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2章 革命のいぶき
2話 火蜥蜴《サラマンダー》に導かれて
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「レヴィ、落ち着いて聞いて」
久しぶりに母の言葉が頭をよぎる
拷問によって痩せ劣った褐色の肌そして白濁してしまった黒い瞳――
レヴィの母はこの帝国の人間でも何でもない。夜美ノ民と呼ばれる隣国の異邦人だった。
どうして母が帝国に捕まったか。後にお世話になる暗殺者ギルドマスターの話では母もまた暗殺者として暗躍していたらしい
でも幼いレヴィの目にはただただ優しくて強い母親にしか記憶がない
そして魔法帝国はそんな母さんを処刑した。
なんの罪を着させられたかなどどうでもいい。俺から母さんを引き離したことが帝国の罪だ。
処刑を待つだけの母にレヴィは一度だけ会ったことがある。
その時だった。この呪われたペンダントを渡されたのは
「このペンダントがあなたとあなたの父を引き合わせてくれる……だから絶対に離さないでね」
それが母と会話した最後だった
もっと話したいことはたくさんあった。甘えたいこともたくさんあった
でも母はただ会いたくもない父親の手がかりだけ突きつけて天国に行ってしまった。
父親――レヴィも薄々気づいてはいた。本来魔法が使えない夜美ノ民から生まれた自分にどうして魔力が存在するのか
言うまでもない。自分の父親は魔血なんだと。
本来混ざりあってはいけないハーフ魔血なんだと。
母親が魔法帝国に処刑される前からずっとレヴィは帝国をそして魔血を恨んでいた。
もちろんその中には無責任に自分を作った父親も入っている。
すべての魔血に天罰を。それだから今の暗殺魔法士になったと信じている。
だけど――
何故今頃になって母の最期を思い出したのだろう
呪いのような母の形見を見つけてしまったのだろう
帝都アルデオを南北に貫くヒース河に掛かる通称境界橋
文字通り魔血と非魔血の領域を分ける橋の上でレヴィはふと掌からあるものを取りだした
母の形見であり会いたくもない父への道標である銀色の蜥蜴が掘られたペンダントトップ。
レヴィはそれを苦々しく眺めていた。
あの魔血令嬢が持っていたペンダント――考えたくもないけど自分の持っている『母の形見』にそっくりだった
つまりこれはどういう事だろう。
想像もしたくないけど、悪い考えばかり脳裏によぎる
その度に錯綜する顔を見た事もない父親――
それが出てくる度にレヴィはその父親を意識の端へと追いやった
もう二度と出てくるな――と
「レヴィ。ねえレヴィ!」
その一言にレヴィははっと我に返る
そこにはすこし先を歩きながら呆れたような表情をうかべる相棒ザガロだった。
「何ぼーっとしてんの?早く報告行くよー」
その一言にレヴィは彼の話を聞こえてないように顔を逸らした
「俺、今日はパスするわ」
「え?」
その一言にザガロは驚いた表情を浮かべた。
「いやなんでだよ。さっきからレヴィ様子おかしくない」
「·····別に」
そう言うとレヴィは深くためを着いて滔々と流れるヒース河を見つめながら言った
「今日は気持ちが乗らないだけ……それだけ」
その言葉にザガロは承服しかねない表情を浮かべたが、もう今日の彼には何を言っても無駄なのを悟ったのかため息をついて踵を返した。
「わかったよ。今日はここで解散しよう」
そう言うとザガロは手をかざすとそのまま闇の中へとすっとその姿を紛らせた。
一人になったレヴィはまたヒース河を眺めながら掌の中のペンダントを意味もなく転がした
どういう訳か、先程のあの魔血令嬢の存在で今まで以上に脳裏に会いたくもない父親が余計チラついてきた
それがレヴィにとっては鬱陶しくて鬱陶しくて仕方がなかった。
「クソ……」
そう言うとレヴィはイラついたように顔を横に振るうと掌の中のペンダントを握りしめ、そのまま下を流れるヒース河にそれを投げ捨てよう――とした瞬間だった。
「あなた……」
その声はとてつもなく乾いていて、そして微弱な怒りの色も見えた。
ふとそちらを見るとそこには両手にハイヒールを持ち青いドレスに裸足という不思議な格好の魔血の少女――そうレイヴロン子爵を葬った際にその現場を見られたあの魔血の少女だった。
「お前、なんで·····」
レヴィは驚きの表情を浮かべたがそれよりも早く彼女はレヴィの背中に飛びついた
そして耳元で一言言った
「助けて――」
その瞬間レヴィははっと目を見開く
強いそして悪意に満ちた魔力の集中を感じた。
レヴィは瞬く間に強靭な魔障壁を展開する
次の瞬間、風の刃が二擊彼らの頭上に振り下ろされた
「ちっ……追っ手が来たのか」
レヴィは一言そう舌打ちすると、目の前に現れた刺客を睨みつけた
自分を追ってきたのか、それともこの魔血の少女を追ってきたのかはまだ予想できないが、どう考えてもまずい状況なのは周知の事実だ。
「おい、女」
レヴィは左掌に魔力を込めながら彼女に小さく囁いた。
「魔法で一気に片付ける。話はその後だ」
そう言った瞬間レヴィは足元の石畳にその左手を突き立てると頭に浮かんだ魔法文字を詠唱した
「闇空間·····」
その瞬間、レヴィの左腕から夜の闇よりも黒い吸い込まれそうな闇が生まれた。
そしてその闇は追っ手達をずるずると亜空間へと引きずり込まれていく
そして頃合を見つけてレヴィは右手の指をパチンと鳴らした
「炸裂!」
その瞬間、闇に包まれた朧気な亜空間の口は彼らを飲み込み事切れたようにぷつんと消えた。
