69 / 81
バウデン 10
しおりを挟む式典と隣国の不穏な動きに忙殺されていたバウデンは日々深夜近くまで帰れず若干どころかかなり苛ついていた。
最近スーランと性交していないどころかまともに会えていないし話してもいない。
その日も日付が変わる少し前に帰宅し、イーガンからスーランが少しぼーっとしていたとの報告を受け、寝る前に一目だけでも眠っているスーランを見ようと部屋に訪れた。
もう眠っているだろうとノックせずに部屋に入ると寝台の上で掛布を頭まで被っているスーラン。そしてもぞもぞと動きながらも時折艷やかな吐息と声が耳に届いた。
バウデンはまさかと掛布を捲ると。
下履きも下着も付けていない、上着も捲り形の良い胸が半分ほど見えていて。
そこから香る淫靡な匂いと汗ばんだスーランの肌。
彼女の手は脚の間に埋められており、眉を潜めながらも恐ろしく色香を放つ表情。
バウデンが恋しくて自慰をしていたスーラン。
その後の記憶はあまりない。
スーランを抱き上げ隣の夫婦の寝室に連れていき、ぐずぐずに蕩けた蜜壺はバウデンを想いながら弄っていたのだろう。
張形すら望むスーランのあまりにもいじらしい姿にバウデンは今までにないくらいの情欲、同時に獰猛で己の獲物を捕獲する鷹の本質が底から暴発する勢いに駆られた。
感じ過ぎてひっくひっくと啼きながらも中の蠢動はずっと動きバウデンを求めるスーランに嗜虐心が煽られずっと責め続けた。
三度目の白濁をスーランの最奥に放った時には、もう彼女の意識は途絶えていた。それでもバウデンの雄が萎える様子は無い。
「…もうすぐ四十になるんだがな…。今まで性欲が薄いと思っていたが…」
どうやらスーランに対しては尽きることがないらしい。
気を失っていても、口を縦横無尽に這い回ると拙い動きで返し、身体中隈無く触れるとぴくぴくと反応し甘い掠れ声が漏れ、納まらない屹立を蜜壺に埋めるとすんすん啼きながらも従順に収縮し蠢く。
バウデンはまるで鷹が獲物を捕食してゆっくりと味わうように明け方までスーランを貪り、初めてスーランの柔らかい髪に顔を埋め香りを堪能しながら、心地良い疲労感と共にスッと意識が落ちた。
欲を発散したこともあるが、スーランの滑らかな柔らかい身体を包みながら眠った後の朝の爽快さは格別だった。
その日からバウデンはスーランを抱き締めながら眠ることを習慣にし、疲れていてもぐっすり眠れることにとても満足した。
***********************
呪いの残滓が突然変異したことによる枯渇手前状態。
バウデンはそう報告を受けたホーイェンに抱きかかえられていたその状態すら許せずに、些か乱暴に奪い執務室奥の仮眠室にスーランを横たえた。
どれだけ魔力を奪われたのか。
バウデンはあまり濡れていないスーランの蜜口に舌を沿わせる。
脳髄に直撃するスーランの匂いとまるで甘露のような蜜液に頭がおかしくなりそうだったが、今はスーランを楽にさせなければと己の欲を無理矢理押し込めてしとどに濡れてきた蜜壺に張り詰めた剛直を挿入しすぐに果てた。
いつもスーランの破天荒な行動と、無意識に放つ壮絶な色香。快感を素直に追う彼女の仕草にいつもバウデンはあっという間に果てそうなのを、雄の意地で維持していたのを彼女は知らないだろう。
子供のように泣きじゃくるスーランをあやしつつ、何故そこまで謝るのか頭の片隅でずっと思いながらも、バウデンは魔力を補充するべくスーランの身体に刻んでいった。
後日ガブリアルノに報告するスーランの発言にバウデンは疑問を持った。
あの呪いの件より二日前にスーランと性交していた。例えそれから精製で魔力をそれなりに使っていたとはいえ、器の半分以下まで減るものか。
不意にスーランがずっと言葉にしている『半年間』に関係しているのではないかとバウデンは確信のような結論に至る。
そして決定打はガブリアルノがスーランから魔力量の話を聞いた時、ほんの僅かに眉を顰めたその表情だった。
確かめるべく、スーラン達が去ったあと残ったのはバウデンとガブリアルノ、ギュスターの三人だ。
「それでバウデンは何か話があるのかな?」
「ここからは国王と臣下でなく、盟友として尋ねる」
バウデンの言葉にガブリアルノがすっと表情を失くした。
「何?」
