11 / 64
君だけの秘密
しおりを挟む
「何の冗談言い出すんだよ?」
あきれ顔でそう応えられていれば、全く問題はなかったのだ。
おそらく友人の及川護から同じ話しをされたなら間違いなくそう応えて笑い飛ばすことができたに違いない。
俺と檸檬のたったあれだけのやり取りを見て”弟の俺が姉の檸檬のことを女性として好きだ”なんて突飛な結論に到達できるなんて普通は思いもしない。
だから焦る必要なんて決してないはずだった。
だが、これを指摘したのがあの対戦を一瞬で分析してのけた未惟奈ならどうだ?
彼女のあの分析力は僅かな俺と檸檬のやり取りで何かを感じ取ってしまったのではないかと想像するに足る能力であった。
だからこそ俺は不覚にも動揺し、言葉を失ってしまった。
「ど、どうしたのよその顔?また逆ギレ?ホント翔は怒りっぽくて困るよ」
なんと俺が誤魔化すより先に未惟奈が先に、冗談混じりの口調で話を茶化した。
未惟奈のことだ。
きっと自分で踏んではいけない地雷を踏んでしまったことに即座に気付いたのだろう。
「な、なに意味不明なこといってんだよ?」
俺は未惟奈が茶化してくれたことで、強引な作り笑顔でなんとかそこまでの”誤魔化しのセリフ”を吐くことができた。
あれ程までに自分のペースでズケズケとモノを言う未惟奈が、急にオロオロとする姿が少し滑稽に見えた。
まあ、俺もだからといって、そんな慌てた未惟奈を見ても面白おかしく笑える程に余裕はないのだが……
結局、気まずい雰囲気を引きずったまま、未惟奈が最初から”アタリ”をつけていた『市民体育館』のレクレーションルームを借りて”俺が空手の指導をする”という当初の目的は遂行することになった。
この体育館は立地的にも、俺たちが通う北辰高校に隣接していて、なによりも利用料が一人時間100円というのがなんともリーズナブルで高校生には都合がいい。
もちろん未惟奈のようなセレブリティーにそんなことは全く関係ないのかもしれないが。
未惟奈は、体育館に入るや更衣室に直行し、予め準備していたであろうウェアーに手早く着替えてレクリエーションルームに入ってきた。
未惟奈は空手練習生がよくするように下半身には空手着を纏い、上半身は有名ブランドのロゴが入ったトレーニングウェアを着ていた。
身体にフィットしたコンプレッション気味のそのウェアは未惟奈の体形を否応なしに浮き彫りにさせていた。
そしてその姿は鳥肌が立つほどに美しいものだった。
この地球上で”動く”ということに特化して鍛え抜かれたその均整のとれた肉体の美しさは、例えばモデル等のスタイルの良さとは全く異質な”美”というものを感じさせた。
俺はと言えば、もちろん何の準備をしてはいないので、ジャケットと靴下を脱いだだけという中途半端な”いでたち”でかなり残念な感じになってしまっている。
とても空手を指導する側に見えないのがなんとも情けなかった。
「翔?イヤラシイ目で見ないでくれる?」
未惟奈がそんな軽口をたたいて来た。
気まずい雰囲気をなんとか解消したいとの未惟奈の配慮なのだろう。
俺は少し悩んだが、さっきの動揺も収まりつつあったので”わだかまり”は先に解消しておくという選択をすることにした。
「別に未惟奈の身体にそんな興味はないって」
「あら?それ酷くない?」
「バカ、そこは”翔は檸檬さんしか興味ないものね?”と返すべきだろう?」
俺は精いっぱいのやせ我慢でそう応えた。
するとさすがに未惟奈は固まってしまった。
「そ、それ言っていいの?」
「良いも悪いも、さっき自分で言いだしたことだろ?」
さすがに未惟奈は”バツが悪そうな顔”になった。
「だ、だって私は単に翔がシスコンの気がありそうだから、少しからかってやろうと冗談で言ったのに、あんな顔するから……」
「そうか、やっぱりあそこで俺が適当に誤魔化しておけばよかったんだな」
「ご、誤魔化しておけばってことは……その」
「ああ、さすがに未惟奈の直感力にはビビらされたよ。正直、さっきの対戦の分析以上に驚いたわ」
「あの……」
未惟奈の顔が、どうしていいから分らないという感じで目が泳ぎまくっているのがなんとも面白かった。
「なんだよ?言いたいことがあるなら言えば?」
「そ、そんないきなりぶっちゃけないでよ?私がどう応えていいか困るでしょ?」
「まあそうだよな」
