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第一章 AR(拡張現実)

第一話 天才プログラマー本田瑠威

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「ふう、これで完成っと。」
俺はキーボードにあるエンターキーを押してこれで十六個目となるAI( artificial intelligence、人工知能)を完成させた。
「これで十六個目かー。どれもアドミニストレーターをこえてないけどな・・・」
そうこれまで十六個のAIを作っているのだが、1個目に作ったAI、アドミニストレータを超えてはいなかった。
「ああー、徹夜してしまったよ。」
と、瑠威が自嘲気味に言ったら、アドミニストレーターが瑠威の声に反応して言った。
「ええ、そうですね。昨日の夜の十一時五十分から始めて六時間後の五時五十二分に作成が完了しましたからね。」
AIであるアドミニストレーターの声はAIとは思えないとても滑らかな声だった。
「おお・・・そんなにもかかったか。やはりサイバー攻撃に対する防御を特化したAIは作成に時間がかかるな。」
「そういえば、柳沢さんから依頼のメールが届いていますよ。」
柳沢さんとは瑠威が小学校4年生の時に国家機密情報をハッキングしてしまった時からの付き合いのある人で、サーバー対策本部部長でもある人だ。その人はときどき、というよりしょっちゅう依頼を持ち込んで来る。今作り終えた16個目のAIも柳沢の依頼によるものだ。
ちなみに現在瑠威が所有しているAIは3個あり一つ目が瑠威のデータの最高管理者のアドミニストレーターで2個目がクラッキング防止担当のプロテクシャン、3つ目が実際にはまだ使われていないAR専用のAIアシスタンスだ。残りの13個はすべて柳沢に譲渡した。
「はぁぁ?なんだこれ、これは依頼なのかよアド?」
瑠威はメールを見て出た疑問をためぐちでアドミニストレーターに投げかけた。すると、
「えぇ確かに、依頼とは思えない文章ですが・・・柳沢さんとは依頼以外でメールのやり取りをしたことはないためそう判断させてもらいました。」
そう、今回のメールは依頼とは思えない文章なのだ。
“私の事務室に来い”
私の事務室というのはサーバー対策事務所のことで、これが置かれているのは東京にある超高級マンションの一室だ。
「ふーん、そういえばそろそろアシスタンスは使えるようになったのか?確かアップデート中だったよな。終わったのか?」
「はい、昨日の午後11時0分にアップデートが終了しています。」
瑠威は大きくうなずいた。
「おう、なら柳沢にもたまにはこちらからも依頼を持ち込んでみるか。」
と、瑠威はいい自室を出て昔、自分がハッキングした、国家サーバー対策本部の事務所へとむかった。
 本田瑠威は3年生の頃に家族兼用のノートパソコンを父親に買ってもらい、瑠威も触らしてもらった。そのころ瑠威は図書館に毎日のように通っていた。ある日、いつものようにぶらぶらと図書館の中を歩いているとたまたま、児童書のコーナーから外れてしまった。瑠威があっ、と思って戻ろうとしたときカラフルな活字が目に入り、そこには、
“プログラミング入門1”
と書かれていて全部で10巻まであった。瑠威は一冊取り出して中をみて見るとどんどん興味がわいて来たため、早速10巻とも借りてしまった。家に帰り実際にノートパソコンで試してみると、驚いたことに親の力を借りなくても簡単にプログラミングができてしまった。1、2ヶ月続けるうちにどんどんプログラミング能力を高めていった。瑠威の誕生日に父親がロボットのキットをプレゼントした。もちろんプログラミングして動かすやつだが。早速瑠威はその日にロボット製作を始めたのだが、まったくロボットを作ることができなかった。父親にサポートしてもらったが、瑠威はほとんど何もできず、父親が全部キットを作ってしまった。しかもプログラミングも全くだめだった。動かす手順を打ち込んで作成するだけだがぜんぜんできなかった。そう瑠威はアプリケーションを作成するプログラミングは大の得意だったのだが、ロボットや機械のことになるとどんなことでもできなかった。瑠威は悔しさのあまり、学校を休んでもプログラミングを学んでいった。学習していた項目の中にはハッキングも入っていた。
