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ゲームと熱と大掃除
春休み前の大掃除
「はいそれでは午後の三時間をかけて、学校の大掃除を行います。各クラスの掃除場所の担当が、今の掃除当番と同じ数あるので、掃除のメンバーはいつも通りでやってください。副担の深沢先生は各掃除場所の手伝いをしてくれるので、サボろうとしても、バレますからね~?まぁ、そんな生徒は私のクラスにはいないと、信じてますので、是非私の期待に応え、「真面目に」掃除を行ってください。それでは、清掃開始!」
私達の清掃担当場所は空き教室。空き教室なんて掃除する意味あるのかと疑問ではあるが、やれと言われたらやるだけだ。
「じゃ、行こ。お姉ちゃん」
「うん!」
あの熱以来、学校でも普通にお姉ちゃんと話している。高校ではお姉ちゃんとは赤の他人の振りをする。それによる当初の目標もギリギリ達成してるし、もう学校でお姉ちゃんと話さない理由は無くなった。
「カエデ~空き教室まで手繋いでこうよ!」
「…」
でも、流石にここまでべたべただと困る。
「もっと離れて。」
「え?なんで?」
「なんでも。離れないなら家でその分離れるよ?」
もちろん嘘だ。そんなことしたら私だって辛い。…だけど、この脅しはお姉ちゃんに効果抜群のはずだ。
「…分かった。」
やっぱり、お姉ちゃんにとってこの脅しは何よりも効く。
「その代わり!…後でご褒美、貰うからね?」
「…なんで?普通にダメ。」
「カエデだって家で私から離れてるの、嫌なくせに~」
…バレてた。だからこその交渉、という事か。…これ、脅されてるの私?もしかして。
「…分かった。ご褒美ね?何すればいいの?」
「それはその時になったら言うよ~ん」
「…」
正直、お姉ちゃんに貸しを作っておくのは得策ではない。すぐに屁理屈を言ったり、無茶言って来たり、最終的に私が言うことを聞いてしまう事になる。
「それ嫌なんだけど」
「それって?」
「その時に言うってやつ」
「え~?でも仕方ないじゃん」
「今のうちに決めてよ、ご褒美」
「それは無理~」
「ふふっ」と笑いながら言うお姉ちゃん。…これは絶対何か企んでる。絶対、私が普段しないような事をご褒美でやってもらおうとしている。
「………まぁいいけど。ほら、早く行こ?空き教室」
「うん。」
§
「という事で、空き教室は机と椅子の移動、教室掃除と同じでゴミを集めてゴミ箱に捨てる、窓の掃除、黒板の掃除、ボロボロな机と椅子の交換、等をしてもらいます」
多いのか少ないのか分からない、が、大掃除らしい内容だ。ちょっと興奮してきた
「なんか、ちょっとこういう非日常ってワクワクするよね」
「うん」
やっぱり私とお姉ちゃんは双子だ。分かりやすい所は全然違うけど、こういう細かい所は似てる。
「机と椅子を運ぶ人は結構必要なので…六人、こちらを手伝ってください。」
私達の班は合計八人。うち六人となると、相当の人数を机・椅子運びに割くことになる。
「それじゃあ、人員は適当に決めて構わないので、決まり次第六人は廊下に来てください。」
「…どうする?」
「じゃんけんでいいんじゃない?」
正直、どっちをとっても掃除の大変さは変わらないと思うし、マジでどっちでもいい。
「フウちゃんとカエデさん仲良さそうだし、二人が空き教室掃除で良いんじゃない?もちろん、二人が良ければ、の話だけど。」
そんなの、もちろん即答だ。
「もち」
「もちろんokだよ!!全然大歓迎!」
「…私も、全然OKです。」
私の方が先に言おうとしてたのに、勢いと声量で覆いかぶされた。…まぁ、別に言いたいことは同じだしいいけど。
結局、私達以外の六人が廊下に出て、私たちだけが教室に残った。
「…なんか、二人で掃除することになったね。」
「ラッキーだね」
空き教室とはいえ教室掃除とそう変わらない。机は無いし、ただただ綺麗にするだけだし、教室掃除より楽かもしれない。
ただ、その代わりものすごく埃が多い。
「埃まみれだねぇ」
「うーん」
机の上にも埃があるし、この埃を掃除するのは大変そうだ。二人だと時間がかかりすぎる。
「うん。無理!」
「いや、諦めないで?」
