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20 契約と葬儀へ向けて
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してやられた侯爵ではあるが、もちろんそのままで済ませるわけにはいかない。
ことは、金銭契約なのである。対価をきちんと得られないと、搾り取られるだけの甘い男と舐められてしまうのだ。
「継続する微笑みには、継続する供物も必要かと思うがね」
「それは確かにそうでございましょうね。では、月は年に2度微笑まれる様ですので、その時に合わせた供物ではいかがでしょう?」
「月の微笑みなのだよ?月2度の供物が妥当ではないかね?」
「まあ?月光の微かな光の恵みにそれは余りにも強欲というものでしょう?日の光の恵みでしたら別ですが。」
これの翻訳は以下の通りである。
「継続して利子を減額するにゃぁ、継続したサービスの提供が妥当じゃろうのお」
「そりゃぁ確かにそうじゃの、じゃぁ、二月割引じゃけぇ、年2度のサービスのご提供でいかがかね?」
「月利子の割引なんじゃけぇ、月2回の提供じゃろうが」
「利子の割引金額に対してその提供は求めすぎじゃろ。元本を減らして頂けるなら別じゃが」
その後も丁々発止のやり取りが続いたが、これ以降は、まだるっこしいので翻訳文のみにてお届けしよう。
「元本まじゃぁ減らせんぞ」
「じゃったら、割引に対するサービスは年2で譲れん。サービスを増やす希望をされた場合、利子の割引率を上げて頂くことになるんじゃ」
「継続割引じゃぁのぉて、1度のサービスを追加した場合、ひと月の割引を対価とすることじゃぁいかがか?」
「それじゃったら、今回の様な特に念入りなサービスじゃぁのぉて、こちらの基準で通常のサービスとなるんじゃ。それでも一般貴婦人より濃ゆい物となるんよ」
「えぇじゃろう、口での愛撫は含むんか?」
「口は含まれん。ひと月分利子割引の報酬じゃぁ、手での愛撫ばっかしになるんじゃき」
「しゃぁなぃんじゃのぉ。じゃぁそんように契約しましょう」
こうして、二人のサービス提供とその報酬内容に対する契約は成立したのである。
アレグレ侯爵の狐色の髪が馬車に消え、その車影が門から消えた後。
マリアンヌには山ほどしなければいけない事が待ち構えていた。
まずは借入金対策として動かしていた弁護士を呼び出し、債権者へ接見を申し出なくてはならない。
アレグレ侯爵からの情報で、夫への悪意は多方面から有った事が判明したからである。
有り体に言って、遊びの借金を申し込める相手というのが、その遊びについて知っている相手である確率も高い。つまり粗悪な媚薬等も借金の相手からもたらされている確率が高かろう。
一体どのように悪意がもたらされたのか、それについての対策、そしてなろうことなら報復を検討しなくてはならないと心づもりを整える。
さらに、夫の葬儀の手配を差配しなければならなかった。
身分の高い者の葬儀は、埋葬までに1週間以上を要するものである。
中世~近世の葬儀の場合、もし身分の高い人物が死んだ場合には、直ちに埋葬されることは決してなく、亡骸を保存するために若干の処置がなされた
例えば「鼻に水銀を流し、防腐剤と考えられていた芳香性物質を染み込ませたタンポンで口・耳・鼻の穴を塞ぎ、顔に香油を塗擦する」などした。(ただし、全く不十分な処置であることは明白だ)
非常に珍しい事例だが、遺体が遠くへ運ばれる時には、教会の許可を得て医師が腹を開け、内臓を取り出した。
さらにミルラ・アロエス・他の芳香性物質が詰められた後、腹は再び縫い合わされ、その後遺体は密封された鉛の柩に納められた。あるいは遺体は煮沸されたのである。
