絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種

たまに何かを書く人

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第9章 走り出した挑戦の記録

第三節 仲間からのギフト

12月初旬。
朝の空気は一段と冷たくなり、吐く息が白くふくらむ季節。市の水泳大会まで、残りわずかとなったある日。

放課後、スイミングスクールでの練習を終えたさちは、いつものようにジムでのトレーニングに合流した。汗をぬぐいながらも、表情にはいつも以上に緊張がにじんでいた。

「ねえ、さち」
ユキが、ストレッチをしながらふと口を開く。

「……最近、ちょっと顔がこわばってない?」

「うん。がんばってるのはわかるけど……少し、肩に力入りすぎてるかも」
ハルもやさしく声をかける。

「うーん……自分じゃあんまり分かんないけど……そう見えるなら、たぶんそうかも」

「大会、近いからね」
リンがうなずきながら言った。

「プレッシャーって、自分じゃ気づかなくても、体に出るから。でも、それって本気で向き合ってる証拠だよ」

「……そうだよね」

さちは苦笑いを浮かべて、少しだけうつむいた。

「でもね……今、ここまで来て、思うの。絶対、あの日の私じゃできなかったって。やっと、自分で“出たい”って思えるようになったのに、変に力が入ってたらもったいないよね」

「そうそう!」とハルが声を弾ませる。

「だからね……私たちから、さちにプレゼントがあるの」

「え?」

ユキがそっと、紙袋を手渡した。

「え、なにこれ……?」
袋の中には、小さなペンダントが入っていた。銀色の丸いトップに、さちの名前の頭文字“S”が刻まれている。

「これ……」

「この前の校外学習の時、ペンダント作ったじゃん? あれと同じ素材で、特別にもう一つ、お願いして作ってもらったんだ」

「4人で相談して、“がんばるさちへの応援バッジ”にしようって」

「大会当日、これをポケットに入れてて。泳ぐときは邪魔しないように外してもらっていいけど、スタート前とか、不安なときにちょっと触るだけで、私たちの声、思い出せるようにって」

さちはペンダントを手に取り、そっと握りしめた。

「……ありがとう。ほんとに、ありがとう」

目元が少し潤んだ。だけど、その瞳には決意が宿っていた。

「がんばる。みんなの応援、胸に抱いて。わたし、自分の力で泳ぎ切ってみせる」

「うん、私たち、どこにいても“Team トレノ”だよ!」

「Go,さち!」
「Swim with heart!」

その夜、4人はいつもより長くトレーニングを続けた。
汗を流し、息を切らしながらも、心のなかに灯った小さな火は、凍えるような外の風を吹き飛ばすように、静かに燃えていた。

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