「大まかな掃除は出来たし、ちょっと埃が残ってるくらいならいいでしょ。」
「ダメだって」
お姉ちゃんがほうきを地面において、近寄ってくる。
「今暇だし、ご褒美、ちょうだいよ」
「暇じゃないから無理。」
「まぁまぁ、そんなこと言わずにさ」
お姉ちゃんが後ろから抱きついてくる。お姉ちゃんの私よりも大きく育っている胸が、背中に押し付けられる。…もちもちだ。
「……ここ学校だよ?距離近すぎ。」
「でも周りに誰もいないじゃん」
そういう問題では無い。…けどまぁ、確かに、机・椅子運びはそんなに早く終わらないだろうし、今この空き教室に人が来ることは無い。
「…まぁ、すぐにまた掃除に取り掛かるならいいよ。」
「やったー!」
「で、私は何すればいいの?」
「そのまま、動かないで?」
お姉ちゃんが私を抱き締めてる手を外し、私の前に来る。そのまま私の肩に手を置く。
「…何するつもり?」
「分からない?」
…もしかしなくても、お姉ちゃんは今、私にキスをしようとしている。
「学校だよ?」
「そんなの関係ないよ」
肩をつかんだまま、お姉ちゃんが一歩近づく。いつものように顔と顔との距離がゼロになるまで近づき、そのままキスをする。
「…なんか、久しぶりな気がする」
「いや、昨日もしたでしょ。というか、熱治ってからほぼ毎日じゃない?」
「まぁね。」
お姉ちゃんが再度顔を近づけてくる。が、ご褒美はもう終わりだ。ずっとキスしてるという訳にもいかないし。
「もう終わり。」
「えー?一回だけ?少なくない?」
「少なくない。ほら、掃除再開して。」
「えーやだ~掃除したくないー!」
お姉ちゃんが駄々を捏ねながら私の背中に抱き着く。───と、同時に教室の扉が開いた。
「掃除、やってるかー!」
「お手伝いに来ました。」
教室に入ってきたのは梅木さんと優子だ。
「どうさてここに?」
「深澤先生に言われて。…って、フウ、何してるの?」
「ん?…あ~…掃除が嫌で、カエデに抱き着いてた」
「本当にお姉ちゃんなの?フウ」
「まぁ、カエデがお姉ちゃんってのも想像しづらいけどね。」
梅木さんが呆れた顔でお姉ちゃんと話している。このやり取りだけでも分かる通り、やっぱりこの2人は仲が良い。…って、私がお姉ちゃんっぽくないって?…相変わらず優子は時々毒を吐く。
「家では、カエデは真面目キャラ?」
「…優子、「家では」は余計。私はいつでも真面目。」
「カエデ、授業態度良くないじゃん。それに、めんどくさがり屋だし、忘れ物も良くあるし…」
…確かに、学校だと真面目じゃない…かも、しれない。うん。ここは妥協して家では真面目、という事にしよう。
「………まぁ、うん。家では真面目だよ。真面目」
「いや、そうとも限らないよ」
私と優子の会話に、お姉ちゃんが割り込んできた。…いや、私は家では真面目だ。……少なくとも、お姉ちゃんに比べたら。
「時々真面目で時々真面目じゃない。半々だよ」
「やっぱり?そっちの方がカエデっぽいね」
「…少なくともお姉ちゃんよりは真面目だもん」
「時と場合によるでしょ」
…でもまぁ、確かに。でも、だいたいは私の方が真面目だ。
甘えることも私の方が少ないし、キスをせがむ事も私の方が圧倒的に少ない。
「まぁいいや。そんな事より、ほら、掃除しよ。埃多すぎて困ってたんだよ。」
「よし、じゃあ――やるぞー!」
という事で、掃除が再開した。
「…にしても…この空き教室、やけに埃多いね。」
「まぁ、この教室一年に一回、今日しか掃除されないからね。」
だから、結構埃が溜まっている。ごく稀に人が入るらしいが、大抵この教室は使われない。
「こりゃ重労働だ」
「まぁ、こういう非日常、私は好きなんだけどね。」
「「「分かる」」」
§
それから、15分程度真面目にやり、ある程度普通の教室と同じくらいには綺麗になった。
「ふぅ…結構綺麗になったね!」
「濡れ雑巾の力は偉大だなぁ」
濡れ雑巾やってからの綺麗になった感は確かに大きい。
「濡れ雑巾ありがとね、優子、お姉ちゃん」
「優子お姉ちゃん!?」
「そうは言ってないよ?フウ」
…お姉ちゃんが変な聞き間違えをしているが…とにかく!ラストスパート!とりあえず、隅っこにある埃を1箇所に集める!