高位の人物の場合には1週間ないしそれ以上安置されたが、遺体保存法があまり効果がなかったから、遺体の代わりにマネキンを置くという習慣が始まった。マネキンの顔は、亡くなった人の顔の型を取って作られ彩色されたマスクだった。
高位の人は「教会内の脇祭壇や墳墓用小穴」or「(死後にも悔悛の気持ちを示すために)司祭に踏みつけられるよう祭壇の踏み段の下」に埋葬されることを望んだ。
その一方で地方によって様々だが、死者を弔う儀式は敬虔に守られた。家族によるものでは、葬儀の1週間後・1ヶ月後・1年忌・時には子孫の結婚式の翌日に、ミサを立ててもらい特別な祈りをあげた。教会によるものでは、「死者の日」の儀式が盛大な典礼と数多くの宗教的or迷信的な習慣を伴って挙行された。
まだ天国に召されていないような可哀相な魂は、その行く末に対して全く無力だったからたいそう哀れに思われ、そうした魂を慰めるために祈りを呼びかけ、その苦しみを和らげてあげようとしたのである。
マリアンヌの夫は敬虔な信徒というほどではなかったが、それなりに宗教を尊重していた。
祭壇の下ほどではないが、脇祭壇は望むのではないかと思われるのである。
教会に借入を申し込む関係もあるし、埋葬場所の交渉もしなければならない。
どうであれ直接司祭に接見しなければならない。
最後に親戚関係である。
日本でも葬儀で縁故からの、遺産の分け前や親族の口出しが骨肉の争いとして現れるのが葬儀の場である。
これに打ち勝たないとならない。
もし子供がいなかった場合は、すぐさま生家に引き取られ、また政略結婚やら援助結婚をさせられるところだが、すでに子供が4人おり、上の子は10歳も過ぎてあと数年もすれば成人と認められる年齢であるし、後継教育も順調に進んでいる。
借金はあるが、この家を手放すことは自身のためにも、子らの為にも認められないのである。
ハイエナのような親類たちから、権益を守り借入を解決しなくてはならない。
やることの多さにため息をつきつつ、執事にまずは弁護士への連絡を指示するのであった。
****************************************
方言変換 「ソーシャル達川くん」 にご協力いただきましたw
ことは、金銭契約なのである。対価をきちんと得られないと、搾り取られるだけの甘い男と舐められてしまうのだ。
「継続する微笑みには、継続する供物も必要かと思うがね」
「それは確かにそうでございましょうね。では、月は年に2度微笑まれる様ですので、その時に合わせた供物ではいかがでしょう?」
「月の微笑みなのだよ?月2度の供物が妥当ではないかね?」
「まあ?月光の微かな光の恵みにそれは余りにも強欲というものでしょう?日の光の恵みでしたら別ですが。」
これの翻訳は以下の通りである。
「継続して利子を減額するにゃぁ、継続したサービスの提供が妥当じゃろうのお」
「そりゃぁ確かにそうじゃの、じゃぁ、二月割引じゃけぇ、年2度のサービスのご提供でいかがかね?」
「月利子の割引なんじゃけぇ、月2回の提供じゃろうが」
「利子の割引金額に対してその提供は求めすぎじゃろ。元本を減らして頂けるなら別じゃが」
その後も丁々発止のやり取りが続いたが、これ以降は、まだるっこしいので翻訳文のみにてお届けしよう。
「元本まじゃぁ減らせんぞ」
「じゃったら、割引に対するサービスは年2で譲れん。サービスを増やす希望をされた場合、利子の割引率を上げて頂くことになるんじゃ」
「継続割引じゃぁのぉて、1度のサービスを追加した場合、ひと月の割引を対価とすることじゃぁいかがか?」
「それじゃったら、今回の様な特に念入りなサービスじゃぁのぉて、こちらの基準で通常のサービスとなるんじゃ。それでも一般貴婦人より濃ゆい物となるんよ」
「えぇじゃろう、口での愛撫は含むんか?」
「口は含まれん。ひと月分利子割引の報酬じゃぁ、手での愛撫ばっかしになるんじゃき」
