余命の残りを大切な人にくれてやります

きるる

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硬いアレだけ貸してもらえれば 2





「そうですねぇ…年上、魔力量、魔術師…顔も、なのかな…?」
「それなら他にも居るだろうが」
「総帥が良いですね」
「権力や爵位という意味か」
「あ、それは婚姻しても勘弁してほしいです。公爵夫人とか無理」


婚姻したら名ばかりだとしても公爵夫人にはなる。じゃあ何なんだと言いたげにバウデンは困惑しながらガブリアルノとギュスターを見やるが、何故か二人とはどうしても目が合わない。


「私感情が希薄みたいなんですが珍しく、もぞりと動いたんです。なんていうか…性交なら年上で誰でも良いって感じなんですが、婚姻するなら総帥とみたいな。何故かはよく分からないんですけど」
「確かにスーランさんは精製と魔術以外はぼけっとしてますよね。性交中は見たことありませんけど」
「うん。性交中はそれなりに元気に見えるらしいよ」
「おい、王の御前だぞ」


国王を前にして二人の会話が些か卑猥な方向に向かい始めたのでバウデンが窘める。


「年上と言うなら宰相だって同じだろう」
「それさっきも聞かれましたけど想像したら無理でした」
「私も全く同意見です」
「「ぶっ」」


噴き出す声が二人に増え、スーランの全く変化のない口調にバウデンが若干苛立っている様子なのが珍しい。


「だから何故私だと聞いている。好意があるわけではないのだろう」
「好意はありますよ多分。年上だし格好良いと思いますし総帥として魔術師としても素晴らしいと思っていますし」
「だが異性として好きと言う意味ではないんだろうが」
「そこがいまいち分からないんですよね」
「分からないならする必要ないだろう」
「分からないからする必要があるんです」


わからないかなぁみたいにやれやれと肩を諌めるスーランの態度がこの上なく腹立たしいだろうことは確実だろう。寧ろそうしたいのはバウデンの方だと。

だがそこで口を挟む直感男がいた。


「何だか凄く面白い案ですね。楽しみになってきました」
「でしょ?私滅多にこういうことないからやってみたくて」
「あっても内容が魔術や薬と偏ってますしね。ということは私の義理母になるのですか?」
「あー…戸籍上はそうだけど、キリウのお母さんは一人だけ。それに私世話とかできない。自堕落だし暇さえあれば寝てるし生活能力も無いし」
「確かに仕事中の合間に世話しているのは僕でした」
「いつもお世話になってます」
「いえいえ」
「…王の御前だぞ」


キリウが何故かはわからないが乗り気になっているのでスーランとしては助かると思いながら話に花が咲き始めるのをバウデンが凍える低音で摘んでいく。


「わざわざ婚姻する必要があるのか?」
「婚姻してみたいと思ったのが初めてなんで」
「何故」
「分かりません」


最後に辿り着く最終奥義『分かりません』にバウデンは段々と苛立ちが募っているようだ。

そしてそんな彼の心境など露知らず、スーランはいよいよ眠気が襲ってきたので、交渉を終わらせようと条件を提示する前に不意に思い出す。


「そうだ。そもそも総帥はお付き合いしている方はいるんですか?」
「いませんね」
「何故お前が答えるんだ」


キリウが勝手に回答してくれた。


「それなら問題ないですね」
「他に問題が大いにあるが」
「些末なことです」


お前が言うなとバウデンの表情が物語っている。それ以前に表情に出ることが珍しいなと思いながら、スーランはまあまあと両手で軽くいなすと彼の表情が更に険しくなり今度は楽しくなってきた。

こんなスーランも実はとても珍しいことだった。


「流石の私も多少無理を承知で交渉してると思っているので、ずっとなんて言いません。婚姻期間は半年限定で。この場で婚姻届と離縁届を書いて離縁届は国王陛下に預けますのでちゃんと半年後に受理されるようにお願いしてあります」


既にそんな先の話まで国王としているのかとバウデンは呆然とする。本当に楽しい。


「亡くなられた繁縁の奥様を大事にしていたという話は聞いているので、無理に心をどうこうする必要もないですしね」
「どこからの情報源だ」
「どこでしたっけ」
「多分僕ですね」


ちょいちょい横から口を出してくれるキリウにバウデンは睨みをきかすが、視線の先の息子はしれっと流しながらも目が合う様子は微塵もない。


「まず、私はずっと避妊薬と番避けを飲んでいるので、万が一の心配もありません」
「他が心配しかないんだが」
「性交相手は全員切っているんで、相手がいないと困るんです。魔力的にも性欲的にも」
「知るか。私が気持ちの無い性交をするとでも?」
「え?戦に赴いた時や魔力を大量に消費した時って滾りやすくなるから娼館くらいは行っているでしょう?」
「っ…」
「ああ、その時くらいは父上も行ってましたよね」
「なら愛という名目がなくても勃つものは勃つと言うことです」
「…王の御前だぞ……!」


あけすけな言葉を堂々と口にするスーランに普段冷静沈着なバウデンも徐々に崩れ始めたようだ。


「物欲無し。独占欲も無し。あるのは睡眠欲とそこそこの性欲。そして精製と魔術をこよなく愛すスーラン二十七歳です」
「誰が自己紹介をしろと」
「半年間は公爵邸にお邪魔しますね。基本何もできないんで最低限のお世話だけしてもらえるように使用人の皆さんには伝えておいてください。期間限定だからとしっかり周知させておいてくれれば多少は我慢してもらえるかと。あ、用を足すくらいは一人で出来ます」
「王の御前だと言っているだろうが」


スーランの既に決定したが如く先の話を進めていくことに、バウデンは焦りつつも何とか口を挟んでくる。

スーランはいつも月一で行われる報告会や議論では「うん」「ううん」「どっちでも」「面倒」など一言発言が殆どなのだが、自分の気になった精製や魔術においてはかなり饒舌になる。

そして今の話し方が正にそれなのである。





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