「優子、チリトリ持ってきて~」
「はーい」
優子がチリトリを持ってくると同時に、教室のドアが空いた。
「あ、先生。」
「ちゃんとやってるか~?」
深澤先生──ではなく、佐藤先生が来た。
「うん。目に見えて綺麗になってるね。それじゃあ、ちょっと京香と優子、教室の手伝い来てくれる?」
「「はーい。」」
……という事で、二人が教室に戻ってしまった。
行ったり来たり、忙しそうな二人だ。
「…行っちゃった」
「私たちと違って、忙しそうだね」
また掃除を再開しようとホウキを手に取ろうとしたら、お姉ちゃんに阻止された。…この展開、ついさっき見たな。
「なに?」
「二人っきりだし、キスしようよ。」
「…何度も言うけどここ学校だから。ダメ」
さっきのキスはご褒美という体があったので仕方な~くしたが、今回はダメだ。もし学校でキスする癖でもお姉ちゃんに付いてしまったらおしまいだし、学校では出来る限りスキンシップは控えるつもりだ。
「別にいいじゃん。」
「ダメ。」
「今日をキスの日にするから!「キスは家のみ」なんて設定なかったでしょ?」
「…あった気がする」
あいにく、私は記憶力が乏しい。確かにそんなに細かい設定は無かったと思うが…この部屋のみ、みたいな設定もあった気がする。…うん。全然お姉ちゃんの部屋でキスとかしてるけど、私の部屋のみ、っていう決まり|《ルール》があった。…気がする。
「確かにキスはカエデの部屋でのみ、っていうルールはあったけど、そんなの無いに等しいじゃん?家でのみっていうルールは無いし。」
「それでも、学校でキスは流石に良くないでしょ」
「そんなこと言ったら姉妹でキスも良くないけどね」
「お姉ちゃんがそれ言う?」
キスしようって言って来たのもお姉ちゃんだし、だいたいいつもせがむのはお姉ちゃんなのに。
「ごめんごめん、姉妹でキスしても全然変じゃないよね。寧ろ良いことだよね。」
「いや全然変だし、良くはないでしょ。」
「…まぁ、そんなことより…キスしよ?」
お姉ちゃんが、ただでさえ近い距離をさらに近づけてくる。学校ではダメ。お姉ちゃんが調子乗ってもっと求めてきたら本当に危ないことになる。そんなことは頭ではわかっているのに…言葉に出来ない。分かっているのに、全力で拒否できない自分にほとほとあきれる。
「ねぇ、キス。するよ?」
「…」
お姉ちゃんがゆっくりと近づいてくる。数センチ、鼻息が当たるくらいの距離で、お姉ちゃんが目を閉じる。…いつも通りの、なんら変わりないキスなはずなのに、やっぱり、いつも以上にドキドキする。
「…もう終わり!」
「え~…次がラストね。」
「ちょ、まッ…」
有無を言わさずにまたお姉ちゃんがキスをする。タイミングが悪く、息継ぎがちょうどできていないせいで息苦しい。
「ちょ、んっ、息ッ…んーーー!!!」
「っは…あ、ごめんごめん…息、苦しかった?」
「…」
お姉ちゃんは満足したのか、ニコニコしている。…ちょっとムカつく
「じゃ、掃除再開しよっか。」
「…お姉ちゃん」
「ん?…えっ」
お姉ちゃんへの仕返しの意味も込めて、お姉ちゃんのほっぺにキスをする。案の定、お姉ちゃんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。…してやったぜ
「お姉ちゃんへの仕返し~。息、苦しかったから。」
「…カエデ?」
「何?」
お姉ちゃんが、ほうきを地面において、私の肩に手を置く。
「…何?どうしたの?お姉ちゃん。」
「…いまのは、カエデから誘って来たってことでいいんだよね?」
「…………え?」
お姉ちゃんが肩に置いている手に、強く力が入る。少し、肩が痛いくらいに。
「いや、違うから。仕返しだって」
「…カエデが悪いんだよ?カエデの方からやってきたんだからね?」
お姉ちゃんが前のめりになって、私に近づく。明らかに今からキスしようとしている顔だ。
「お姉ちゃん、もうキスは満足したんじゃないの?」
「カエデのせいで、再燃しちゃったよ。」
「…怖いよ?お姉ちゃん」
