捨てられ予定の豚猿令息、婚約者の兄から求愛されてます

毒島醜女

文字の大きさ
4 / 17

三話 お義兄様登場

黒峰国時くろみね くにとき
その名で僕は思い出す。
僕の婚約者であり、紅葉の運命の人である最強の剣士、黒峰時生の兄である。
黒峰家は代々武家の一家であり、長男である国時よりも遥かに優れた天賦の才を持った時生が持て囃された。
気を悪くした国時は剣の道を辞めて当主の座を弟に譲り、自分は色街で遊び惚けるようになった。
原作では所謂プレイボーイの当て馬であり、弟への劣等感からその婚約者の麗霞と関係を持ち、紅葉にもちょっかいをかけて、挙句惨めに破滅した。

(悲しき悪役ってのもあるし、顔がいいからか麗霞ほどは嫌われてなかったんだよなぁ)
「……わかった。今行くよ。お茶用意して」

そう言って僕は自室を立ち上がり、サロンに向かった。
和風な趣がある狐宮家の邸宅とは異なり、離れにあるサロンは西洋風だ。
まるでヨーロッパのご令嬢のお部屋みたいで、結構好きだ。

「お待たせしてすいません、国時さま」

そう言ってドアを開けた。
チョコレート色の革張りのソファに、黒いスーツを着た男が座っていた。
足を組んで背凭れに体を委ね、煙草を吸う。
整髪剤で整えられた艶やかな黒髪に、凛とした眼差し。同性から見ても色っぽく感じるその姿はまさに映画俳優のような迫力があった。
彼はすくっと立ち上がり、キャラメルのように甘い笑顔を僕に向けた。

「こんにちは、麗霞くん。相変わらず砂糖菓子のように愛らしいね」

その言葉に、僕は固まりそうになる。

(砂糖菓子って! 少女漫画でもいわねえっての! 確かにマシュマロみたいだけどね! はは!)

苦笑しながらも、僕は彼の向かいに座った。
そもそも、弟の婚約者に言うセリフじゃないだろう。
まあ、国時は弟への逆恨みで彼の婚約者に手を出して寝取ろうとしてたんだけどね。
そうじゃなきゃこんなデブの性悪に手出さないもんな。
……まあ親が決めた婚約だからって何が何でも一度も会いに来なかった時生も性格が悪いけどな。紅葉にだけ優しいからって、限度があるでしょ。生きてくうえではさあ。
国時は髪を揺らして首を傾げた。

「あれ? 今日は隣に座らないんだね」
「あー、あはは。まあ、はい」

まあ不安はあるけど、適度な距離感を保たないとな。
分別を付けないといけない。
僕の為にも、国時の為にも。

「それにしても、ご両親のご冥福をお祈りするよ。本当にごめんね、葬式に出れなくて」
「いいえ。国時様も、時生様も用があったでしょうし」
「あいつにも行くように言ったんだが、まあ、いつも通りで」

そうだよな。
持ち上げられすぎて、自分以外信じてない冷たい男だもんな。時生は。
ほんと紅葉以外には絶対零度だもん。

「全くひどい奴だよ。麗霞くんもあの愚弟のせいで苦労してるだろう?」

そう言って、僕の膝の上に向けて国時の手が伸びる。
僕はさっと手を引いて、カップを掴む。
国時は僕の顔を見つめてじっと固まっていた。

「平気ですよ、国時様。時生様のお心もお察ししています。親に決められただけの、なんの関りもない妖の子など、赤の他人も同じでしょう。いずれあの人に好いた人が現れたとしても、僕は気にしませんよ」
「君は……それでいいのか?」
「ええ。僕も、好きにさせていただきますから。あの人の事は噂でしか知りませんが、随分お堅いようで……ああいう人苦手なんですよねえ」

そう言って僕はカップを置く。
そして別れの意を込めて、僕は国時に微笑んだ。

「だから国時様も安心して下さいませ。僕は僕で頑張りますから」

それからしばらく沈黙が流れた。
僕は無言のまま帰っていく彼を見送り、ただ、これからは彼が楽に生きられるよう願った。

感想 0

あなたにおすすめの小説

おしまいのそのあとは

makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

愛され方を教えて

あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。 次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。 そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

王太子殿下は悪役令息のいいなり

一寸光陰
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」 そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。 しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!? スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。 ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。 書き終わっているので完結保証です。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

推しのために自分磨きしていたら、いつの間にか婚約者!

木月月
BL
異世界転生したモブが、前世の推し(アプリゲームの攻略対象者)の幼馴染な側近候補に同担拒否されたので、ファンとして自分磨きしたら推しの婚約者にされる話。 この話は小説家になろうにも投稿しています。