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冴子ダイエット四ヶ月目・あと四キロ
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ダイエットオタクりんりんの攻撃はその後も続いた。食ツイをすれば二日に一回ほどのペースでダメ出し、言い訳ツイには冷酷に意見、良かったことは完スルー。一時はツイートをやめようかと真剣に悩んだが、励ましてくれたり、一緒に頑張ってくれたりする仲間もいるのでなかなか決断出来ずに今に至っている。
《ジム、なんとか週一で続いてる。ダーリンが姫を見ててくれるからできる。感謝感謝。》
こういうツイートはすぐさまいいねがつくので嬉しい。実際一雅なんてダーリンというか努力せずとも痩せている為嫉妬の対象なのだが、夫婦円満、家庭円満みたいなツイートは万人ウケするのである。ダイエットオタクりんりんもこういうのは興味ないらしいので安全牌ということだ。
コメントがついた。
《SDE38
私は張り切ってマシンやりすぎて、膝が痛くなってしまいました。sa-子さんも気をつけてね。お互いがんばりましょ》
このSDE38という人はダイエット開始時期が近かったこともあるのかよくコメントしてくれる。しかもダイエットオタクりんりんに攻撃されたツイートを、そのあと慰めてくれるかのようにコメントしてくれるので冴子は勝手に心の支えにしているのである。そしてもう一つの好感度ポイントとしては、冴子をはるかに上回るデブということだ。自分より不幸な人間を見ると勇気が湧いてくる原理である。
《SDE38さん、いつもありがとう!膝、大事にしてください》
返信した。デブは足腰にくるというのは本当なのだな、と妙に納得した。
今週はハワイに旅行に行っていた上司が鬼のように甘いナッツ入りチョコレートをお土産に買ってきたり、季節変わり目でコンビニが新作スイーツを立て続けにリリースしたり一雅の誕生日でケーキを食べたりと予期せぬ事態が多々あったので、冴子はがっつりトレーニングをしようと楽しみにしていた。インストラクターで一人かっこいい人がいるのもまた楽しみの一つなのだ。それなのにらんが熱を出し、更にそれが移っておじゃんになってしまった。最近スポーツクラブ通いを始めたからといって、よりいっそう自分を甘やかしてスイーツを食していた感が否めないのに、休んでしまったらただ摂取カロリーが増えただけということになる。
焦った冴子は、ダンスのDVDをかけて踊ることにした。冴子が風邪だから、と家事を全てやってくれていた一雅はそれを見て「えっ風邪なんじゃないの」と意見してきた。
「風邪だけど、このままじゃ太っていくから。ジムも行けなかったし」
「え、ゆっくりしてほしくて家事してるのに。冴子が踊るためじゃないんだけど」
「何よ。あんただっていつも私が家事してる時にテレビ見たりこっそりせんべい食べたりしてるじゃない」
とんだ邪魔が入った。腹が立ったので冴子は一心不乱に踊り続けた。らんも泣き始めた。
「ちょっとやめてよ。足音どんどんうるさくてらんがびっくりしてるじゃない」
「うるさい。ダイエット邪魔しないでよ」
「普段協力してるんだから、今日くらいはゆっくりしてよ。気持ち悪いからそんな鬼みたいな顔で踊らないで」
「鬼みたいって何よ」
一雅はらんを抱っこして寝室へ移動した。
冴子は体重の減りが停滞している。一雅が誕生日にモンブランをホールで食べたいとか言うからだ。一雅がダンスを邪魔するから。部長がハワイなんて行くからだ。らんが風邪なんて引くから。
スマホを見るとLEDが光っている。先ほど《娘の風邪移ってジム行けなくて悲しい》と呟きはしたが……
《ダイエットオタクりんりん
娘の風邪や自分の体調の方がダイエットより普通に大事でしょ。生活しっかりしてからダイエットしたら。ダイエットのために生きてるんじゃないでしょ》
