隣の彼女

沢麻

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茉莉沙

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 マリサへ
 手紙ありがとう。どうなったか気になってたから、元気だってわかってうれしいよー!
 私は色々あったけど(笑)結局南栄に行きました。あんなにやる気なかったのに、ミラクルとしか思えないよ。ちなみにじゅんじろーは落ちました。助かった(笑)同小から南栄は、二組は私だけで、一組の子が三人いるわー。
 正直、ちょっと南栄受けたこと後悔してるとこがあって、でも、今は南栄で良かったと思ってるよ。色んな子がいるから、世界が広くなるっていうか。イケメンも、何人かはいるしね(笑)
 優吾は星ヶ丘で、あいかわらず人気者みたいだよ。私は家近いから、学校はなれてもばったり会うとかよくあるんだけど、でも中学行くとなんか違うなって感じるよ。変わらないと思ってた優吾も成長してるんだなと思う。
 マリサは友達できたかな。マリサ、すごくミステリアスだからきっとまた魔王ポジションになればうまくやれるんじゃない? あれ、ほんとおいしいよ。いい役やったよ。すごい!
 また手紙書くね。マリサも書いてね。スマホ手に入れたらライン教えてね。
 じゃあねー。
 まゆめより
 
 好きなものを好きだというのはすごく難しい。
 一條優吾に初めて会ったときから、好きだな、と思った。ああいう風に明るくできないから、同時に嫉妬もしたのだった。
 転校は二回目だった。最初は二年生の時。それまでおばあちゃんの家に母親と住んでいたが、父親が一緒に暮らせるようになったからということで、狭いアパートに引っ越した。おばあちゃんとはその後、連絡を取ることがなかった。この間ジソーに行った時に、職員さんがおばあちゃんにも連絡を取ったようだったが、どうやら今は病気になっているようで、もう私とは暮らせないということだった。でもおばあちゃんも、決して優しい人ではなかった。母親といつも喧嘩していて、私に八つ当たりしてくることもあった。母子は必ずしも仲が良いわけではないと、幼いうちから感じていた。いきなり一緒に暮らすことになった父親も苦手だった。父親も子供という生き物が苦手なのか、滅多に会話することもなく、父親の目を気にした母親とも以前より話さなくなった。家の中で身を潜めて暮らしていた私は、学校で発散した。何をした、という意識はなかったが、いつの間にかみんなに嫌われた。茉莉沙は性格が悪い、と言われて、何が悪かったのか自分ではわからないのだが、無視された。家でも、学校でも無視されて、まるで幽霊のように存在がなかった。
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