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1章 大夜会狂想曲
1話 反吐が出るほどの享楽
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扉を開けるとそこはまるで別世界だった
噎せ返るほどの粉おしろいの香りを振りまく貴婦人
気取ったようにそんな粉おしろい女を慣れた手つきで舞踏へと誘う貴族たち
その大広間は目がやられるほどきらびやかに輝き続け、弦楽四重奏の小気味よい音楽がたえむこと無くなり続けている
本当に反吐が出るほど気味が悪い光景だ
彼は胃の中から湧き出るような不快を抑えるようにひとつため息をついた
そして仮初の顔にひとつ仮面をつけると彼はその豪奢の輝きの中に潜む影のようにゆっくりと進みだした
「今日の夜会は本当に素晴らしいこと」
「何せ火と風の同盟関係が強化される日なのだから」
「風の盟主のシルフィア伯エアグレイス家と火の盟主サランド公ティアマート家の縁組ぞ」
「しかも花嫁は帝国の英雄『烈火の剣聖 』の一人娘だそうだ」
「これで我らも安泰ぞ」
彼にとっては彼等の言うこの豪奢な集まりの理由などはっきり言って関係ないし どうでもよかった。
ただ言われた通りやればいい。
そのための自分たちなのだから。
噎せ返る魔血貴族たちをかき分けながら彼はその目的と思われる人間の前に忍び寄る
そこには貴婦人たちのなかでも一際目立つ存在の赤毛の美しい女性と、その隣の脂ぎった小太りの中年の魔血貴族がいた。
「どうしたのだ?こんな所で」
太った魔血貴族は彼を訝しむ用な目で睨みつけて言った
「お前は外の警備の者であろう?なんの用でここに来た?」
あまりにも高圧的な態度で太った魔血貴族の顔が怒りで紅潮していく
だが上司のそんな態度も彼には関係ないかのように落ち着き払った目で彼を見つめた。
その時だった――
「子爵閣下!」
その間に割って入るかのように別の警備兵の声が響いた
「なんだね!今度は?!」
子爵と呼ばれた魔血貴族はいらつきを隠すことなく別の警備兵を睨みつけた
その迫力に一瞬怯みそうになりながらもおずおずと子爵の耳にあることを囁いた
子爵のイラついた赤ら顔はみるみるうちに焦りを滲ませ顔面蒼白になっていった
「子爵、レイヴロン子爵?」
その様子を不思議そうに見ていた一際美しい貴婦人が檜扇をそばだててレイヴロン子爵に一言聞いた
「どうかなされたのかしら?今日は大事な日なのですよ?」
まだ年若い貴婦人はそんな子爵に圧力をかけるように優雅にゆっくりと言う
レイヴロン子爵はさらに顔に苦悶の色を滲ませた
そんな時だった
「閣下、少しお話が…」
その一言を言い放ったのは彼だった
一同の視線が槍のように彼を突き刺したが、彼は怖いほど冷静な態度でレイヴロン子爵の耳に囁いた
小気味よい弦楽四重奏さえもが沈黙しているかのように重重しい空気が流れる
そして彼か何かを報告されたレイヴロン子爵は一瞬押し黙ったあと隣に佇んでいた赤毛の美しい貴婦人をちらりと見た
「サランド公爵夫人…」
子爵は狼狽した様子で一言言った
「すいません!私めはこれからお暇させていただきます!」
「え?なんですって?」
彼女――サランド公爵夫人と呼ばれた貴婦人は混乱した様子で子爵を見た
「何をおっしゃってますの?今日の会の仕切りは貴方の手にかかってますのよ?」
サランド公爵夫人の口調は明らかに不満げだった
だが明らかに下の立場であるレイヴロン子爵ではあるけど、何かに取り憑かれたようにその場から駆け出した
「申し訳ない!とにかく問題が――」
そう言いつつレイヴロン子爵は急いで大広間からでていく
そして、まるで影のように彼は子爵の後を追っって行く
その口元には誰にも気づかれてない笑みを浮かべだ。
彼は警備兵でもなんでもない。
この警備兵の姿はすべて仮初。『変化 』それが彼が使った魔法。
