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【平和な世界】
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俺の人生は、俺だけの物語では無かった。
俺は、俺の人生でさえも主人公ではなかった。
俺の人生は、まさにRPGに出てくるモブそのものと言えた。
何も成し得なかった。何かに立ち向かったり、仲間たちの喜びを分かち合ったり、歓声を浴びたり、そんなイベントは何一つ無かった。
そんな人生でも等しく終わりは訪れる。それも予期せぬ時に唐突に。
敢えて死因は言うまいが、俺の生涯はつい先程、それはもうあっけなく幕を閉じた。そして今、俺の意識は消えることなくぼんやりとした光の中をフワフワと漂っている。身体はなく、意識だけが淡い輪郭を帯びて丸い玉のような形を成しているイメージで。
そして行き着いた先には女神が立っていた。いやホントに、女神ですとしか言いようがない感じの女性が、俺の魂を迎え入れるように両手を広げて待っている。そして彼女はゆっくりと口を開いた。
「貴方は後悔の中で命を落としましたね」
「いや、別に後悔とかはないけど」
率直に思ったことを答えただけなのに、どうして急に黙るんだこの女神は。
「貴方は前の人生で、何かを成し遂げたかったのではありませんか?」
「………いやー、特には………」
「貴方は、強敵への挑戦や仲間との冒険を望んでいたではありませんか」
「望んでないけど」
「冒頭で確かにそう言っていたではありませんか………」
「冒頭ってなんだよ」
女神は再び黙りこくった。何故か圧を感じる。
「貴方にもう一度、生を与えましょう。今度は悔いなきように………」
「ちょ、なに勝手に転生させようとしてんだよ。ヤダよ。モンスターとか魔王とかがいるようなファンタジー世界とか。転生させてくれるんなら現実世界にしてくれ」
「我々にとっては、あの世界こそが現実世界であって………」
「あー、そういう問答は面倒くさいからパス。分かったよ、異世界で良いから、平和な世界で頼むわ」
女神は一度目を閉じて深く息を吐いてから、再び目を開いた。
「では貴方を、争いなき平和な世界に転生させてあげましょう………本当に良いのですね?」
「良いよ、本当に」
「………剣や魔法、勇者の末裔、魔王討伐………そう言った………」
「だから良いって、マジで、そういうの、本当に」
「………では、目を閉じなさい」
そう言われて、もう無いはずの瞼を閉じた。まばゆい光が一転、暗闇に染まり、そしてーーー。
異世界に転生してから、はや80年。これまでの人生の中で本当に、戦いやモンスターや魔法といったものとの出会いは1度たりともなかった。心通じる仲間もいない。しかしここは確かに異世界。わしが前世で行きていた世界とは違う、ふぁんたじーの世界であることは間違いない。しかし、この世界観に魔法やモンスターがいなければそれは、単に少し昔の現実世界とそう変わりはなかった。不便だがそれなりに幸せで穏やかな世界。悪くは、なかった。
おわり
俺は、俺の人生でさえも主人公ではなかった。
俺の人生は、まさにRPGに出てくるモブそのものと言えた。
何も成し得なかった。何かに立ち向かったり、仲間たちの喜びを分かち合ったり、歓声を浴びたり、そんなイベントは何一つ無かった。
そんな人生でも等しく終わりは訪れる。それも予期せぬ時に唐突に。
敢えて死因は言うまいが、俺の生涯はつい先程、それはもうあっけなく幕を閉じた。そして今、俺の意識は消えることなくぼんやりとした光の中をフワフワと漂っている。身体はなく、意識だけが淡い輪郭を帯びて丸い玉のような形を成しているイメージで。
そして行き着いた先には女神が立っていた。いやホントに、女神ですとしか言いようがない感じの女性が、俺の魂を迎え入れるように両手を広げて待っている。そして彼女はゆっくりと口を開いた。
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「いや、別に後悔とかはないけど」
率直に思ったことを答えただけなのに、どうして急に黙るんだこの女神は。
「貴方は前の人生で、何かを成し遂げたかったのではありませんか?」
「………いやー、特には………」
「貴方は、強敵への挑戦や仲間との冒険を望んでいたではありませんか」
「望んでないけど」
「冒頭で確かにそう言っていたではありませんか………」
「冒頭ってなんだよ」
女神は再び黙りこくった。何故か圧を感じる。
「貴方にもう一度、生を与えましょう。今度は悔いなきように………」
「ちょ、なに勝手に転生させようとしてんだよ。ヤダよ。モンスターとか魔王とかがいるようなファンタジー世界とか。転生させてくれるんなら現実世界にしてくれ」
「我々にとっては、あの世界こそが現実世界であって………」
「あー、そういう問答は面倒くさいからパス。分かったよ、異世界で良いから、平和な世界で頼むわ」
女神は一度目を閉じて深く息を吐いてから、再び目を開いた。
「では貴方を、争いなき平和な世界に転生させてあげましょう………本当に良いのですね?」
「良いよ、本当に」
「………剣や魔法、勇者の末裔、魔王討伐………そう言った………」
「だから良いって、マジで、そういうの、本当に」
「………では、目を閉じなさい」
そう言われて、もう無いはずの瞼を閉じた。まばゆい光が一転、暗闇に染まり、そしてーーー。
異世界に転生してから、はや80年。これまでの人生の中で本当に、戦いやモンスターや魔法といったものとの出会いは1度たりともなかった。心通じる仲間もいない。しかしここは確かに異世界。わしが前世で行きていた世界とは違う、ふぁんたじーの世界であることは間違いない。しかし、この世界観に魔法やモンスターがいなければそれは、単に少し昔の現実世界とそう変わりはなかった。不便だがそれなりに幸せで穏やかな世界。悪くは、なかった。
おわり
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