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バウデン 4
国王ガブリアルノの伴侶、この国の王妃が暗殺された。
心身削りながらガブリアルノは辛うじて動いていたが、彼の憔悴していく過程は見られたものではなく、バウデン始め三部隊統括総帥、ギュスターも遠からず彼が壊れてしまう未来しか見えなくなっていた。
ホーイェン経由でスーランから番避けの薬が僅かに効くかもしれないとガブリアルノに持っていったが、窶れた彼は虚ろな瞳で頷くだけ。
もしかしたらバロアス国そのものが危うくなるかもしれないと誰もが思い始めていた時。
スーランが王妃亡き後、ある薬を作るために滅多にしない残業をしているという報告を聞いた。
作られたものによっては、もしかしたらガブリアルノが持ち堪えるかもしれないということで、バウデンはスーランの腕を信じて好きにさせるように伝えた。
そこから半年過ぎた頃、スーランから番消しの薬が大まかに出来上がった報告をされ、彼女は直談判しにガブリアルノの所へ行ったとホーイェンから報告された。
その後ギュスターからガブリアルノがスーランの作った番消しの薬を受け入れ、久方ぶりにまともな睡眠を取れたという話を聞き、バウデンは僅かに胸を撫で下ろす。
その後スーランとガブリアルノを主導に番消しの薬が誕生した。
スーランが賢王ガブリアルノを救ったのだ。
バウデンには番を失った気持ちはわからない。
だが強靭な精神を持つガブリアルノですら、あそこまでダメージを負ってしまうという番の存在にバウデンは内心戦慄していた。
ガブリアルノが復活し、ようやく国が安定した頃にバウデンは今後のことを考えて番消しの薬を飲もうか悩んでいた。
だがどこからか聞きつけてきたキリウと屋敷の者から猛反対されて取り敢えずは保留としたが、四十過ぎになった頃に相手が居なかった場合には飲むことを伝えてある。
バウデンが三十八歳の時。
今までの人生がひっくり返る衝撃の出来事が起きた。
スーランが今度は避妊薬の男性版を開発し、「マジでこれ雄に常用して欲しいものですね」と言いながら報告していた。
後日、五ヶ月後に控えた周年式典の件でキリウとホーイェン、コーネインと話していると、珍しく国王付きの近衛兵がバウデンに召集をかけてきた。
緊急か尋ねると「恐らくある意味は、と伝えろと」と意味の分からない返しをされ、首を傾げながらも登城するのだが。
何故かその場にいたキリウも行きますと言って聞かない。何度窘めても耳を貸さず、こういう時は何を言っても無駄なので無理なら国王から直接言われるだろうとバウデンは共に王宮に向かった。
謁見室の玉座にはガブリアルノと、いつも付き従っている宰相のギュスター。
そして何故か窓際に背中を丸めたスーラン。
そこで聞かされたのは天変地異もいいところのとんでもない案件で。
バウデンとスーランの半年間限定の婚姻。
最早何が何だかわからず、スーランを問い詰めるがふらふらと明確な理由を流され、彼女の真意が分からずバウデンは混乱していく。
そんなバウデンを徐々に追い詰めていくスーランの話し方は正に会議での興味を示した時の圧倒的な話術。
バウデンが何を返してものらりくらりするのにいつの間にかスーランの要望通りに事が進んでいく様にバウデンは焦り始める。
何故バウデンなのか。
何故今更なのか。
スーランは分からないというパワーワードを掲げ攻撃を緩めない。バウデンは今までにないくらい平静を保てなくなっていた。
そして何よりスーランの表情。
バウデンが焦れば焦るほど、何故か楽しげに嬉しそうな表情をする。意味が分からないし寧ろ腹が立つ。
しまいには王の御前どころか人前で話す内容ではない卑猥な言葉を連発し、ついにバウデンは切れた。
それでもにこりと微笑むスーランの無邪気な表情に何故嬉しそうなのかと呆気にとられる。
あれよあれよという間に半年間の婚姻が決まらざるを得ない状況になり、バウデンは唸るような声音で承諾した。
今後の話を間髪入れず詰めてくるスーランにバウデンは最終的にやけになり、もうどうにでもなれと諦めた。
そして横槍を入れまくった親不孝な息子は、バウデンが帰宅した時には既にスーランの話を使用人全員に通達しており、まるで主のようにあれこれ手を回していて、バウデンは更に疲れがどっと出て不貞寝した。
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