そして4月に四年生になった瑠威は自分でハッキング用のアプリを組み立て、日本国民の国家機密情報の1つをハッキングしてしまった。もちろんすぐに日本政府に見つかってしまった。が、日本政府も発見当時驚愕にみまわれた。なぜなら小学四年生が、よほどのハッカーでさえもハッキングすることができず、いままで国民には存在すら知られてないデータをハッキングしたからだ。そのデータの題はこうかかれていた。
“レベル4AI計画”
レベル4AIとはディープラーニングなどによって特徴量自体も自ら見つけ出すことができるAIのことをいう。そのようなAIを作り出していく、というのがこの計画のおおまかな内容だった。
もちろんハッキングした瑠威もこの計画文書に目を通した。そして、瑠威はハッキングに使った家族兼用のノートパソコンを押収しに瑠威の家に行った当時のサイバー対策本部副部長だった柳沢卓也にこう言った。
「僕はアメリカのワトソンや日本の京よりも賢い汎用型AI作成したアプリを保存して置くことができなくなっていたため、三年生の時の誕生日プレゼントにデスクトップ型をこの前作ったけど・・・」
実は瑠威はこの頃にはもノートパソコンにはパソコンを買い与えた。瑠威はそのパソコンでいろいろな事を学ぶことができ、その中に人工知能の事も入っていた。
「なっなんだと?汎用型・・・どこにあるんだ?」
そうあわてていった柳沢に瑠威は澄ました顔で自分の机の鍵がかかっている引き出しを開けてUSBを取り出した。
「この中には汎用型人工知能が入っています。言っておきますが、レベル4の領域を軽く超えており、僕は今はレベル5であると勝手に判断しています。」
「・・・レベル5?」
「はい、このAI・・・アドミニストレーターはレベル4の枠を超えています。」
デスクトップ型パソコンを起動させながら瑠威は言った。するとそこへ、レベル4計画の長である、緒方諒がやって来て瑠威に聞いた。
「具体的にはどれくらい超えているのかな?」
「レベル4AIは主にディープラーニングができるAIのことをいいますが、このAIは人間のような気持ちを持っています。」
瑠威は言い終わるのと同時にパソコンに10TB テラバイトの大きいUSBを差し込んだ。その行動を見て緒方がボソッと言った。
「高度なAIを10TBに圧縮するだけでも大変なのに・・・レベル5だなんて・・・」
その緒方の声が聞こえたのかもしれないが、瑠威が、
「このAIは圧縮なんてしてませんよ。このAI、5TBですから。」
と、自慢げに言ってきた。
「さてとあと少しで起動しますよ。」
緒方と柳沢がパソコン画面をじっと見ていると、突然画面が真っ白になり、一人の天使のような人が見えてきた。
「こんにちは、柳沢卓也様、緒方諒様。」
「「こっこんにちは」」
「わたしは超高度AIのアドミニストレーターです。」
「「なっ・・・」」
緒方達が驚いたのはこのAIである、アドミニストレータの話し方がなめらかだったからである。
「私は本田様の個人情報及びパソコンへのウイルス、パソコン内のデータの管理をしています。」
「管理か・・・まさにアドミニストレーター管理者だな。」
瑠威は大きくうなずき、
「ええ、この子の名前はそこから取りました。」
緒方は少しだけ黙り、
「なっ成程・・・ならばこのAIを我が国家機密計画である、“レベル4AI計画”に使用させてくれるならば、君の罪はなかったことにして上げよう。」
と、とんでもないことを言い出した。
「えーと・・・この子をあなた達に差し上げる、と言うことではありませんよね。」
「あぁ、あくまでも使用するということだ。貰ったりはしない。」
「わかりました、あくまでもその計画にだけしようすると言う事なら、そちらのパソコンのほうにこの子がいどうするためのゲートをあとでお渡しいたしますので。」
そうして、瑠威は国のAI事情へと入り込んでいった。
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