余命の残りを大切な人にくれてやります

きるる

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硬いアレだけ貸してもらえれば 3





「部屋は別々で大丈夫です。空いている所どこでもいいんで押し込んでおいてください。やることやったらお互いゆっくり眠りたいですよね。あと庭に薬草を育てる区画を少し分けて貰えると助かります」
「何故既に決まった前提で話を進ませている」


圧され気味ではあるが事細かく反論してくるバウデンにスーランはもう面倒くさいなぁと、これみよがしに溜息を吐き頬を指でゆっくり叩き始める。


「要は婚姻という形を味わってみたいのと、公爵家でちょっと自堕落に過ごしてみたい、あとは―――」


とんとんと頬を叩いている手と逆の手でバウデンの下半身…の一部分に照準をしっかり合わせ、スーランは指を差しながら恥ずかしげもなくとどめの一言を放った。




「まあ、つまるところあれです。週に一度くらいで良いので総帥の硬く変化する体の一部分だけちょっと貸してもらえ―――」
「王の御前だぞ!」




あまりに露骨過ぎる赤裸々な要望に我慢の限界を超えたらしいバウデンが声を大にして叫んだ。それに対し臆することもなく、頬を指でゆっくり叩くのを止めず気怠そうにしているスーラン。


ぶはっと二方向から噴き出す声、一人は緩やかに首を振る。

そして勝利の女神はさらなる援護射撃によってスーランに舞い降りようとしていた。


「それは助かります。きっと自慰ばかりだったと思うので実は心配してまして。魔術おたくってやつなのか興味がそっちに全振りなので開拓してもらえれば」
「何で私の性事情をお前が知っているんだ!」
「そうなんだ。その辺はしっかり搾り取っておくから安心して」
「安心できるか!」


バウデンが何を言い返してもそれを掻き消すかのようにスーランとキリウの会話は続く。


「想い人がいたり娼館へ行けば必ず噂になりますから。これでも魔術隊統括総帥で我が父ながらそれなりに男前ですしね」
「へえ。なのに自慰だけで過ごせるなんてある意味凄いね」
「ですね。僕なら無理です」
「キリウは最近元気だよね」
「若いんでそれなりには」
「ぴちぴち」
「ふふ。ぴちぴちです」


もう国王を前にして…いや人前で話す会話では全く無い。バウデンは我慢出来ずにガブリアルノを睨んだ。


「ガブ!お前の仕業か!」
「そんなわけないでしょ。そもそもスーランがそんな提案引き受けると思う?」


この時点でバウデンの口調は国王に対してではなく、完全に対友人になってしまっていた。


「バウデン。これは正式なスーランからの要望ですよ」
「こんな状況になる前に止めろ。悪賢い宰相だろう、ギュスター」
「褒賞を盾にされると些か分が悪く」


悪びれずに答えるギュスターにバウデンは歯噛みする。対してスーランとキリウはきゃっきゃと今後の話を詰め始めていた。


「楽しみです。いつから家に来れるんですか?」
「んーあまり物は無いから…それ以前に片付けるのが面倒…」
「良ければ家の者を派遣しましょうか?数時間で済ませますよ」
「え、それかなり助かるかも」
「おい」


バウデンは王の御前ということをすっかり忘れ、冷静も彼方に投げ飛ばしスーランを威圧的に見下ろした。


「まだ私は承諾していない」


その言葉にスーランは瞬き一つすると、ふうと物憂げに溜息を吐いた。


「まあ…どうしても無理だと言うなら、褒賞はやはり受け取らないということで諦めます。…ただ偏った嗜好以外で心が動くことがなかったのでちょっと残念ではありました。底辺まで落ち込んでもし今後仕事に支障をきたしたらすみません」


拳を握り締めたバウデンが声を特大にしてそんなタマかと言ってやりたいだろうことを他三名は容易に想像ができて再度厳かに頷く。

だがここで終わったら面白くないと思った直感男が追随するように援護を撃つ。


「それは非常に困ります。先日から番消しの薬の精製と高等治療魔術の新しいものをやっと教えてくれるようになったのに」
「やる気失くなっちゃったらごめん。そろそろ私の研究成果も教えていこうと思っていたんだけど」
「え!?やっと教えてくれる気になったんですか。面倒だって言っていたのに」
「うん。キリウなら優秀だし悪用しないだろうから、私ので良ければくれてやろうと思っていたんだよ」


どうしてくれるんだとキリウが険しい表情で睨むが、現在進行系でその表情をしたいのは間違いなくバウデンの方である。

そして。
とどめの一撃は一番上の玉座に御わす国家最高権力者から放たれた。…気持ちちょっと申し訳なさが滲んだ小さな声で。


「流石にそれは…国としても痛手なんだけどな。半年って期間決まっているし…特に誰か想い人がいないなら、…ね?」


バウデンはついに目元を手で覆ってしまった。


その原因を作ったスーランはというと、また沢山話して喉が渇いたので「ちょっと失礼」と言い、いそいそと窓際に移動して紅茶を自ら注ぎ喉を潤していた。





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