「スーランが半年間に拘った理由は何だ」
直球の質問にガブリアルノの表情は微動だにしない。ギュスターの表情も全く変わらない。それらを見てバウデンは確信する。
スーランが何某かの問題を抱えているのだと。
「…何故それを尋ねる?」
「私が――――俺がその先を望むからだ」
バウデンの真摯な表情と言葉にガブリアルノの表情が一瞬歪むがすぐに戻る。そして玉座の背凭れにゆっくりと背を置いた。
「褒章の誓約上、話すことは不可能。どうしても聞きたいならスーラン本人から聞くんだね」
「…」
ガブリアルノは何も発さずヒントすらない。逆にいうなら何も話せないくらいに大きな問題を抱えているということと同義になる。
バウデンの胸に重苦しく凝ったような不安が積み重なった。
スーランは何を隠しているのか。
スーランの身に何が起きているのか。
*************************
「スーラン…何を隠している?」
バウデンの質問に静謐な、そして虚ろな瞳で返すスーラン。綺麗な魔力を生み出す細い指がバウデンの唇に当たる。まるで『聞かないでくれ』とでも言うように。
庭に敷物を敷いて横たわり、二人でのんびりする時間が穏やかで尊くてずっとこのままが良い。だがそれはできないと断言するスーラン。
スーランの真っ直ぐに見つめる藍色の垂れ目は僅かにでも言う気配は無い。
それでもバウデンは必ず突き止める。数日後に期日を迎える限定婚姻を破棄させる為に。
ずっと共に、居るために。
353
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!
恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。
誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、
三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。
「キャ...ス...といっしょ?」
キャス……?
その名を知るはずのない我が子が、どうして?
胸騒ぎはやがて確信へと変わる。
夫が隠し続けていた“女の影”が、
じわりと家族の中に染み出していた。
だがそれは、いま目の前の裏切りではない。
学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。
その一夜の結果は、静かに、確実に、
フローレンスの家族を壊しはじめていた。
愛しているのに疑ってしまう。
信じたいのに、信じられない。
夫は嘘をつき続け、女は影のように
フローレンスの生活に忍び寄る。
──私は、この結婚を守れるの?
──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの?
秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。
真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
亡き姉を演じ初恋の人の妻となった私は、その日、“私”を捨てた
榛乃
恋愛
伯爵家の令嬢・リシェルは、侯爵家のアルベルトに密かに想いを寄せていた。
けれど彼が選んだのはリシェルではなく、双子の姉・オリヴィアだった。
二人は夫婦となり、誰もが羨むような幸福な日々を過ごしていたが――それは五年ももたず、儚く終わりを迎えてしまう。
オリヴィアが心臓の病でこの世を去ったのだ。
その日を堺にアルベルトの心は壊れ、最愛の妻の幻を追い続けるようになる。
そんな彼を守るために。
そして侯爵家の未来と、両親の願いのために。
リシェルは自分を捨て、“姉のふり”をして生きる道を選ぶ。
けれど、どれほど傍にいても、どれほど尽くしても、彼の瞳に映るのはいつだって“オリヴィア”だった。
その現実が、彼女の心を静かに蝕んでゆく。
遂に限界を越えたリシェルは、自ら命を絶つことに決める。
短剣を手に、過去を振り返るリシェル。
そしていよいよ切っ先を突き刺そうとした、その瞬間――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる