オレが推しを抱くなんて! かませ犬転生元社畜×闇深最強ラスボス 

毒島醜女

文字の大きさ
45 / 49
灰夜編

四十三章 

この場に相応しくない、甘く、それでいてどこか毒気のある声だった。
声のした方を振り返る。

小柄な背丈の少年がこちらに歩いてきた。
癖のある金髪で、丸い童顔をしていた。
その耳には砂城兄弟のものと同じピアスがつけてあった。

一件オレたちのいる世界とは無縁な、人畜無害な印象があった。
だがその笑顔を見ていると底知れないものを感じてきた。

彼の姿を見ると、龍也が少年に声を掛ける。

「ユウ……ごめんな」
「いいよ。リュウもコタも悪くない」

ユウと呼ばれた少年は『クライシス』の、玄二の前で止まる。
そして身を屈め、玄二の顔を覗く。

「この子が幼馴染だから、味方になってくれると思ったんだよね?」

ユウの言葉に二人は返さない。
図星なのだろうか。
どことなく、この空気が気になる。
まるで恋人に浮気を誤解されて気まずくなっているみたいだ。

オレがそんな事を思った時だ。

「……ん!」

目の前で起こったことが信じられなかった。

金髪の少年が玄二に、オレの恋人にキスをしていた。
舌をねじ込もうとしていたのだろう。
唇の合間を目指して舌先を潜らせている。

驚きの余り動けなかった玄二を、オレは自分の元に引き寄せた。

「なにしてんだ……テメェ!」

玄二をオレの胸の中で抱きながら、少年を睨む。

交渉が決裂した事への報復だろうか。
だとしてもやり方が陰湿だ。

「残念だったね。もうこの子には、大事な人がいるみたい」

少年はオレたちを横目に手の甲で唇を拭った。
そして何も気にしていないように、口を開いた。

「僕は優人(ゆうと)。『灰夜』の参謀だよ」
「参謀……?」
「二人にね、お金の稼ぎ方を教えてあげたの、僕なんだ」

そう言って彼は兄弟を見る。
兄弟は優人を咎めることもせず、ただソファーで静観していた。

稼ぎ方を教えた、という事はつまり、今の『灰夜』のような金を重視したやり方に方向転換するように指示したという事か。
唾を吐き、唇を指で拭きながら、玄二が優人を睨む。

「お前……なんのつもりだ」
「ちょっとした意地悪だよ。後は」

そうして優人は兄弟の間に座る。
二人は当たり前のように隙間を開け、優人の為の場所を作った。
そして優人の手はそれぞれの身体に伸び、龍也も虎太郎も彼の肩や腰に触れていた。

「もう二人は僕のものだって教えてあげたくて」

その光景を見て納得がいく。
三人に漂う粘着質で重苦しい空気。
これは三人がそういう仲だと証明するものだったのだ。

「嫌ならさ、自分の恋人に清めてもらいなよ。君らもそういう関係なんでしょ?」
「ふざけんな……誰がテメェらの見世物になるんだよ……!」

玄二は眉間に皺を寄せ、視線で射殺すかのように優人を睨む。

それは自分の唇を恋人であるオレの前で奪われたことだけじゃない。
幼馴染である二人を変えられてしまった事への怒りもあっただろう。

しかし優人はただ優雅に笑うだけで何もしない。

「もう話し合いは終わったってことでいいよね? じゃあ、もう今日は帰ってくれない」

そこで一言申したのは、ミキだった。

「そっちが招いたのに随分な言い方だな?」
「望むものは何でも出すよ。料理でも、酒でも、人間でもね。一応、お客さんだし。でも僕らと組まないなら、君たちとの関係は今夜だけ」

そういうと優人は更に二人に身を預ける。
腕がそれぞれ龍也の胸と虎太郎の股間に触れている。

「僕らはもう二度と叢雨市に現れない。君たちの関係者の前にもね……だから君たちも僕らに関わらないで。いいね?」

優人の口元には相変わらず笑みが浮かんでいる。
だがその中にはどす黒い感情を感じた。
しばしの沈黙の後で、ミキが立ち上がる。

「いくぞ、皆」
「ミキ……」
「だが、一言言っておく。お前らが変わるんなら、いつでも仲間として迎えてやるからな」

ミキは三人に向かってそういう。
一瞬、優人の笑みが歪んだように見えた。
オレは青い顔の玄二を支えながら、ミキとルイの背後を負った。

途中、一度だけ玄二は後ろを振り返ろうとした。
その手をオレは引いて、耳元で告げた。

「お前には、オレがいる。だから大丈夫だ、玄二」

浅ましい嫉妬だってわかっている。
でも、もうこれ以上玄二の心が他に向くのは許せなかった。

オレの言葉を聞いた玄二はハっと我に返り、オレと歩幅を合わせて廊下を進んでいく。
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です! 表紙は、Pexelsさまより、Abdalrahman Zenoさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます! 文章にはAIを使用しておりません。校正も自力です!(笑)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! 表紙は、自作です(笑)

【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。 種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。 表紙は、Pexelsさまより、MAG Photographyさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます! 文章にはAIを使用しておりません。校正も自力です!(笑)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!