詩集「支離滅裂」

相良武有

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第三章 二十二歳の詩集

53 青年の自意識

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 青年は出来ることなら

 猫の存在になりたいと願う

 頭の中の

 白豚の親のように不様な脳と

 苦しいまでに強烈な自意識から

 解放されたいと切望して


 青年が自己を意識する瞬間

 世界中の

 意地悪な

 じろじろ見詰める

 他人の眼を感じ

 青年の躰は

 動きがぎこちなくなり

 あらゆる部分が蜂起して

 勝手なことをやり始める

 青年は恥ずかしくて死にたくなる

 青年の肉体と精神が

 この世に在ると言うだけで

 恥ずかしくて死にたくなる

 青年は

 発狂したクロマニヨン人のように

 洞窟で唯一人

 穴居生活を送りたいと望む

 他人の眼を消すか

 自分を消してしまいたいと思って


 猫は

 自分を意識しはしない

 自分の躰を

 汚い毛皮と

 肉と骨と糞としか感じない

 他人の眼に見詰められて

 おどおど赤面することも無い


 青年は猫の存在を

 猫の大きく頑丈な頭の中の

 ほんの小さな脳を

 物凄く羨望する

 

 

 
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