なんか不思議と未惟奈の焦りの表情を見ていたら、俺の”焦り”はどこかへ吹き飛んでしまい自分でもビックリするほどに開き直ってしまった。
「だったらもう一度聞くけど、翔は檸檬さんのこと好きなの?」
「ああ、そうだね」
俺は自分に言い澱む暇を与えないよう即答した。
「それって、もしかして血の繋がりがない義姉弟だったりするの?」
「ああ、よくマンガでありがちなテンプレなパターンな。でも、残念ながら俺と檸檬は正真正銘の同じ両親の子供だ」
俺がそう言うと未惟奈は目を見開いてさすがに絶句してしまった。
自分でもいままでひた隠して来たし、もっと言えば自分自身ですら否定しようとしていたこの気持ちをついこの間会ったばかりの未惟奈になぜ話してしまったのか?この時は、こんな自分の感情すら全く理解できなかった。
ただ俺は全てをカミングアウトしてしまったことで気持ちが軽くなってしまった。
「まあ、一応そう言うことだから檸檬にはもちろんのこと、このことは未惟奈だけの秘密ってことで頼むわ」
「ちょっと待ってよ?私だけなの?知ってるのは?」
「そうだよ?こんなこと人にペラペラと話はしないだろ?それに他のヤツは普通気付かないからな」
未惟奈は心底、困り果てた様子で口を噤んでしまった。
考えてみれば、馴れ馴れしすぎるくらいな会話をいているとはいえ、俺は未惟奈からすれば会ったばかりの普通の男子高校生だ。
そんな俺の秘密を知ったところで、他人事と割り切って別段気にする必要も、動揺する必要もないだろうに。
一見、自分のことばかり考えているワガママ娘だと思っていたが、案外、根は真面目な女性なのかもしれない。
あぁ……それにしても参ったな。
全くの想定外のことが起きてしまった。
でも自分でもなんだか少し肩の荷が下りたようで気分はそんなに悪くないのが不思議だった。
あきれ顔でそう応えられていれば、全く問題はなかったのだ。
おそらく友人の及川護から同じ話しをされたなら間違いなくそう応えて笑い飛ばすことができたに違いない。
俺と檸檬のたったあれだけのやり取りを見て”弟の俺が姉の檸檬のことを女性として好きだ”なんて突飛な結論に到達できるなんて普通は思いもしない。
だから焦る必要なんて決してないはずだった。
だが、これを指摘したのがあの対戦を一瞬で分析してのけた未惟奈ならどうだ?
彼女のあの分析力は僅かな俺と檸檬のやり取りで何かを感じ取ってしまったのではないかと想像するに足る能力であった。
だからこそ俺は不覚にも動揺し、言葉を失ってしまった。
「ど、どうしたのよその顔?また逆ギレ?ホント翔は怒りっぽくて困るよ」
なんと俺が誤魔化すより先に未惟奈が先に、冗談混じりの口調で話を茶化した。
未惟奈のことだ。
きっと自分で踏んではいけない地雷を踏んでしまったことに即座に気付いたのだろう。
「な、なに意味不明なこといってんだよ?」
俺は未惟奈が茶化してくれたことで、強引な作り笑顔でなんとかそこまでの”誤魔化しのセリフ”を吐くことができた。
あれ程までに自分のペースでズケズケとモノを言う未惟奈が、急にオロオロとする姿が少し滑稽に見えた。
まあ、俺もだからといって、そんな慌てた未惟奈を見ても面白おかしく笑える程に余裕はないのだが……
結局、気まずい雰囲気を引きずったまま、未惟奈が最初から”アタリ”をつけていた『市民体育館』のレクレーションルームを借りて”俺が空手の指導をする”という当初の目的は遂行することになった。
この体育館は立地的にも、俺たちが通う北辰高校に隣接していて、なによりも利用料が一人時間100円というのがなんともリーズナブルで高校生には都合がいい。
もちろん未惟奈のようなセレブリティーにそんなことは全く関係ないのかもしれないが。
未惟奈は、体育館に入るや更衣室に直行し、予め準備していたであろうウェアーに手早く着替えてレクリエーションルームに入ってきた。
未惟奈は空手練習生がよくするように下半身には空手着を纏い、上半身は有名ブランドのロゴが入ったトレーニングウェアを着ていた。
身体にフィットしたコンプレッション気味のそのウェアは未惟奈の体形を否応なしに浮き彫りにさせていた。
そしてその姿は鳥肌が立つほどに美しいものだった。
この地球上で”動く”ということに特化して鍛え抜かれたその均整のとれた肉体の美しさは、例えばモデル等のスタイルの良さとは全く異質な”美”というものを感じさせた。
