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第五話 恋未練
③京都をガイド(時代祭~嵐山もみじ祭り~クリスマス・イブ)
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二人は「純」にやって来る度に、最近行って来た処や見て来たものに就いて愉し気に屈託なく語らい合った。滋賀県草津市の出身で京都を良く知らない亜紀に対して、慎一が彼女を案内してガイド役を務めているようだった。
「あの時代祭りは圧巻の絵巻だったわねぇ。二キロにも及ぶ大行列で、先頭から最後尾が通過するのに二時間くらいかかったものね」
「一目で京都の歴史と文化が理解出来るし、他の都市には真似の出来ないものだろうね。時代考証もきちんとなされているし、昔の風俗が伺えるね」
「ねえ、ママ。この人が京都御所の中の観覧席を取ってくれたんです、然も前から二列目の処で。もう写真もばっちり撮って来ましたよ、ほれほれ、これ見て下さい、綺麗でしょう」
「御所の観覧席で時代祭を観るなんて最高の贅沢じゃない、高かったんじゃないの?慎っちゃん」
「なあに、一枚二千円だからそれ程でもないよ」
時代祭見物の次は嵐山のもみじ祭りだった。
渡月橋一帯で繰り広げられる舟遊び絵巻が絢爛であった。筝曲小督船、今様歌舞船、能舞台船など多くの船が大堰川に次々と浮かび、河原では数々のイベントが催された。
「島原太夫による道中披露と御点前披露は煌びやかで豪華だったわね」
「うん。それに嵯峨大念仏狂言も面白かったよ」
「そう?私はさっぱり内容も意味も解らなかったけど・・・」
年末から年始にかけても二人は忙しく過ごした。
イブの晩に慎一が亜紀を伴ったのは京都駅ビルのクリスマス・イルミネーションだった。
駅前広場からが既にときめきのイルミネーション・スクエアだった。光と音の演出で広場をクリスマスムードに染めていた。
東広場のカーニバル・ガーデンは樹々に装飾が施されたシンプルでエレガントなイルミネーションだったし、室町小路広場には高さ二十二メートルの巨大なツリーが立っていた。心に響く音楽と演出のスローガンは「感謝」と「未来」を表現したものと言うことだった。
中央コンコースの地上四五メートルに架かっている空中経路には流れ星型のイルミネーションが三十基以上も並んでいて、二人は京都市内北側の街並を一望し乍らスカイウォークを楽しんだ。
「凄いわね、素晴らしい眺めだわ!」
「此処は京都のクリスマス・イルミネーションでランキング一位に選ばれている最高のスポットなんだ」
それから慎一はイブの夜に相応しいディナーに亜紀を誘った。
それは駅ビルホテルの最上階、夜空が煌めく十五階のスタイリッシュなビュー・ダイニングで、豪華食材が特別な表情を見せている京キュイジーヌ・ディナーだった。
クリスマス・リースに見立てたオマール海老の前菜に始まり、濃厚な焼雲丹と一緒に味わう黒鮑や京料理に欠かせない甘鯛が続いた。メインディッシュは、パイ生地の中に黒毛和牛フィレとフォアグラを閉じ込め、トリュフが香るソースをあしらったシェフ渾身の一皿だった。雪化粧したもみの木をモチーフにしたデセールまで、聖夜に相応しい至福の時間を二人は存分に楽しんだ。
その間、ディナーが後半にさしかかった辺りからライブ演奏がスタートし、珠玉のクリスマスソングが二人の気分をロマンチックに盛り上げた。今夜の出演は、西日本を中心に活動する実力派アカペラグループの「ビー・イン・ヴォイセス」だった。その高い音楽性と洗練されたハーモニーに亜紀は温かみと親しみを感じた。
慎一が演出したクリスマス・イブの最後の締め括りは、大人の為の隠れ家風カクテルバーだった。都会の喧騒を忘れ、バーテンダー熟練の技によって生み出されたカクテルが二人を至福の時へと誘った。慎一は柿のミモザを、亜紀は苺のシャンパンカクテルをそれぞれ注文し、フードはビーフジャーキーとミックスナッツを分け合って摘まんだ。