鬼気迫る表情で私に近づいてくる。…変にお姉ちゃんに仕返ししようだなんて思わなければよかった。お姉ちゃんより力が弱い私には、ここからお姉ちゃんを振りほどくことはできないし、もう、どうしようもない。
お姉ちゃんとの距離は数センチ…もう諦めて目を瞑るしか――――
「椅子と机運び終わったよ~」
「「ッ⁉」」
深沢先生が、教室に入ってきた。
咄嗟に、お姉ちゃんが私から距離を取り、私もほうきを取る。
「…どうしたの?急に慌てて」
「いや、何でもありません。」
「なに~?サボってたの~?……にしては、綺麗になったねぇこの教室。」
間一髪、先生には見られてなかったようだ。…本当に、マジで危ない。こういうことが起こりえるから学校でのキスは嫌だったんだよ。
「サボってませんよ、安心してください。」
「まぁ、確かにそうねぇ…じゃあ、なんで慌ててたの?」
「急に教室に入ってきたから、驚いただけですよ。別にやましいことは何もありません。」
「…まぁ、そうね。とりあえず、掃除終了の挨拶をするから、廊下来て頂戴。」
「「はい」」
§
「本当に危なかった…」
「ドキドキしたね~」
「いや、本当に危なかったからね?もう今後一切、学校でのキスは禁止ね!」
今は下校中。あれからお姉ちゃんと二人っきりにになる機会がなかったので、話していなかったが、ちゃんとお姉ちゃんに「もうダメ!」と言っておかなくてはならない。
お姉ちゃんは絶対またやりたがるから。
「いやだね~」
「………今日みたいに危なくないならいいけどね。」
正直…………私だってキスが嫌いなわけではない。ただ、危険なのは嫌だ。普通に家でキスするなら全然良いのに。
「ねぇ、カエデのせいでまだまだキスし足りないんだけど?」
「…私のせいじゃない。」
「いーや、カエデのせいだね~」
「……なら、返ってからまたすればいいじゃん。」
「いいの?」
「…別に。」
家ならいくらでも…は嘘だけど、家ならキス程度、拒まない。…舌を入れようとしてきたら流石に怒るけど。
「それじゃ、早く家帰ろ~!そしてキスしよ~!」
「声デカい!!」
私達の清掃担当場所は空き教室。空き教室なんて掃除する意味あるのかと疑問ではあるが、やれと言われたらやるだけだ。
「じゃ、行こ。お姉ちゃん」
「うん!」
あの熱以来、学校でも普通にお姉ちゃんと話している。高校ではお姉ちゃんとは赤の他人の振りをする。それによる当初の目標もギリギリ達成してるし、もう学校でお姉ちゃんと話さない理由は無くなった。
「カエデ~空き教室まで手繋いでこうよ!」
「…」
でも、流石にここまでべたべただと困る。
「もっと離れて。」
「え?なんで?」
「なんでも。離れないなら家でその分離れるよ?」
もちろん嘘だ。そんなことしたら私だって辛い。…だけど、この脅しはお姉ちゃんに効果抜群のはずだ。
「…分かった。」
やっぱり、お姉ちゃんにとってこの脅しは何よりも効く。
「その代わり!…後でご褒美、貰うからね?」
「…なんで?普通にダメ。」
「カエデだって家で私から離れてるの、嫌なくせに~」
…バレてた。だからこその交渉、という事か。…これ、脅されてるの私?もしかして。
「…分かった。ご褒美ね?何すればいいの?」
「それはその時になったら言うよ~ん」
「…」
正直、お姉ちゃんに貸しを作っておくのは得策ではない。すぐに屁理屈を言ったり、無茶言って来たり、最終的に私が言うことを聞いてしまう事になる。
「それ嫌なんだけど」
「それって?」
「その時に言うってやつ」
「え~?でも仕方ないじゃん」
「今のうちに決めてよ、ご褒美」
「それは無理~」
「ふふっ」と笑いながら言うお姉ちゃん。…これは絶対何か企んでる。絶対、私が普段しないような事をご褒美でやってもらおうとしている。
「………まぁいいけど。ほら、早く行こ?空き教室」
「うん。」
§
「という事で、空き教室は机と椅子の移動、教室掃除と同じでゴミを集めてゴミ箱に捨てる、窓の掃除、黒板の掃除、ボロボロな机と椅子の交換、等をしてもらいます」
多いのか少ないのか分からない、が、大掃除らしい内容だ。ちょっと興奮してきた
