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二話 さあ、頑張るぞ
葬儀を終えてから、僕はすぐに命じた。
姑顔こと女中頭の津根子はやけにやる気だった。
「今日からここで暮らして下さいね。仕事がある時は呼びますから」
「う……はい」
私物も一緒に、原作通り紅葉を座敷牢に押し込む。
あるのは簡素な机と布団だけだ。
心苦しいけど、僕は津根子を連れて去っていく。
原作では私物は皆燃やしたっけ。
両親からの形見はみんな麗霞が奪って、猿みたいな顔芸して悲しむ紅葉を嗤ってたもんな。
「……よいのですか、麗霞様。アレの私物など、捨て置けばよかったものを」
そう、憎々し気に津根子は言う。
津根子が紅葉を恨んでいるのは、彼が無能なだけではない。
津根子には溺愛する息子がおり、勤め先の無かった彼は以前、狐宮家で下男として働いていた。
彼女の息子と変態であり、幼い紅葉にいやらしい事をしようとしていた。
すんでのところで両親に見つかり、津根子の息子は警察に突き出され、遠方に追い出された。
以来、津根子は紅葉に対して逆恨みを抱いており、僕の代になって思う存分彼を虐げられると息巻いていたのだ。
(紅葉に何するかわからない彼女を側に置けない。でも適度にガス抜きしないと、何しでかすかわからないし)
「今からでも、外の納屋に放り込むのはいかがです麗霞様?」
「津根子。君の気持ちは痛いほどわかる」
僕は足を止めて、津根子に向き直る。
そして不細工にアヒル口を作り、上目遣いをする。
「でもさぁ、せっかく父上と母上に邪魔されることなく、お兄様を玩具に出来る好機なんだ。適度に希望を持たせた方が、いじめ甲斐があるってもんでしょお?」
「確かに、そうですが……」
(ぐっ。これでもまだ足りないのかよ!)
執念深い津根子に二の句を言わせぬように、腰に手を当て、原作のように鼻の穴を広げて嗤う。
「どうせ弱っちいあの人のことだもん。使用人扱いすればすぐに泣いて『もうやめて』って僕らに縋り付いてくるよぉ」
麗霞らしい憎らしい表情でそういえば、津根子も同じような笑顔を浮かべる。
「そうですわね! さすがは麗霞様!」
(やっと納得してくれた……)
僕はようやく安堵した。
紅葉の仕事場は津根子と彼女の派閥である女中が担当する場所を避けた。
ただそうしていると、津根子が怪しむので、彼女の監視下で紅葉が働く時は僕が出しゃばった。
そこで適当に悪口を言ったり、小突く程度に治めた。
「情けないお姿ですね~、お兄様。こんなのが狐宮家の血を引いているなんて、誰も信じないでしょうねえ」
僕の背後で津根子とそのシンパがクスクスと笑う。
……これでいい。
当主である僕が率先して行うので津根子たちはそれに従うしかなく、僕以上のことは出来ないでいた。
(本当にごめんね紅葉……君のヒーローが、時生が来るまで待っててね)
「……あーあ。お兄様の側にいると湿っぽくて嫌になるなぁ。僕、帰る。津根子、お菓子用意して」
涙を堪えて、あかぎれを抱えながら雑巾がけをする紅葉。
そんな彼に心痛めながら、僕は去っていった。
そして紅葉以外にもやる事は山ほどある。
まずは家の建てなおし。
原作の麗霞は経済面でも無能で、分家に借金をしてどんどん破滅していった。
(分家どもに頼らなくても大丈夫になるように、見直して、改善しないとな……いや、その前にダイエットしなきゃな。相手に対して好印象を持たせるためにも)
そういって、出っ張った頬の肉を摘まむ。
これはかなり頑張らないとな……はあ。
そんな時、「失礼します」と入って襖を開いた女中はぺこりと頭を下げる。
「麗霞様。失礼します」
「ん、なんだい?」
「サロンにお客様がお見えです」
「客……?」
そんな予定あったっけ?