……。そうだけど。
冴子は急にらんが心配になって、DVDを止め寝室へ向かった。らんは一雅と一緒に布団に入っている。
冴子も熱があるわけなので、ダイエットオタクりんりんに返信する元気はなかった。
《ジム、なんとか週一で続いてる。ダーリンが姫を見ててくれるからできる。感謝感謝。》
こういうツイートはすぐさまいいねがつくので嬉しい。実際一雅なんてダーリンというか努力せずとも痩せている為嫉妬の対象なのだが、夫婦円満、家庭円満みたいなツイートは万人ウケするのである。ダイエットオタクりんりんもこういうのは興味ないらしいので安全牌ということだ。
コメントがついた。
《SDE38
私は張り切ってマシンやりすぎて、膝が痛くなってしまいました。sa-子さんも気をつけてね。お互いがんばりましょ》
このSDE38という人はダイエット開始時期が近かったこともあるのかよくコメントしてくれる。しかもダイエットオタクりんりんに攻撃されたツイートを、そのあと慰めてくれるかのようにコメントしてくれるので冴子は勝手に心の支えにしているのである。そしてもう一つの好感度ポイントとしては、冴子をはるかに上回るデブということだ。自分より不幸な人間を見ると勇気が湧いてくる原理である。
《SDE38さん、いつもありがとう!膝、大事にしてください》
返信した。デブは足腰にくるというのは本当なのだな、と妙に納得した。
今週はハワイに旅行に行っていた上司が鬼のように甘いナッツ入りチョコレートをお土産に買ってきたり、季節変わり目でコンビニが新作スイーツを立て続けにリリースしたり一雅の誕生日でケーキを食べたりと予期せぬ事態が多々あったので、冴子はがっつりトレーニングをしようと楽しみにしていた。インストラクターで一人かっこいい人がいるのもまた楽しみの一つなのだ。それなのにらんが熱を出し、更にそれが移っておじゃんになってしまった。最近スポーツクラブ通いを始めたからといって、よりいっそう自分を甘やかしてスイーツを食していた感が否めないのに、休んでしまったらただ摂取カロリーが増えただけということになる。
焦った冴子は、ダンスのDVDをかけて踊ることにした。冴子が風邪だから、と家事を全てやってくれていた一雅はそれを見て「えっ風邪なんじゃないの」と意見してきた。
「風邪だけど、このままじゃ太っていくから。ジムも行けなかったし」
「え、ゆっくりしてほしくて家事してるのに。冴子が踊るためじゃないんだけど」
「何よ。あんただっていつも私が家事してる時にテレビ見たりこっそりせんべい食べたりしてるじゃない」
とんだ邪魔が入った。腹が立ったので冴子は一心不乱に踊り続けた。らんも泣き始めた。
「ちょっとやめてよ。足音どんどんうるさくてらんがびっくりしてるじゃない」
「うるさい。ダイエット邪魔しないでよ」
「普段協力してるんだから、今日くらいはゆっくりしてよ。気持ち悪いからそんな鬼みたいな顔で踊らないで」
「鬼みたいって何よ」
一雅はらんを抱っこして寝室へ移動した。
冴子は体重の減りが停滞している。一雅が誕生日にモンブランをホールで食べたいとか言うからだ。一雅がダンスを邪魔するから。部長がハワイなんて行くからだ。らんが風邪なんて引くから。
スマホを見るとLEDが光っている。先ほど《娘の風邪移ってジム行けなくて悲しい》と呟きはしたが……
《ダイエットオタクりんりん
娘の風邪や自分の体調の方がダイエットより普通に大事でしょ。生活しっかりしてからダイエットしたら。ダイエットのために生きてるんじゃないでしょ》
……。そうだけど。
冴子は急にらんが心配になって、DVDを止め寝室へ向かった。らんは一雅と一緒に布団に入っている。
冴子も熱があるわけなので、ダイエットオタクりんりんに返信する元気はなかった。
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