彼がこの煌びやかな晴れ舞台に現れた理由。それはこの場をぶち壊すためであった。
噎せ返るほどの粉おしろいの香りを振りまく貴婦人
気取ったようにそんな粉おしろい女を慣れた手つきで舞踏へと誘う貴族たち
その大広間は目がやられるほどきらびやかに輝き続け、弦楽四重奏の小気味よい音楽がたえむこと無くなり続けている
本当に反吐が出るほど気味が悪い光景だ
彼は胃の中から湧き出るような不快を抑えるようにひとつため息をついた
そして仮初の顔にひとつ仮面をつけると彼はその豪奢の輝きの中に潜む影のようにゆっくりと進みだした
「今日の夜会は本当に素晴らしいこと」
「何せ火と風の同盟関係が強化される日なのだから」
「風の盟主のシルフィア伯エアグレイス家と火の盟主サランド公ティアマート家の縁組ぞ」
「しかも花嫁は帝国の英雄『烈火の剣聖 』の一人娘だそうだ」
「これで我らも安泰ぞ」
彼にとっては彼等の言うこの豪奢な集まりの理由などはっきり言って関係ないし どうでもよかった。
ただ言われた通りやればいい。
そのための自分たちなのだから。
噎せ返る魔血貴族たちをかき分けながら彼はその目的と思われる人間の前に忍び寄る
そこには貴婦人たちのなかでも一際目立つ存在の赤毛の美しい女性と、その隣の脂ぎった小太りの中年の魔血貴族がいた。
「どうしたのだ?こんな所で」
太った魔血貴族は彼を訝しむ用な目で睨みつけて言った
「お前は外の警備の者であろう?なんの用でここに来た?」
あまりにも高圧的な態度で太った魔血貴族の顔が怒りで紅潮していく
だが上司のそんな態度も彼には関係ないかのように落ち着き払った目で彼を見つめた。
その時だった――
「子爵閣下!」
その間に割って入るかのように別の警備兵の声が響いた
「なんだね!今度は?!」
子爵と呼ばれた魔血貴族はいらつきを隠すことなく別の警備兵を睨みつけた
その迫力に一瞬怯みそうになりながらもおずおずと子爵の耳にあることを囁いた
子爵のイラついた赤ら顔はみるみるうちに焦りを滲ませ顔面蒼白になっていった
「子爵、レイヴロン子爵?」
その様子を不思議そうに見ていた一際美しい貴婦人が檜扇をそばだててレイヴロン子爵に一言聞いた
「どうかなされたのかしら?今日は大事な日なのですよ?」
まだ年若い貴婦人はそんな子爵に圧力をかけるように優雅にゆっくりと言う
レイヴロン子爵はさらに顔に苦悶の色を滲ませた
そんな時だった
「閣下、少しお話が…」
その一言を言い放ったのは彼だった
一同の視線が槍のように彼を突き刺したが、彼は怖いほど冷静な態度でレイヴロン子爵の耳に囁いた
小気味よい弦楽四重奏さえもが沈黙しているかのように重重しい空気が流れる
そして彼か何かを報告されたレイヴロン子爵は一瞬押し黙ったあと隣に佇んでいた赤毛の美しい貴婦人をちらりと見た
「サランド公爵夫人…」
子爵は狼狽した様子で一言言った
「すいません!私めはこれからお暇させていただきます!」
「え?なんですって?」
彼女――サランド公爵夫人と呼ばれた貴婦人は混乱した様子で子爵を見た
「何をおっしゃってますの?今日の会の仕切りは貴方の手にかかってますのよ?」
サランド公爵夫人の口調は明らかに不満げだった
だが明らかに下の立場であるレイヴロン子爵ではあるけど、何かに取り憑かれたようにその場から駆け出した
「申し訳ない!とにかく問題が――」
そう言いつつレイヴロン子爵は急いで大広間からでていく
そして、まるで影のように彼は子爵の後を追っって行く
その口元には誰にも気づかれてない笑みを浮かべだ。
彼は警備兵でもなんでもない。
この警備兵の姿はすべて仮初。『変化 』それが彼が使った魔法。
彼がこの煌びやかな晴れ舞台に現れた理由。それはこの場をぶち壊すためであった。
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