「なんか、ちょっとこういう非日常ってワクワクするよね」
「うん」
やっぱり私とお姉ちゃんは双子だ。分かりやすい所は全然違うけど、こういう細かい所は似てる。
「机と椅子を運ぶ人は結構必要なので…六人、こちらを手伝ってください。」
私達の班は合計八人。うち六人となると、相当の人数を机・椅子運びに割くことになる。
「それじゃあ、人員は適当に決めて構わないので、決まり次第六人は廊下に来てください。」
「…どうする?」
「じゃんけんでいいんじゃない?」
正直、どっちをとっても掃除の大変さは変わらないと思うし、マジでどっちでもいい。
「フウちゃんとカエデさん仲良さそうだし、二人が空き教室掃除で良いんじゃない?もちろん、二人が良ければ、の話だけど。」
そんなの、もちろん即答だ。
「もち」
「もちろんokだよ!!全然大歓迎!」
「…私も、全然OKです。」
私の方が先に言おうとしてたのに、勢いと声量で覆いかぶされた。…まぁ、別に言いたいことは同じだしいいけど。
結局、私達以外の六人が廊下に出て、私たちだけが教室に残った。
「…なんか、二人で掃除することになったね。」
「ラッキーだね」
空き教室とはいえ教室掃除とそう変わらない。机は無いし、ただただ綺麗にするだけだし、教室掃除より楽かもしれない。
ただ、その代わりものすごく埃が多い。
「埃まみれだねぇ」
「うーん」
机の上にも埃があるし、この埃を掃除するのは大変そうだ。二人だと時間がかかりすぎる。
「うん。無理!」
「いや、諦めないで?」
「大まかな掃除は出来たし、ちょっと埃が残ってるくらいならいいでしょ。」
「ダメだって」
お姉ちゃんがほうきを地面において、近寄ってくる。
「今暇だし、ご褒美、ちょうだいよ」
「暇じゃないから無理。」
「まぁまぁ、そんなこと言わずにさ」
お姉ちゃんが後ろから抱きついてくる。お姉ちゃんの私よりも大きく育っている胸が、背中に押し付けられる。…もちもちだ。
「……ここ学校だよ?距離近すぎ。」
「でも周りに誰もいないじゃん」
そういう問題では無い。…けどまぁ、確かに、机・椅子運びはそんなに早く終わらないだろうし、今この空き教室に人が来ることは無い。
「…まぁ、すぐにまた掃除に取り掛かるならいいよ。」
「やったー!」
「で、私は何すればいいの?」
「そのまま、動かないで?」
お姉ちゃんが私を抱き締めてる手を外し、私の前に来る。そのまま私の肩に手を置く。
「…何するつもり?」
「分からない?」
…もしかしなくても、お姉ちゃんは今、私にキスをしようとしている。
「学校だよ?」
「そんなの関係ないよ」
肩をつかんだまま、お姉ちゃんが一歩近づく。いつものように顔と顔との距離がゼロになるまで近づき、そのままキスをする。
「…なんか、久しぶりな気がする」
「いや、昨日もしたでしょ。というか、熱治ってからほぼ毎日じゃない?」
「まぁね。」
お姉ちゃんが再度顔を近づけてくる。が、ご褒美はもう終わりだ。ずっとキスしてるという訳にもいかないし。
「もう終わり。」
「えー?一回だけ?少なくない?」
「少なくない。ほら、掃除再開して。」
「えーやだ~掃除したくないー!」
お姉ちゃんが駄々を捏ねながら私の背中に抱き着く。───と、同時に教室の扉が開いた。
「掃除、やってるかー!」
「お手伝いに来ました。」
教室に入ってきたのは梅木さんと優子だ。
「どうさてここに?」
「深澤先生に言われて。…って、フウ、何してるの?」
「ん?…あ~…掃除が嫌で、カエデに抱き着いてた」
「本当にお姉ちゃんなの?フウ」
「まぁ、カエデがお姉ちゃんってのも想像しづらいけどね。」
梅木さんが呆れた顔でお姉ちゃんと話している。このやり取りだけでも分かる通り、やっぱりこの2人は仲が良い。…って、私がお姉ちゃんっぽくないって?…相変わらず優子は時々毒を吐く。
「家では、カエデは真面目キャラ?」
「…優子、「家では」は余計。私はいつでも真面目。」
「カエデ、授業態度良くないじゃん。それに、めんどくさがり屋だし、忘れ物も良くあるし…」
