余命の残りを大切な人にくれてやります

きるる

文字の大きさ
70 / 110

バウデン 11





願掛けと言われればそうなのかもしれない。

式典の前夜、出来上がったばかりの耳飾りをスーランに渡した。

本人はぼそぼそと何か言っているが、耳が仄かに赤くなっていたことに気づいてはいないのだろう。

その姿は成人女性に満たないような、幼いが嬉しいことを必死に隠している子供のようでバウデンも嬉しくなる。

装飾品を付けないことは知っていたが、バウデンの魔力を込めたものを何か持っていて欲しかった。

普段は少し乱雑に服を脱ぎ捨てたり、ぽいっとものを投げたりするスーランがいそいそと大事そうに袋にしまい、そっと耳飾りを置く姿にバウデンは温かく優しい何とも言い難い様々な気持ちが溢れる。

怠惰なスーランも。
幼いスーランも。
全てが愛しいと心から思った。



************************



翌日の周年式典は三部隊全てが厳重警戒していたからか、一番危険だとされていた国王陛下の挨拶も特に問題も起きず滞りなく終えた。

だが式典後の周囲を怠るべからずと、それぞれが動いていたのだが。


まさか王宮内である程度人の出入りを厳選し選別されているはずの、ある意味安全な場所から怪しげなローブの輩が出てくるとは予想していなかった。


「貴様のせいで私は終わりだ!!共に堕ちろぉぉぉっっ!!!!」


ロンダース国の元愚王と同じ髪色。頬が痩けぎょろりと動く窪んだ目は見た目も精神も最早まともではないことは確かだった。

元愚王の妾の子だった男はそう叫んでからぶつぶつと何かを唱えた後、持っていた短剣で首を掻っ切った。そして残り二人も続いて首に短剣を突き刺した瞬間。

噴き出す大量の血飛沫からどす黒く悍ましい魔力の織が顕現しバウデンは目を見開いたが、すぐに魔力を動かして重力魔術を編み、ガブリアルノに向けて突進してくる魔力に放った。

ドォォォォン、ズシャァァァァと耳を劈く爆音で周囲が揺れる。

懸念していた体外での重力魔術も効果はあるようだ。バウデンは即座に周囲を見回して叫んだ。


「ここは我ら魔術隊が食い止める!ベイガー!国王陛下の御身の死守!!カルロ!周囲の状況把握と沈静化、箝口令を!!」
「「御意!」」


直ぐ様二人の統括総帥は行動に移し始めた。


「周囲に呪いが散らないように細心の注意を払え!重力魔術で一気に消滅させろ!!」


コーネイン、ホーイェン含む精鋭魔術師が同時に返事をし蔓延る呪いを駆逐し始めた。

それぞれが重力魔術で応戦していたが、呪いが上手く纏まって仕留めることが困難であり、徐々に分散した呪いが周りを攻撃し始めた。


「!!っぐ!」


ここでまずホーイェンが体内に侵入され膝をつく。


「ホーイェン!!」
「コーネイン余所見するな!私が対処する!」


同時に数名の魔術師がバタバタと倒れ蹲り呻き藻掻いている。


「呪いを受けていない者は駆除を続けろ!!」


バウデンはそう叫びながら、体内に重力魔術を構築し、手の先に攻撃用の魔力を込めホーイェンの胸に当てた。

すると恐ろしい速さでバウデンの体内に悍ましい呪いが一気に侵し、バウデンは息を止めた。


「っ…!」
「!っ総帥!!」


瞠目したホーイェンに「コーネインと共に周囲を蔓延っている呪いを駆除!」とだけ伝え、バウデンはのたうち回っている魔術師達の胸に次々に手を当てていく。

物凄い勢いでバウデンの体内に侵出してくる小賢しい呪いを球体を作った重力魔術の中に押し込め消滅させていくが、漏れた呪いが周りの魔力を食い散らかしていく。

何とか復活した魔術師達はふらつきながらもコーネイン達の指示で残りの呪いを対処していく。


「……く、ぐぅっ…」


思った以上の量を取り込んだバウデンは、魔力をフル回転させ応戦するが少しずつ呪いに圧されてくる。

球体の重力魔術を編んでも周りから喰い殺そうと猛攻撃を受けるのでなかなか構築し切れない。

ある程度周囲の呪いを駆逐できたのか、テゼルがバウデンの傍に飛んできた。


「総帥!!!」
「――――っ、…コーネイン、ホーイェン…微々たるも呪いを残すな。再度周囲を徹底して確認…」
「承知」
「御意」


急激に暴れまわる呪いにバウデンはついに意識が混濁しその場で膝を付く。ぐわんぐわんと頭に激痛が奔り、バウデンの意識がどんと落ちた。




目覚めない意識の奥底でバウデンはそれでも呪いに抗っていた。

未だに体内の魔力を食い荒らす奴らに無意識に重力魔術を編み応戦するが段々と劣勢になり苦戦していく。

既にバウデンの魔力は半分を切り、並行してどんどん魔力が削られていく激痛に都度息を止めながらも流し何とか対応していく。

編み込んだ髪と装飾品に貯めた魔力が変換されて体内に送られるのを片っ端から呪いが喰っていくのを臍を噛みながら、それでもどうにか持ち堪えていた時だ





あなたにおすすめの小説

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

年下で可愛い旦那様は、実は独占欲強めでした

由香
恋愛
政略結婚で嫁いだ相手は―― 年下で、可愛くて、なぜか距離が近すぎる旦那様でした。 「ねえ、奥さん。もうちょっと近く来て?」 人懐っこく甘えてくるくせに、他の男が話しかけただけで不機嫌になる彼。 最初は“かわいい弟みたい”と思っていたのに―― 「俺、もう子供じゃないよ。……ちゃんと男として見て」 不意に見せる大人の顔と、独占欲に心が揺れていく。 これは、年下旦那様にじわじわ包囲されて、気づいたら溺愛されていた話。

もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。 そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。 そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。 「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」 そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。 かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが… ※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。 ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。 よろしくお願いしますm(__)m

【R18】熱い夜の相手は王太子!? ~婚約者だと告げられましたが、記憶がございません~

世界のボボブラ汁(エロル)
恋愛
激しい夜を過ごしたあと、私は気づいてしまった。 ──え……この方、誰? 相手は王太子で、しかも私の婚約者だという。 けれど私は、自分の名前すら思い出せない。 訳も分からず散った純潔、家族や自分の姿への違和感──混乱する私に追い打ちをかけるように、親友(?)が告げた。 「あなた、わたくしのお兄様と恋人同士だったのよ」 ……え、私、恋人がいたのに王太子とベッドを共に!? しかも王太子も恋人も、社交界を騒がすモテ男子。 もしかして、そのせいで私は命を狙われている? 公爵令嬢ベアトリス(?)が記憶を取り戻した先に待つのは── 愛か、陰謀か、それとも破滅か。 全米がハラハラする宮廷恋愛ストーリー……になっていてほしいですね! ※本作品はR18表現があります、ご注意ください。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

好きな人が嬢を身請けするのが辛くて逃げたら捕まりました~黒服の私は執着騎士に囲われる~

こじまき
恋愛
騎士が集う高級酒場「夜香楼」で女性黒服として働くソフィアは、客である寡黙な騎士ゼインに恋していた。けれど彼が指名するのはいつも人気花嬢イサナで、身請けも近いと予想されていた。 ソフィアは、叶わない想いにと嫉妬に耐えきれず、衝動的に店を去る。 もう二度と会うことはないはずだったのに、身請けした嬢と幸せに暮らしているはずの彼が追ってきて―― 「お前への愛は焼き印のように刻まれていて、もう消えない」 ――失恋したと思い込んで逃げた黒服が、執着系騎士様に捕まって囲われる話。 ※小説家になろうにも投稿しています

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。