美人って

沢麻

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重めです!

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 「えっ猫山さんとやったの!?」
 休憩時間が同じだった野坂美紀に昨日の顛末を話すとオーバーリアクションされてしまい、同じクラスの担当の藤川智也が思いっきり反応したので紗耶香は先輩をバシッと叩く羽目になった。
 「声がでかいって!」
 「あ、ごめんごめん、つい。だって早くない? 出会って二日? 紗耶香ってどうしてそうなの?」
 「どうしてもこうしても、まぁつまりうまく利用された感じですよ……」
 「えっ付き合うとかじゃないってこと?」
 「……」
 
 紗耶香と猫山は本当に色々とうまくいかなかった。ことが終わったあと、愛を語り合う等々期待していたのだが、猫山は
 「保育士ってほんと遊んでるんだなー」
 とにやついてさっさと服を着て煙草を吸い始めたのである。さっきまでやっぱり猫山さんかっこいい~というモードになっていた紗耶香はここでついにキレた。遊んでるって何。保育士の名を出されてバカにされたことも許せなかった。
 「それって酷くない? 遊んでるって……私別に遊んでないし、保育士全般に遊んでるみたいな言い方ってないけど!」
 「え? 怒った? ごめんごめん。だって結構みんな言うよ。保育士可愛いけど軽いみたいな。だって会って二日目でこの展開なら俺も普通に遊ばれた系でしょ?」
 「はぁー? 遊ばれたって何? それこっちのせりふだし! 二日目で手出してきたそっちが軽いんじゃない」
 「あ、意外と重い系だった?」
 ……。駄目だ、完璧に遊ばれた。しかも同じ系統の人間だと見られてる。下手したらこのままセフレに持ってこうとしてない?
 「私二十五だよ? 今恋愛するなら遊びとかなしの重々希望に決まってんじゃん!」
 「あ、そっかぁー。女だもんなごめんごめんハハハハ」
 そう言うと猫山は爆笑しながら紗耶香の頭をぐりぐりと撫で回した。
 
 「それで、また会う約束したわけ?」
 美紀は顔をしかめて訊いてきた。藤川智也が聞き耳を立てていそうで気が気じゃない。
 「しませんでしたよ。もうこのまま消え去ろうと思ってるけど」
 「……なんていうか、あれだね。紗耶香、もうちょい大人にならないと」
 美紀はすっかり呆れ返っている。これは花怜に報告したところで同じ反応だろう。もうなかったことにしようと思い、とりあえず美紀に口止めをする。
 わかっていた筈なのに。実は紗耶香は、自分では重いつもりでも軽い女なんだろうか。
 十代の頃から嫌というほど同じようなパターンで、もう今更傷付かない。このままじゃ結婚はおろか、彼氏だって出来ないままだ。やっぱり合コンじゃ駄目なのか。結婚相談所とかそれ系なら、まさに結婚希望の男ばかり集まるからその方がいい? 悩む。
 
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