…確かに、学校だと真面目じゃない…かも、しれない。うん。ここは妥協して家では真面目、という事にしよう。
「………まぁ、うん。家では真面目だよ。真面目」
「いや、そうとも限らないよ」
私と優子の会話に、お姉ちゃんが割り込んできた。…いや、私は家では真面目だ。……少なくとも、お姉ちゃんに比べたら。
「時々真面目で時々真面目じゃない。半々だよ」
「やっぱり?そっちの方がカエデっぽいね」
「…少なくともお姉ちゃんよりは真面目だもん」
「時と場合によるでしょ」
…でもまぁ、確かに。でも、だいたいは私の方が真面目だ。
甘えることも私の方が少ないし、キスをせがむ事も私の方が圧倒的に少ない。
「まぁいいや。そんな事より、ほら、掃除しよ。埃多すぎて困ってたんだよ。」
「よし、じゃあ――やるぞー!」
という事で、掃除が再開した。
「…にしても…この空き教室、やけに埃多いね。」
「まぁ、この教室一年に一回、今日しか掃除されないからね。」
だから、結構埃が溜まっている。ごく稀に人が入るらしいが、大抵この教室は使われない。
「こりゃ重労働だ」
「まぁ、こういう非日常、私は好きなんだけどね。」
「「「分かる」」」
§
それから、15分程度真面目にやり、ある程度普通の教室と同じくらいには綺麗になった。
「ふぅ…結構綺麗になったね!」
「濡れ雑巾の力は偉大だなぁ」
濡れ雑巾やってからの綺麗になった感は確かに大きい。
「濡れ雑巾ありがとね、優子、お姉ちゃん」
「優子お姉ちゃん!?」
「そうは言ってないよ?フウ」
…お姉ちゃんが変な聞き間違えをしているが…とにかく!ラストスパート!とりあえず、隅っこにある埃を1箇所に集める!
「優子、チリトリ持ってきて~」
「はーい」
優子がチリトリを持ってくると同時に、教室のドアが空いた。
「あ、先生。」
「ちゃんとやってるか~?」
深澤先生──ではなく、佐藤先生が来た。
「うん。目に見えて綺麗になってるね。それじゃあ、ちょっと京香と優子、教室の手伝い来てくれる?」
「「はーい。」」
……という事で、二人が教室に戻ってしまった。
行ったり来たり、忙しそうな二人だ。
「…行っちゃった」
「私たちと違って、忙しそうだね」
また掃除を再開しようとホウキを手に取ろうとしたら、お姉ちゃんに阻止された。…この展開、ついさっき見たな。
「なに?」
「二人っきりだし、キスしようよ。」
「…何度も言うけどここ学校だから。ダメ」
さっきのキスはご褒美という体があったので仕方な~くしたが、今回はダメだ。もし学校でキスする癖でもお姉ちゃんに付いてしまったらおしまいだし、学校では出来る限りスキンシップは控えるつもりだ。
「別にいいじゃん。」
「ダメ。」
「今日をキスの日にするから!「キスは家のみ」なんて設定なかったでしょ?」
「…あった気がする」
あいにく、私は記憶力が乏しい。確かにそんなに細かい設定は無かったと思うが…この部屋のみ、みたいな設定もあった気がする。…うん。全然お姉ちゃんの部屋でキスとかしてるけど、私の部屋のみ、っていう決まり|《ルール》があった。…気がする。
「確かにキスはカエデの部屋でのみ、っていうルールはあったけど、そんなの無いに等しいじゃん?家でのみっていうルールは無いし。」
「それでも、学校でキスは流石に良くないでしょ」
「そんなこと言ったら姉妹でキスも良くないけどね」
「お姉ちゃんがそれ言う?」
キスしようって言って来たのもお姉ちゃんだし、だいたいいつもせがむのはお姉ちゃんなのに。
「ごめんごめん、姉妹でキスしても全然変じゃないよね。寧ろ良いことだよね。」
「いや全然変だし、良くはないでしょ。」
「…まぁ、そんなことより…キスしよ?」
お姉ちゃんが、ただでさえ近い距離をさらに近づけてくる。学校ではダメ。お姉ちゃんが調子乗ってもっと求めてきたら本当に危ないことになる。そんなことは頭ではわかっているのに…言葉に出来ない。分かっているのに、全力で拒否できない自分にほとほとあきれる。
「ねぇ、キス。するよ?」
「…」