俺はと言えば、もちろん何の準備をしてはいないので、ジャケットと靴下を脱いだだけという中途半端な”いでたち”でかなり残念な感じになってしまっている。
とても空手を指導する側に見えないのがなんとも情けなかった。
「翔?イヤラシイ目で見ないでくれる?」
未惟奈がそんな軽口をたたいて来た。
気まずい雰囲気をなんとか解消したいとの未惟奈の配慮なのだろう。
俺は少し悩んだが、さっきの動揺も収まりつつあったので”わだかまり”は先に解消しておくという選択をすることにした。
「別に未惟奈の身体にそんな興味はないって」
「あら?それ酷くない?」
「バカ、そこは”翔は檸檬さんしか興味ないものね?”と返すべきだろう?」
俺は精いっぱいのやせ我慢でそう応えた。
するとさすがに未惟奈は固まってしまった。
「そ、それ言っていいの?」
「良いも悪いも、さっき自分で言いだしたことだろ?」
さすがに未惟奈は”バツが悪そうな顔”になった。
「だ、だって私は単に翔がシスコンの気がありそうだから、少しからかってやろうと冗談で言ったのに、あんな顔するから……」
「そうか、やっぱりあそこで俺が適当に誤魔化しておけばよかったんだな」
「ご、誤魔化しておけばってことは……その」
「ああ、さすがに未惟奈の直感力にはビビらされたよ。正直、さっきの対戦の分析以上に驚いたわ」
「あの……」
未惟奈の顔が、どうしていいから分らないという感じで目が泳ぎまくっているのがなんとも面白かった。
「なんだよ?言いたいことがあるなら言えば?」
「そ、そんないきなりぶっちゃけないでよ?私がどう応えていいか困るでしょ?」
「まあそうだよな」
なんか不思議と未惟奈の焦りの表情を見ていたら、俺の”焦り”はどこかへ吹き飛んでしまい自分でもビックリするほどに開き直ってしまった。
「だったらもう一度聞くけど、翔は檸檬さんのこと好きなの?」
「ああ、そうだね」
俺は自分に言い澱む暇を与えないよう即答した。
「それって、もしかして血の繋がりがない義姉弟だったりするの?」
「ああ、よくマンガでありがちなテンプレなパターンな。でも、残念ながら俺と檸檬は正真正銘の同じ両親の子供だ」
俺がそう言うと未惟奈は目を見開いてさすがに絶句してしまった。
自分でもいままでひた隠して来たし、もっと言えば自分自身ですら否定しようとしていたこの気持ちをついこの間会ったばかりの未惟奈になぜ話してしまったのか?この時は、こんな自分の感情すら全く理解できなかった。
ただ俺は全てをカミングアウトしてしまったことで気持ちが軽くなってしまった。
「まあ、一応そう言うことだから檸檬にはもちろんのこと、このことは未惟奈だけの秘密ってことで頼むわ」
「ちょっと待ってよ?私だけなの?知ってるのは?」
「そうだよ?こんなこと人にペラペラと話はしないだろ?それに他のヤツは普通気付かないからな」
未惟奈は心底、困り果てた様子で口を噤んでしまった。
考えてみれば、馴れ馴れしすぎるくらいな会話をいているとはいえ、俺は未惟奈からすれば会ったばかりの普通の男子高校生だ。
そんな俺の秘密を知ったところで、他人事と割り切って別段気にする必要も、動揺する必要もないだろうに。
一見、自分のことばかり考えているワガママ娘だと思っていたが、案外、根は真面目な女性なのかもしれない。
あぁ……それにしても参ったな。
全くの想定外のことが起きてしまった。
でも自分でもなんだか少し肩の荷が下りたようで気分はそんなに悪くないのが不思議だった。
1
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました
ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。
意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。
しかし返ってきたのは――
「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。
完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。
その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる