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朱色を視しては一人待つ
朱色を視しては一人待つ7
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小雪というには雪も見られず、立冬というには寒さが続いている。
屋内は夜風を凌いでくれるから外よりはマシであるにせよ、寒い物は寒い。夜の冷え込みは尚更で、足を止めて知事困る訳にもいかずポケットから片手が離れない。向かうは、渡り廊下の先にある図書館。四方から何が飛び出してくるか分からないのに、饒舌な日常会話は止まらない。
窓が支配されていた小部屋とは違い、軒並み一介のガラスを埋め突こうとした葦の群生も廊下の月光を支配するには至らなかったようだ。月明りはスマホの明かり抜きでも足元を照らしてくれる。
「着きましたよ、先輩」
そう言い七井後輩がさした先には、二階建ての建物。
この部分はコンクリートで舗装されているからだろう。葦の支配に負けず劣らない人工物の道が、図書館へと続いていた。石橋を叩いて渡るほど慎重になりすぎてもいけないが、警戒だけは怠らずに扉前まで歩を進めた。
「__市立図書館だっけ?」
「一応、一学校のって話でしたけど」
学園の敷地面積も広大なモノだが、廃れたとはいえその厳かな雰囲気は今尚迫力を残している。それどころか、周囲の荒廃した様子も相まってこちらを委縮させる様だ。
ガラス窓の奥では、来客用の地図に示されていたようにカフェテリアが併設されており、借り入れた書籍を其処で読む事も可能らしい。様々な人が待ち時間の活用に利用していたと聞く。それ程まで二充実した施設を持ち得るのだから、お嬢様なんて肩書がつくのも納得だろう。
「とりあえずマスターキーで開けちゃいましょう」
「今思ったけど、さっきみたいに不法侵入すればいいのでは?」
妙に手慣れた鍵開け術を見せた後輩の素行を今更どうこう言う気は無いが、図書館の鍵穴は先程開けた表玄関と大差ないように見える。こういった場所で安全面を考慮すればそれも一つの手だろう。まあ、マスターキーがあるのならそれに越した事は無いのは確かだが……。
それに対し、七井後輩は喜々としてカギを回しながら答える。
「ピッキングって時間かかるんですよ。さっきみたいなのに襲われたくないでしょ?それに、常識的じゃありません」
__いや、まあ許可は取っているのだろうけど。
「廃墟探索も常識的じゃないと思うのですが?」
それが趣味としてあるのなら、廃墟ガールとでも名乗ればいいのに。
そんな事を口走ってしまったせいか、くだらない言葉に大げさ気味に七井後輩が乗る。成程、その手があったかなんて口元に手を当て考えて。いや、別にそこに私が関わらなければいいのだけれど、我が後輩には致命的に人を巻き込んでしまう悪癖がある。
「いいですね、先輩。廃墟ガールってグループ。実は私、廃墟探索に興味があるんですよ」
「仕事柄?」
「いえいえ。廃墟に挑む探偵って、何かいいじゃないですか?自分は、見習いですが」
「法律に抵触するから駄目です。それに、それを言うなら私も助手だよ?」
お目付け役の先輩としては、この後輩が罪を犯すのを止める責任が含まれる。
猫の探偵なら、そう付け加えるだろう。無論否定は忘れない。
「じゃあ、先輩。法律に抵触しない程度で活動しませんか?」
「__まあ、無事に生きて帰れたら考えるよ」
「言質取りましたからね?」
「それと、あんまり危ない場所じゃない所」
子気味良い音と共に開け放たれた扉。
先程の化け物がいるかも分からない。慎重に扉を開ける。
「ああ、噂だけで大した所がなさそうな場所は既に幾つか」
後輩は知らないだろう。
そう言った場所程、大抵碌なモノではない事を。
何はともあれ。
「程々に付き合うよ」
「度々付き合ってください。さて、先輩。この図書館にいる幽霊ですが、実は私達には目星がついています」
彼女曰く。
図書館の幽霊は彼女の親戚にあたる人間の友人であり、この図書館に二十年近く幽閉されているらしい。靴の回収と幽霊の無力化が七井後輩の目的だ。
扉の先にはカウンターと、グループ席がいくらか。そのどれもが埃を被ってはおらず、誰かが定期的に清掃に励んでいるように見える。
そして、その奥には。
「初めまして、四方木さん」
図書館の幽霊が腰を落ち着かせていた。
屋内は夜風を凌いでくれるから外よりはマシであるにせよ、寒い物は寒い。夜の冷え込みは尚更で、足を止めて知事困る訳にもいかずポケットから片手が離れない。向かうは、渡り廊下の先にある図書館。四方から何が飛び出してくるか分からないのに、饒舌な日常会話は止まらない。
窓が支配されていた小部屋とは違い、軒並み一介のガラスを埋め突こうとした葦の群生も廊下の月光を支配するには至らなかったようだ。月明りはスマホの明かり抜きでも足元を照らしてくれる。
「着きましたよ、先輩」
そう言い七井後輩がさした先には、二階建ての建物。
この部分はコンクリートで舗装されているからだろう。葦の支配に負けず劣らない人工物の道が、図書館へと続いていた。石橋を叩いて渡るほど慎重になりすぎてもいけないが、警戒だけは怠らずに扉前まで歩を進めた。
「__市立図書館だっけ?」
「一応、一学校のって話でしたけど」
学園の敷地面積も広大なモノだが、廃れたとはいえその厳かな雰囲気は今尚迫力を残している。それどころか、周囲の荒廃した様子も相まってこちらを委縮させる様だ。
ガラス窓の奥では、来客用の地図に示されていたようにカフェテリアが併設されており、借り入れた書籍を其処で読む事も可能らしい。様々な人が待ち時間の活用に利用していたと聞く。それ程まで二充実した施設を持ち得るのだから、お嬢様なんて肩書がつくのも納得だろう。
「とりあえずマスターキーで開けちゃいましょう」
「今思ったけど、さっきみたいに不法侵入すればいいのでは?」
妙に手慣れた鍵開け術を見せた後輩の素行を今更どうこう言う気は無いが、図書館の鍵穴は先程開けた表玄関と大差ないように見える。こういった場所で安全面を考慮すればそれも一つの手だろう。まあ、マスターキーがあるのならそれに越した事は無いのは確かだが……。
それに対し、七井後輩は喜々としてカギを回しながら答える。
「ピッキングって時間かかるんですよ。さっきみたいなのに襲われたくないでしょ?それに、常識的じゃありません」
__いや、まあ許可は取っているのだろうけど。
「廃墟探索も常識的じゃないと思うのですが?」
それが趣味としてあるのなら、廃墟ガールとでも名乗ればいいのに。
そんな事を口走ってしまったせいか、くだらない言葉に大げさ気味に七井後輩が乗る。成程、その手があったかなんて口元に手を当て考えて。いや、別にそこに私が関わらなければいいのだけれど、我が後輩には致命的に人を巻き込んでしまう悪癖がある。
「いいですね、先輩。廃墟ガールってグループ。実は私、廃墟探索に興味があるんですよ」
「仕事柄?」
「いえいえ。廃墟に挑む探偵って、何かいいじゃないですか?自分は、見習いですが」
「法律に抵触するから駄目です。それに、それを言うなら私も助手だよ?」
お目付け役の先輩としては、この後輩が罪を犯すのを止める責任が含まれる。
猫の探偵なら、そう付け加えるだろう。無論否定は忘れない。
「じゃあ、先輩。法律に抵触しない程度で活動しませんか?」
「__まあ、無事に生きて帰れたら考えるよ」
「言質取りましたからね?」
「それと、あんまり危ない場所じゃない所」
子気味良い音と共に開け放たれた扉。
先程の化け物がいるかも分からない。慎重に扉を開ける。
「ああ、噂だけで大した所がなさそうな場所は既に幾つか」
後輩は知らないだろう。
そう言った場所程、大抵碌なモノではない事を。
何はともあれ。
「程々に付き合うよ」
「度々付き合ってください。さて、先輩。この図書館にいる幽霊ですが、実は私達には目星がついています」
彼女曰く。
図書館の幽霊は彼女の親戚にあたる人間の友人であり、この図書館に二十年近く幽閉されているらしい。靴の回収と幽霊の無力化が七井後輩の目的だ。
扉の先にはカウンターと、グループ席がいくらか。そのどれもが埃を被ってはおらず、誰かが定期的に清掃に励んでいるように見える。
そして、その奥には。
「初めまして、四方木さん」
図書館の幽霊が腰を落ち着かせていた。
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