隣の彼女

沢麻

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異星人

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 「女子の中でさぁ、誰が一番いい?」
 潤二郎は最近そんなことばかり飽きもせず言う。周りに女子がいると大人しいシャイボーイになるくせに、裏ではエロガキだ。もう何回もこの話題になっているから、優吾は潤二郎のお気に入りはすっかり把握している。足が速いナツキ、顔が可愛いリオ、背が高い万夢、おっぱいがでかいアイラ。聞き飽きた。
 「関口も可愛いよね」
 敦樹が言った。優吾はドキッとした。関口茉莉沙。見たことのないタイプだった。優吾は自分で言うのもなんだが、女子に人気がある。だからどんな女子とも、話しかければ仲良くなれた。しかし関口茉莉沙は、話しかけても優吾の空回りとなっている。優吾だけでなく誰とも仲良くしないならまだわかるが、どうやら距離は少しあるが家が一番近い万夢のことが気に入ったのか万夢とたびたび話しているのを見ると悔しい気持ちになった。
 「でもさ、あいつんち、お化け屋敷でしょ」
 レオンが言った。周りもああーと同意する。関口茉莉沙がクラスに馴染まないから、関口のことを可愛いと言うことすら憚られる空気になっている。だからみんな何か理由をつけては、関口が土俵に立てないことにしたいのだ。
 「そういうこと言うなよ。本人が好きで住んでるんじゃないんだからさ」
 優吾は友達をたしなめた。優吾は優等生的なポジション。せめてこういうところで関口茉莉沙を守ってやらなきゃと思った。
 関口茉莉沙の家は、この辺りでは永らく空き家でお化け屋敷と呼ばれていた古い平屋だった。そこに彼女が住んでいると発覚してからは、転校生フィーバーで群がっていた連中も一気に離れた。関口は怨霊だとか、怨霊なのを悟られないために黒髪を隠しているとか、金がなさすぎて格安の家賃のあの家に住んでいるとか、借金取りに追われて引っ越してきたとか、そういう噂が飛び交うようになった。もともとの近寄りがたい雰囲気だったが、住み処のおかげで誰も寄り付けない要塞を築いた。
 関口はそれでいいのかな、と優吾は心配していた。自分が人気者なのをわかっていて、いつも友達を増やすことに重点を置く優吾は、実は誰よりも寂しがり屋なのだった。友達がいれば、いないよりずっと楽しい。だから一人になりたくない。みんないいところがある。みんなと友達でいたい。
 「関口も実は隠れ巨乳でさぁ」
 潤二郎が言った。まったく色気付きやがって。みんなが「何ちゃっかり見てんだよー」とどついた。
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