お姉ちゃんがゆっくりと近づいてくる。数センチ、鼻息が当たるくらいの距離で、お姉ちゃんが目を閉じる。…いつも通りの、なんら変わりないキスなはずなのに、やっぱり、いつも以上にドキドキする。
「…もう終わり!」
「え~…次がラストね。」
「ちょ、まッ…」
有無を言わさずにまたお姉ちゃんがキスをする。タイミングが悪く、息継ぎがちょうどできていないせいで息苦しい。
「ちょ、んっ、息ッ…んーーー!!!」
「っは…あ、ごめんごめん…息、苦しかった?」
「…」
お姉ちゃんは満足したのか、ニコニコしている。…ちょっとムカつく
「じゃ、掃除再開しよっか。」
「…お姉ちゃん」
「ん?…えっ」
お姉ちゃんへの仕返しの意味も込めて、お姉ちゃんのほっぺにキスをする。案の定、お姉ちゃんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。…してやったぜ
「お姉ちゃんへの仕返し~。息、苦しかったから。」
「…カエデ?」
「何?」
お姉ちゃんが、ほうきを地面において、私の肩に手を置く。
「…何?どうしたの?お姉ちゃん。」
「…いまのは、カエデから誘って来たってことでいいんだよね?」
「…………え?」
お姉ちゃんが肩に置いている手に、強く力が入る。少し、肩が痛いくらいに。
「いや、違うから。仕返しだって」
「…カエデが悪いんだよ?カエデの方からやってきたんだからね?」
お姉ちゃんが前のめりになって、私に近づく。明らかに今からキスしようとしている顔だ。
「お姉ちゃん、もうキスは満足したんじゃないの?」
「カエデのせいで、再燃しちゃったよ。」
「…怖いよ?お姉ちゃん」
鬼気迫る表情で私に近づいてくる。…変にお姉ちゃんに仕返ししようだなんて思わなければよかった。お姉ちゃんより力が弱い私には、ここからお姉ちゃんを振りほどくことはできないし、もう、どうしようもない。
お姉ちゃんとの距離は数センチ…もう諦めて目を瞑るしか――――
「椅子と机運び終わったよ~」
「「ッ⁉」」
深沢先生が、教室に入ってきた。
咄嗟に、お姉ちゃんが私から距離を取り、私もほうきを取る。
「…どうしたの?急に慌てて」
「いや、何でもありません。」
「なに~?サボってたの~?……にしては、綺麗になったねぇこの教室。」
間一髪、先生には見られてなかったようだ。…本当に、マジで危ない。こういうことが起こりえるから学校でのキスは嫌だったんだよ。
「サボってませんよ、安心してください。」
「まぁ、確かにそうねぇ…じゃあ、なんで慌ててたの?」
「急に教室に入ってきたから、驚いただけですよ。別にやましいことは何もありません。」
「…まぁ、そうね。とりあえず、掃除終了の挨拶をするから、廊下来て頂戴。」
「「はい」」
§
「本当に危なかった…」
「ドキドキしたね~」
「いや、本当に危なかったからね?もう今後一切、学校でのキスは禁止ね!」
今は下校中。あれからお姉ちゃんと二人っきりにになる機会がなかったので、話していなかったが、ちゃんとお姉ちゃんに「もうダメ!」と言っておかなくてはならない。
お姉ちゃんは絶対またやりたがるから。
「いやだね~」
「………今日みたいに危なくないならいいけどね。」
正直…………私だってキスが嫌いなわけではない。ただ、危険なのは嫌だ。普通に家でキスするなら全然良いのに。
「ねぇ、カエデのせいでまだまだキスし足りないんだけど?」
「…私のせいじゃない。」
「いーや、カエデのせいだね~」
「……なら、返ってからまたすればいいじゃん。」
「いいの?」
「…別に。」
家ならいくらでも…は嘘だけど、家ならキス程度、拒まない。…舌を入れようとしてきたら流石に怒るけど。
「それじゃ、早く家帰ろ~!そしてキスしよ~!」
「声デカい!!」
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作者ツイッター: twitter/minori_sui
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