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偽善者
⑤
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「優吾」
友達と別れた後、万夢に後ろから声をかけられた。明るく振り向いたが、この間公園で巻いたことを思い出して少し気まずい気持ちになった。
「こないだごめんなー先に帰って」
「うん」
万夢と二人で帰るのは久しぶりだった。最近は大勢か、関口がいたから。
「今日は関口は?」
「知らない。先に帰ったんじゃない?」
「ユヅキたちとうまくいかないなら、関口と仲良くなればいいのに」
優吾はつい本音を言ってしまった。しかしそれは、優吾の都合だった。そんな簡単に仲良くなれるなら、とっくに仲良くなっている。
「……私、マリサあんまり好きじゃない」
「え、そうなの?」
「優吾はマリサのこと、好きなんでしょ? ユヅキたちが絶え間なく噂してる。優吾が守りそうだから、マリサのこと表立って苛めたりできないって言ってる」
「はぁ? なんだそれ。苛めたいんだ」
「……みたいなことを言ってた。まぁその前にマリサが関わらないように離れてくれてるから」
優吾はさりげなく「好きなんでしょ」の問いをかわした。好きでもいいだろうよ。しかし自分がいじめのストッパーになっていたとは。関口のために役に立てていたことは嬉しかった。
「あいつ、いい奴でしょ。万夢とも合うんじゃない?」
「合わないし。全然、合わない。いい奴だとも思わない。優吾とだって合わないから。勘違いしないほうがいいよ」
「ひでぇな。関口はお前のこと気に入っているのに」
カチンときた。しかし、そこは流す。
「先生が勝手にペアにするからね」
「勝手にって……だってスマホ女子たちとペアにするわけにもいかないだろ。他に面倒見のよさそうな奴っていないし」
「ねぇヒーロー気取りやめて」
「……」
万夢は、優吾に喧嘩を売るために話しかけてきたのか。
「優吾がどんなにマリサのことお節介してもね、自己満以外なんでもないから。クラスの平和のためにーとか建前かもだけど、偽善だしそれ。偽善者の皮を被った自己満野郎だし」
「なんだよお前いきなり」
さすがの優吾も声を荒げた。ムカついた。
「お前みたいにスマホに振り回されてぼっちになった奴に何がわかんだよ。スマホのことしか考えてないくせに」
「ぼっちって!」
「そうじゃねーか。だから関口と居ればってアドバイスしてんだよこっちは。そしたら群れてられるし、お互い寂しくないし、ウィンウィンだろって言ってんの」
「スマホも持ってないくせに何言ってんの」
「んだとこの!」
優吾は傘を放り出して万夢に掴みかかろうとした。これは優吾がスマホを持てば解決する話なのか? 違うだろう。
「……」
殴られると思った万夢は目を瞑って構えている。殴らねぇよ。こんなどんくさい奴を、殴るかよ。
「……そんなにマリサが好きなら、優吾がマリサと居ればいいんだよ。全然似合わないけど」
「……」
優吾は悲しくなって、万夢をそのままにして家に走った。雨に濡れたが、そんなことよりどこかに隠れてしまいたかった。
偽善者。
自分にぴったりの言葉だと思った。
友達と別れた後、万夢に後ろから声をかけられた。明るく振り向いたが、この間公園で巻いたことを思い出して少し気まずい気持ちになった。
「こないだごめんなー先に帰って」
「うん」
万夢と二人で帰るのは久しぶりだった。最近は大勢か、関口がいたから。
「今日は関口は?」
「知らない。先に帰ったんじゃない?」
「ユヅキたちとうまくいかないなら、関口と仲良くなればいいのに」
優吾はつい本音を言ってしまった。しかしそれは、優吾の都合だった。そんな簡単に仲良くなれるなら、とっくに仲良くなっている。
「……私、マリサあんまり好きじゃない」
「え、そうなの?」
「優吾はマリサのこと、好きなんでしょ? ユヅキたちが絶え間なく噂してる。優吾が守りそうだから、マリサのこと表立って苛めたりできないって言ってる」
「はぁ? なんだそれ。苛めたいんだ」
「……みたいなことを言ってた。まぁその前にマリサが関わらないように離れてくれてるから」
優吾はさりげなく「好きなんでしょ」の問いをかわした。好きでもいいだろうよ。しかし自分がいじめのストッパーになっていたとは。関口のために役に立てていたことは嬉しかった。
「あいつ、いい奴でしょ。万夢とも合うんじゃない?」
「合わないし。全然、合わない。いい奴だとも思わない。優吾とだって合わないから。勘違いしないほうがいいよ」
「ひでぇな。関口はお前のこと気に入っているのに」
カチンときた。しかし、そこは流す。
「先生が勝手にペアにするからね」
「勝手にって……だってスマホ女子たちとペアにするわけにもいかないだろ。他に面倒見のよさそうな奴っていないし」
「ねぇヒーロー気取りやめて」
「……」
万夢は、優吾に喧嘩を売るために話しかけてきたのか。
「優吾がどんなにマリサのことお節介してもね、自己満以外なんでもないから。クラスの平和のためにーとか建前かもだけど、偽善だしそれ。偽善者の皮を被った自己満野郎だし」
「なんだよお前いきなり」
さすがの優吾も声を荒げた。ムカついた。
「お前みたいにスマホに振り回されてぼっちになった奴に何がわかんだよ。スマホのことしか考えてないくせに」
「ぼっちって!」
「そうじゃねーか。だから関口と居ればってアドバイスしてんだよこっちは。そしたら群れてられるし、お互い寂しくないし、ウィンウィンだろって言ってんの」
「スマホも持ってないくせに何言ってんの」
「んだとこの!」
優吾は傘を放り出して万夢に掴みかかろうとした。これは優吾がスマホを持てば解決する話なのか? 違うだろう。
「……」
殴られると思った万夢は目を瞑って構えている。殴らねぇよ。こんなどんくさい奴を、殴るかよ。
「……そんなにマリサが好きなら、優吾がマリサと居ればいいんだよ。全然似合わないけど」
「……」
優吾は悲しくなって、万夢をそのままにして家に走った。雨に濡れたが、そんなことよりどこかに隠れてしまいたかった。
偽善者。
自分にぴったりの言葉だと思った。
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