詩集「支離滅裂」

相良武有

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第一章 二十歳の詩集

⑰男の思い

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 冷たい三日月が細く鋭く尖って

 男の心を抉る夜

 千切れた男の愛の疼きを

 穢された男の純情の怒りを

 一人ぶっつけて

 金属音の靴音が

 暗い夜更けの街路に

 建ち並ぶ高層ビルの谷間に

 響いて跳ね返る

 畜生!泣くんじゃねえ!泣くんじゃねえ!

 たかが一人の女だ!みんな終わりだ!


 肩先で扉を押して入った

 仄暗い酒場

 傷つけられた男の溢れる思いの痛みを

 踏み躙られた男の誠の憤りを

 一人赤い酒に沈めて

 無言でシェーカーを振るバーテンが

 無言で勧めるグラスを干す

 男の

 苦い思いと堅く握られた拳

 畜生!泣くんじゃねえ!泣くんじゃねえ!
 
 涙は、なまじ涙は生命取りだ!


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