「しゃぁなぃんじゃのぉ。じゃぁそんように契約しましょう」
こうして、二人のサービス提供とその報酬内容に対する契約は成立したのである。
アレグレ侯爵の狐色の髪が馬車に消え、その車影が門から消えた後。
マリアンヌには山ほどしなければいけない事が待ち構えていた。
まずは借入金対策として動かしていた弁護士を呼び出し、債権者へ接見を申し出なくてはならない。
アレグレ侯爵からの情報で、夫への悪意は多方面から有った事が判明したからである。
有り体に言って、遊びの借金を申し込める相手というのが、その遊びについて知っている相手である確率も高い。つまり粗悪な媚薬等も借金の相手からもたらされている確率が高かろう。
一体どのように悪意がもたらされたのか、それについての対策、そしてなろうことなら報復を検討しなくてはならないと心づもりを整える。
さらに、夫の葬儀の手配を差配しなければならなかった。
身分の高い者の葬儀は、埋葬までに1週間以上を要するものである。
中世~近世の葬儀の場合、もし身分の高い人物が死んだ場合には、直ちに埋葬されることは決してなく、亡骸を保存するために若干の処置がなされた
例えば「鼻に水銀を流し、防腐剤と考えられていた芳香性物質を染み込ませたタンポンで口・耳・鼻の穴を塞ぎ、顔に香油を塗擦する」などした。(ただし、全く不十分な処置であることは明白だ)
非常に珍しい事例だが、遺体が遠くへ運ばれる時には、教会の許可を得て医師が腹を開け、内臓を取り出した。
さらにミルラ・アロエス・他の芳香性物質が詰められた後、腹は再び縫い合わされ、その後遺体は密封された鉛の柩に納められた。あるいは遺体は煮沸されたのである。
高位の人物の場合には1週間ないしそれ以上安置されたが、遺体保存法があまり効果がなかったから、遺体の代わりにマネキンを置くという習慣が始まった。マネキンの顔は、亡くなった人の顔の型を取って作られ彩色されたマスクだった。
高位の人は「教会内の脇祭壇や墳墓用小穴」or「(死後にも悔悛の気持ちを示すために)司祭に踏みつけられるよう祭壇の踏み段の下」に埋葬されることを望んだ。
その一方で地方によって様々だが、死者を弔う儀式は敬虔に守られた。家族によるものでは、葬儀の1週間後・1ヶ月後・1年忌・時には子孫の結婚式の翌日に、ミサを立ててもらい特別な祈りをあげた。教会によるものでは、「死者の日」の儀式が盛大な典礼と数多くの宗教的or迷信的な習慣を伴って挙行された。
まだ天国に召されていないような可哀相な魂は、その行く末に対して全く無力だったからたいそう哀れに思われ、そうした魂を慰めるために祈りを呼びかけ、その苦しみを和らげてあげようとしたのである。
マリアンヌの夫は敬虔な信徒というほどではなかったが、それなりに宗教を尊重していた。
祭壇の下ほどではないが、脇祭壇は望むのではないかと思われるのである。
教会に借入を申し込む関係もあるし、埋葬場所の交渉もしなければならない。
どうであれ直接司祭に接見しなければならない。
最後に親戚関係である。
日本でも葬儀で縁故からの、遺産の分け前や親族の口出しが骨肉の争いとして現れるのが葬儀の場である。
これに打ち勝たないとならない。
もし子供がいなかった場合は、すぐさま生家に引き取られ、また政略結婚やら援助結婚をさせられるところだが、すでに子供が4人おり、上の子は10歳も過ぎてあと数年もすれば成人と認められる年齢であるし、後継教育も順調に進んでいる。
借金はあるが、この家を手放すことは自身のためにも、子らの為にも認められないのである。
ハイエナのような親類たちから、権益を守り借入を解決しなくてはならない。
やることの多さにため息をつきつつ、執事にまずは弁護士への連絡を指示するのであった。
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