痺れを切らしたように、女中は口を開く。
「麗霞様の婚約者である時生様の兄であらせられる、国時様です」
姑顔こと女中頭の津根子はやけにやる気だった。
「今日からここで暮らして下さいね。仕事がある時は呼びますから」
「う……はい」
私物も一緒に、原作通り紅葉を座敷牢に押し込む。
あるのは簡素な机と布団だけだ。
心苦しいけど、僕は津根子を連れて去っていく。
原作では私物は皆燃やしたっけ。
両親からの形見はみんな麗霞が奪って、猿みたいな顔芸して悲しむ紅葉を嗤ってたもんな。
「……よいのですか、麗霞様。アレの私物など、捨て置けばよかったものを」
そう、憎々し気に津根子は言う。
津根子が紅葉を恨んでいるのは、彼が無能なだけではない。
津根子には溺愛する息子がおり、勤め先の無かった彼は以前、狐宮家で下男として働いていた。
彼女の息子と変態であり、幼い紅葉にいやらしい事をしようとしていた。
すんでのところで両親に見つかり、津根子の息子は警察に突き出され、遠方に追い出された。
以来、津根子は紅葉に対して逆恨みを抱いており、僕の代になって思う存分彼を虐げられると息巻いていたのだ。
(紅葉に何するかわからない彼女を側に置けない。でも適度にガス抜きしないと、何しでかすかわからないし)
「今からでも、外の納屋に放り込むのはいかがです麗霞様?」
「津根子。君の気持ちは痛いほどわかる」
僕は足を止めて、津根子に向き直る。
そして不細工にアヒル口を作り、上目遣いをする。
「でもさぁ、せっかく父上と母上に邪魔されることなく、お兄様を玩具に出来る好機なんだ。適度に希望を持たせた方が、いじめ甲斐があるってもんでしょお?」
「確かに、そうですが……」
(ぐっ。これでもまだ足りないのかよ!)
執念深い津根子に二の句を言わせぬように、腰に手を当て、原作のように鼻の穴を広げて嗤う。
「どうせ弱っちいあの人のことだもん。使用人扱いすればすぐに泣いて『もうやめて』って僕らに縋り付いてくるよぉ」
麗霞らしい憎らしい表情でそういえば、津根子も同じような笑顔を浮かべる。
「そうですわね! さすがは麗霞様!」
(やっと納得してくれた……)
僕はようやく安堵した。
紅葉の仕事場は津根子と彼女の派閥である女中が担当する場所を避けた。
ただそうしていると、津根子が怪しむので、彼女の監視下で紅葉が働く時は僕が出しゃばった。
そこで適当に悪口を言ったり、小突く程度に治めた。
「情けないお姿ですね~、お兄様。こんなのが狐宮家の血を引いているなんて、誰も信じないでしょうねえ」
僕の背後で津根子とそのシンパがクスクスと笑う。
……これでいい。
当主である僕が率先して行うので津根子たちはそれに従うしかなく、僕以上のことは出来ないでいた。
(本当にごめんね紅葉……君のヒーローが、時生が来るまで待っててね)
「……あーあ。お兄様の側にいると湿っぽくて嫌になるなぁ。僕、帰る。津根子、お菓子用意して」
涙を堪えて、あかぎれを抱えながら雑巾がけをする紅葉。
そんな彼に心痛めながら、僕は去っていった。
そして紅葉以外にもやる事は山ほどある。
まずは家の建てなおし。
原作の麗霞は経済面でも無能で、分家に借金をしてどんどん破滅していった。
(分家どもに頼らなくても大丈夫になるように、見直して、改善しないとな……いや、その前にダイエットしなきゃな。相手に対して好印象を持たせるためにも)
そういって、出っ張った頬の肉を摘まむ。
これはかなり頑張らないとな……はあ。
そんな時、「失礼します」と入って襖を開いた女中はぺこりと頭を下げる。
「麗霞様。失礼します」
「ん、なんだい?」
「サロンにお客様がお見えです」
「客……?」
そんな予定あったっけ?
痺れを切らしたように、女中は口を開く。
「麗霞様の婚約者である時生様の兄であらせられる、国時様です」
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