それっきり追っ手は彼らの目の前からぱったりと姿を消していた。
久しぶりに母の言葉が頭をよぎる
拷問によって痩せ劣った褐色の肌そして白濁してしまった黒い瞳――
レヴィの母はこの帝国の人間でも何でもない。夜美ノ民と呼ばれる隣国の異邦人だった。
どうして母が帝国に捕まったか。後にお世話になる暗殺者ギルドマスターの話では母もまた暗殺者として暗躍していたらしい
でも幼いレヴィの目にはただただ優しくて強い母親にしか記憶がない
そして魔法帝国はそんな母さんを処刑した。
なんの罪を着させられたかなどどうでもいい。俺から母さんを引き離したことが帝国の罪だ。
処刑を待つだけの母にレヴィは一度だけ会ったことがある。
その時だった。この呪われたペンダントを渡されたのは
「このペンダントがあなたとあなたの父を引き合わせてくれる……だから絶対に離さないでね」
それが母と会話した最後だった
もっと話したいことはたくさんあった。甘えたいこともたくさんあった
でも母はただ会いたくもない父親の手がかりだけ突きつけて天国に行ってしまった。
父親――レヴィも薄々気づいてはいた。本来魔法が使えない夜美ノ民から生まれた自分にどうして魔力が存在するのか
言うまでもない。自分の父親は魔血なんだと。
本来混ざりあってはいけないハーフ魔血なんだと。
母親が魔法帝国に処刑される前からずっとレヴィは帝国をそして魔血を恨んでいた。
もちろんその中には無責任に自分を作った父親も入っている。
すべての魔血に天罰を。それだから今の暗殺魔法士になったと信じている。
だけど――
何故今頃になって母の最期を思い出したのだろう
呪いのような母の形見を見つけてしまったのだろう
帝都アルデオを南北に貫くヒース河に掛かる通称境界橋
文字通り魔血と非魔血の領域を分ける橋の上でレヴィはふと掌からあるものを取りだした
母の形見であり会いたくもない父への道標である銀色の蜥蜴が掘られたペンダントトップ。
レヴィはそれを苦々しく眺めていた。
あの魔血令嬢が持っていたペンダント――考えたくもないけど自分の持っている『母の形見』にそっくりだった
つまりこれはどういう事だろう。
想像もしたくないけど、悪い考えばかり脳裏によぎる
その度に錯綜する顔を見た事もない父親――
それが出てくる度にレヴィはその父親を意識の端へと追いやった
もう二度と出てくるな――と
「レヴィ。ねえレヴィ!」
その一言にレヴィははっと我に返る
そこにはすこし先を歩きながら呆れたような表情をうかべる相棒ザガロだった。
「何ぼーっとしてんの?早く報告行くよー」
その一言にレヴィは彼の話を聞こえてないように顔を逸らした
「俺、今日はパスするわ」
「え?」
その一言にザガロは驚いた表情を浮かべた。
「いやなんでだよ。さっきからレヴィ様子おかしくない」
「·····別に」
そう言うとレヴィは深くためを着いて滔々と流れるヒース河を見つめながら言った
「今日は気持ちが乗らないだけ……それだけ」
その言葉にザガロは承服しかねない表情を浮かべたが、もう今日の彼には何を言っても無駄なのを悟ったのかため息をついて踵を返した。
「わかったよ。今日はここで解散しよう」
そう言うとザガロは手をかざすとそのまま闇の中へとすっとその姿を紛らせた。
一人になったレヴィはまたヒース河を眺めながら掌の中のペンダントを意味もなく転がした
どういう訳か、先程のあの魔血令嬢の存在で今まで以上に脳裏に会いたくもない父親が余計チラついてきた
それがレヴィにとっては鬱陶しくて鬱陶しくて仕方がなかった。
「クソ……」
そう言うとレヴィはイラついたように顔を横に振るうと掌の中のペンダントを握りしめ、そのまま下を流れるヒース河にそれを投げ捨てよう――とした瞬間だった。
「あなた……」
その声はとてつもなく乾いていて、そして微弱な怒りの色も見えた。
ふとそちらを見るとそこには両手にハイヒールを持ち青いドレスに裸足という不思議な格好の魔血の少女――そうレイヴロン子爵を葬った際にその現場を見られたあの魔血の少女だった。
「お前、なんで·····」
レヴィは驚きの表情を浮かべたがそれよりも早く彼女はレヴィの背中に飛びついた
そして耳元で一言言った
「助けて――」
その瞬間レヴィははっと目を見開く
強いそして悪意に満ちた魔力の集中を感じた。
レヴィは瞬く間に強靭な魔障壁を展開する
次の瞬間、風の刃が二擊彼らの頭上に振り下ろされた
「ちっ……追っ手が来たのか」
レヴィは一言そう舌打ちすると、目の前に現れた刺客を睨みつけた
自分を追ってきたのか、それともこの魔血の少女を追ってきたのかはまだ予想できないが、どう考えてもまずい状況なのは周知の事実だ。
「おい、女」
レヴィは左掌に魔力を込めながら彼女に小さく囁いた。
「魔法で一気に片付ける。話はその後だ」
そう言った瞬間レヴィは足元の石畳にその左手を突き立てると頭に浮かんだ魔法文字を詠唱した
「闇空間·····」
その瞬間、レヴィの左腕から夜の闇よりも黒い吸い込まれそうな闇が生まれた。
そしてその闇は追っ手達をずるずると亜空間へと引きずり込まれていく
そして頃合を見つけてレヴィは右手の指をパチンと鳴らした
「炸裂!」
その瞬間、闇に包まれた朧気な亜空間の口は彼らを飲み込み事切れたようにぷつんと消えた。
それっきり追っ手は彼らの目の前からぱったりと姿を消していた。
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