これまでに無いイブの夜を心行くまで十分に満喫した二人は、タクシーに同乗して京都駅ビルを後にした。
「あの時代祭りは圧巻の絵巻だったわねぇ。二キロにも及ぶ大行列で、先頭から最後尾が通過するのに二時間くらいかかったものね」
「一目で京都の歴史と文化が理解出来るし、他の都市には真似の出来ないものだろうね。時代考証もきちんとなされているし、昔の風俗が伺えるね」
「ねえ、ママ。この人が京都御所の中の観覧席を取ってくれたんです、然も前から二列目の処で。もう写真もばっちり撮って来ましたよ、ほれほれ、これ見て下さい、綺麗でしょう」
「御所の観覧席で時代祭を観るなんて最高の贅沢じゃない、高かったんじゃないの?慎っちゃん」
「なあに、一枚二千円だからそれ程でもないよ」
時代祭見物の次は嵐山のもみじ祭りだった。
渡月橋一帯で繰り広げられる舟遊び絵巻が絢爛であった。筝曲小督船、今様歌舞船、能舞台船など多くの船が大堰川に次々と浮かび、河原では数々のイベントが催された。
「島原太夫による道中披露と御点前披露は煌びやかで豪華だったわね」
「うん。それに嵯峨大念仏狂言も面白かったよ」
「そう?私はさっぱり内容も意味も解らなかったけど・・・」
年末から年始にかけても二人は忙しく過ごした。
イブの晩に慎一が亜紀を伴ったのは京都駅ビルのクリスマス・イルミネーションだった。
駅前広場からが既にときめきのイルミネーション・スクエアだった。光と音の演出で広場をクリスマスムードに染めていた。
東広場のカーニバル・ガーデンは樹々に装飾が施されたシンプルでエレガントなイルミネーションだったし、室町小路広場には高さ二十二メートルの巨大なツリーが立っていた。心に響く音楽と演出のスローガンは「感謝」と「未来」を表現したものと言うことだった。
中央コンコースの地上四五メートルに架かっている空中経路には流れ星型のイルミネーションが三十基以上も並んでいて、二人は京都市内北側の街並を一望し乍らスカイウォークを楽しんだ。
「凄いわね、素晴らしい眺めだわ!」
「此処は京都のクリスマス・イルミネーションでランキング一位に選ばれている最高のスポットなんだ」
それから慎一はイブの夜に相応しいディナーに亜紀を誘った。
それは駅ビルホテルの最上階、夜空が煌めく十五階のスタイリッシュなビュー・ダイニングで、豪華食材が特別な表情を見せている京キュイジーヌ・ディナーだった。
クリスマス・リースに見立てたオマール海老の前菜に始まり、濃厚な焼雲丹と一緒に味わう黒鮑や京料理に欠かせない甘鯛が続いた。メインディッシュは、パイ生地の中に黒毛和牛フィレとフォアグラを閉じ込め、トリュフが香るソースをあしらったシェフ渾身の一皿だった。雪化粧したもみの木をモチーフにしたデセールまで、聖夜に相応しい至福の時間を二人は存分に楽しんだ。
その間、ディナーが後半にさしかかった辺りからライブ演奏がスタートし、珠玉のクリスマスソングが二人の気分をロマンチックに盛り上げた。今夜の出演は、西日本を中心に活動する実力派アカペラグループの「ビー・イン・ヴォイセス」だった。その高い音楽性と洗練されたハーモニーに亜紀は温かみと親しみを感じた。
慎一が演出したクリスマス・イブの最後の締め括りは、大人の為の隠れ家風カクテルバーだった。都会の喧騒を忘れ、バーテンダー熟練の技によって生み出されたカクテルが二人を至福の時へと誘った。慎一は柿のミモザを、亜紀は苺のシャンパンカクテルをそれぞれ注文し、フードはビーフジャーキーとミックスナッツを分け合って摘まんだ。
これまでに無いイブの夜を心行くまで十分に満喫した二人は、タクシーに同乗して京都駅ビルを後にした。
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