から転校してきました。特技は剣道、昨年の千葉県大会で優勝しました。趣味は特撮ヒーローものです。特にドライブシリーズが好きで今は〖ゴーストドライブ焔〗にハマっています……」

           〖ゴーストドライブ焔〗とは
 主人公の焔が昔の偉人を自分の身体に憑依させ、その偉人の力を使って、悪の秘密組織と戦う物語である。
 
「あ~~もぅそれぐらいでいいだろう……そろそろ朝礼を始めたいんだがなぁ……」
 先生は時間を気にしながら眉をひそめて俺の話をさえぎってきた。
 
 ちょぃちょぃ…ちょっと待ってくれよ!これから最後にビシッと決めるんだからさぁ……
「あの~すみません。あとひとつだけ言ってもいいですか?」
 
 先生は深いため息と共に、早く終わらせろよっ、と手で合図をおくってくれた。
 
「ハイありがとうこざいます。」
 俺は万遍の笑みを浮かべた。人差し指で天を指さし、真顔で決めゼリフを披露した。
 
「おばあちゃんが言っていた。男がやってはいけないことが二つある。女の子を泣かせることと食べ物を粗末にすることだ……ってな」
やったぜ!決めセリフがかっこよく決まったぜ!ドヤ顔でお目当ての彼女を見つめた。

 しかし彼女はなにも聞いていなかったかのようにうつむいてしまう。あれ、あれ……なんだスベったのか?マジかぁ……やはりこのネタは受け入れないのか?関西人の笑いは難しいなぁ……

 教室にも冷たい風が吹き抜け、どんよりと重苦しい空気に入れ替わった。生徒達の表情が凍りついてゆくのがわかった。
 

 先生はもうそのくらいでいいだろうと……頭の上にポンと出席名簿を乗せ、俺の決めゼリフを即興でアレンジして返してきた。
 
「先生が思った。男がやってはいけないことが二つある。生徒を苦しめることと時間を粗末にすることだ、ってな」
 
 その瞬間、教室全体が爆笑の渦に飲まれた。さすがは、先生だと関心させられるばかりであった。
 
 先生は空いた席を指さした。
「おまえの席はあそこだ。早く行け……」
「はぃ……」
 俺は美味しいところをカッさらわれた気分と敗北感を背負いながら、とぼとぼと指定された席に着いた。
 
 後ろの席からシャーペンでツンツンとつついてくるやつがいた。
「僕は上村  祐希(かみむら  ゆうき)!祐希でいいよ……ライダーシリーズが好きなのか?」
「俺は、五條  陸!陸でいいよ」
 
「さっきの決めゼリフ、あれ良かったよ。僕もドライブシリーズは毎週見てるからわかるよ……でも、あれをここでやるとは思わなかったよ」
 笑顔で話掛けて来た祐希は、ぽっちゃり系で人懐っ子そうな性格の奴だった。
 
「おぉ……ドライブシリーズ好きなのか?」
 痛いところを突かれたが、いきなり仲間はいた!特撮談義に花を咲かせようと思っていたのだが……
 
「好きと言うほどでもないけどねぇ……流れで見ている感じかなぁ……僕はUouTubeが好きでよく見てるよ!」
 
 UouTube【ウーチューブ】とは
ネットによる動画配信サービスの名称である。
 
 俺も特撮ヒーローものを検索するのによく利用していた。

「あっ!でも、だいたいドライブものの内容は覚えているから大丈夫だよ」
「そうか、ありがとうなぁ!あとで一緒に話しようぜ」
 とりあえず、仲良くなれそうな友達が出来て良かった。これからのオタク談義が楽しみだぜ!
 
「うんいいよ……あとわからないことがあればなんでも聞いてくれればいいからね」
 なんて心優しいやつなんだ。心の友よ……それじゃぁひとつお願いしてみるか……
 
「ありがとう!それじゃぁ……あの窓際から2列目で前から4番目に座ってる女の子はなんていう名前なんだ?」
 祐希は席順を数え俺が指定した席を探し当てて、おおっというような顔をした。
 
「いいね!北川呼詠(きたがわ  こよみ)さんだよ……あの子に目をつけるとは、お目が高いねぇ!成績優秀、スポーツ万能、さらに学級委員長の美少女だもんね。学校内でもあの子目当に、ここに来る男子もいるくらいだよ。競争率が高いから頑張ってね!」
「ありがとう助かったよ」
なるほどね……心の友よ、そこまで詳しく教えてくれて助かったよっとグッジョブサインと笑顔をおくった。
 
「ハイそこ、うるさいぞ静かにしろ!」
 上村に先生のクレームが飛んできた。いろいろ教えてもらったのに叱られちゃって、ほんとごめんなぁ……

 それから一週間、休み時間になる度、俺は呼詠さんに海でのことを謝ろうとするのだが、すぐに仲のいい友達が呼詠さんを取り囲んでしまい話を切り出せない。

 何度か呼詠さんを追いかけるのだが、なぜか目が会うと逃げてしまう。なぜだ!俺はそんなに怖いのか?嫌われているのか?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...