余命の残りを大切な人にくれてやります

きるる

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言うか言わないか 2

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「微量な量でしたがなかなかの攻撃力があり、動揺していたらあっという間に大半の魔力が喰い荒らされる予想です。魔力の器が大きくない魔術師が受けたら致命傷になりかねないと感じました」
「比較的、魔力量の、多い、魔術師は?」


言葉がある意味通常に戻っているホーイェンからの質問にスーランは頷く。


「侵入した量、あとは本人の技術と精神に寄るかと。魔術師以外が受ければ体内に向けて重力魔術を使えない限り滅することが不可能になります」
「スーランの魔力量は群を抜いている。そのお前でさえ枯渇手前になったということは殆どの者が枯渇してしまうぞ」


コーネインの鋭い問いに、ガブリアルノの眉が僅かに動く。スーランはそれ以上態度に出してくれるなと思いながら表情を変えずに答えた。


「たまたま前日の夜に家で精製、当日午前中の精製に集中していたのでそれなりに減ってはいました。半分切るくらい」


魔力の量をある程度詳しく伝えることはリスクを背負うが、ちゃんと話しておかないといざという時に対応できなくなる危険を冒すわけにはいかない。

スーランの発言にバウデンが顔を向けたのを視界に捉えたが、そのまま前を見据える。

こういう時感情を表に出さないぼけっとした自分の顔は便利だなと思ったがこれ以上その話を拡げて欲しくはないのでスーランは続けた。


「ただ私の場合は侵入されている間に様々な攻撃魔術を試していたので時間はかかりました。すぐに重力魔術を放てばそこまで魔力が減らされることはないかと」
「…どの程度の魔術師が対応出来る?」


いつもより低いバウデンの言葉にスーランは知らない振りをしつつ魔術師達が自己申告している魔力の器の大きさを思い出す。


「んー…総帥なら余裕。コーネインさんとホーイェンさん、キリウも問題ないですね。治療魔術師なら半数近くはぎりぎりいける、そんな感じでしょうか。ただしこれは微量前提という話になります」


それに体内での戦いだ。混乱し焦って自分に攻撃を当ててしまっては本末転倒となる。


「落ち着いて対応出来れば消滅方法があるだけましだな。現在不治の病と言われている魔力系の病の殆どが人が作り出しているものと言われている。そして解けるものはほぼ無い」


コーネインの言葉にどきりとしたスーランはバレないようにゆっくりと深呼吸し平静を保つ。


「ですね。今回は相手がそこそこ無能だったので助かりました。これが高名な魔術師だったらそんな隙さえ見つからなかったでしょうね」
「人が、作った、忌々しい、呪い。欲望の、成れの果ての、象徴」


ホーイェンの言葉はまさにその通りで魔術は便利ではあるが己だけの欲の為に編み出し、先に何が起こるかすら考えず、その代償を念頭に入れてなかったりなど碌なことにならない。

ガブリアルノはふうと息を吐き、王座の背凭れに背をつける。


「ここ最近の活発な動きと来月に迫った式典。そこで何か起こすだろう可能性は高い」
「式典当日は騎士隊、特殊部隊、魔術隊共に継続中や重要な任務以外は周囲の配置を重視に手配を」


懸念にギュスターが提言し、ガブリアルノは頷いてからバウデンを見た。


「そうだね。バウデン、各統括総帥に通達しておいてくれる?」
「御意」
「それと呪いを受ける前に重力魔術を放ち防げる可能性は?」
「あの薄黒い魔力が目視できれば可能かと。ただ呪いがどのような動きをするかも不明なので確実ではありませんが」
「もう残滓が無いから確認する手段も無いしなぁ」


何も起きないことが一番ではあるが、起きた場合はぶっつけ本番となる。


「まあ無いものを憂いても仕方ない。スーランもご苦労さま。もう仕事は出れるの?」
「はい。元々昨日も魔力的に問題なかったんですが、総帥がどうしても給餌したかったみたいで」
「「「「え」」」」
「お前な…」


スーランの言葉にバウデンを除く四人が目を丸くする。


「あれ本当に楽ですよね。癖になりそうです」
「スーラン…お前本当に何も出来なくなるぞ」
「自尊心を捨てれば、こんなに楽なことはなく」
「一人で、出来ることが、少なくなる」
「元々少ないですけどね」
「貴女と言う人は全く…」
「甘やかしは幾らでもお代わり可能です。ね、総帥」
「…お前なぁ」


肩を落とすバウデンにガブリアルノが噴き出す。


「ふはっ。スーランはスーランだね。さあ、以上だ。報告ありがとう。皆下がって良いよ」


スーランはぺこりとおざなりのお辞儀をして去ろうとすると、バウデンは王座を向いたままガブリアルノを見ていた。


「あれ。総帥戻らないんですか」
「話がある」
「そうですか」


何となく予想はつくが、スーランは素知らぬ返事をして謁見室からコーネイン達と退室した。





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