余命の残りを大切な人にくれてやります

きるる

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鷹の囲い込み 3





「今夜で終いか…」
「もう十分ではないですか」


食事と入浴を終えスーランはバウデンと夫婦の寝室でぬくぬくと寝台の中で温まっていた。

結局九日目までスーランは、それこそ三十八年分の羽目を外したバウデンの雄々しくも美丈夫ぶりと無邪気を兼ね揃えた猛攻に服従してしまっていたが、最終日だけはどうにかゆっくりとのんびり怠惰に過ごしたいと元のスーランの本質の願いをようやく叶えて貰えることとなった。


「十分なわけあるか。三十八年分だぞ」
「いや、そこに私は居ないではないですか」
「スーランに出逢うまでの三十八年分だ」


こういう時のバウデンの能弁はスーランですら敵わない。もう最終的には『はいはい』で済ますしかないのだ。


「今までは殆ど休みなんぞ取らなかったが、これからは定休をしっかり取るか」
「あ。それは賛成です。ちゃんと休息してこそ仕事に繋がるもんです」
「だな。スーランと同じ日に取るとしよう」
「え」
「何だ」


たまにはスーラン一人でのんびりとしたい日も正直ある。元々は怠惰もあるが周りの人に合わせることがとても苦手だという前提もあったりするのだ。

しかしこれを言って良いものか悩んでいるとバウデンがふっと息を吐いて、スーランを抱き寄せて足を絡めた。


「お前は一人の時間も大切にしそうだな」
「…まあ」
「好きにすれば良い」
「え、良いんですか?」
「ああ。俺は傍でそれを見ているからな」
「…」


開いた口が塞がらないとはこのことだ。スーランの呆けた表情にバウデンはくすりと眉を下げながら微笑み額に口を落とす。


「冗談だ。俺の唯一と理解しちゃんと俺の元に戻ってくれば良い」
「私はどれだけ放蕩者と思われているんでしょう。帰る家はいつも一緒でしたよ」
「お前の帰る場所は俺の傍で、一番心地良い場所はここだ」


それに関してはスーランもしっくりくるほど納得が出来たので頷いてバウデンの心地良い体にくっついて大好きな心音を聞く。


「キリウとドリス達が言ってました。気紛れで怠惰な猫がようやく御主人様を見つけたみたいだと」
「ふはっ」


バウデンの噴き出す声にスーランは目を丸くする。


「声に出して笑った…」
「っくく、そうだな。初めてかもしれん」


バウデンが軽く口づけをしてくる。深くなることはなく軽いものを何度も何度も。


「スーランが居れば俺は色々な感情や表情が表に出るのだろうな」
「まあ、折角人に生まれたんですから色々な経験をした方が良い…ですかね」
「ふっ…だな」


そう言ってバウデンはスーランを抱き枕の如く丁度良い位置に動いて、とても安心したような溜息を吐いた。スーランはこの溜息がとても好きだ。


「バウデンのホッとしたような溜息好きです」
「…そうか。俺もお前が胸元に寄り添って満足気に溜息を吐くのが好きだ」
「っ…」
「気持ち良さそうに涎を垂らして眠るのも、大きな口を開けて食事を待っているのも、俺が感情的になると喜ぶ様も」


スーランは頬が熱くて顔を上げられなくなった。それでもバウデンの言葉は止まらない。


「普段はぼんやりしていても精製や魔術への真摯な姿勢も、自堕落なのに無意識に相手への配慮をするところも、気持ち良いことに素直なことも、……俺に感じて子供のように泣いてしまうスーランの、全てが好きだ」


どうしてバウデンの前ではこうして涙腺が弱くなってしまうのだろう。

どうしてバウデンの言葉がこんなにも心に響くのだろう。


それはスーランもバウデンと同じ気持ちだからだ。


スーランは潤んだ瞳をバウデンに向け、頬を包んで口づけをする。
心からこの人を愛しいと大好きだという気持ちが溢れる。


「ん、スーラン…?」
「…私の、バウデン」
「っ…」
「私の唯一。愛おしい」


そう言って驚いて少し口が開いたバウデンの口の中に舌を入れる。


「っ、…スーラン…明日に備えて寝るのではな―――っん」


黙り給えとばかりにスーランは舌を動かしながら、足も動かして少し兆し始めているバウデンの雄を擦る。


「…これください。ムラムラしてきたんで。明日に支障が出ない程度に統括総帥なら加減出来るでしょう」
「…お前、な…」


そしてこの言葉も大好きだ。

口づけがバウデン主導に移り、スーランは愛しい伴侶の熱に浮かされていった。





スーランの頭に頬を寄せながら、最愛の伴侶がすやすやと規則的な呼吸を立てていた。
今夜は濃厚ではあったがスーランの明日からの体調を考え一度だけの性交でそのままバウデンは眠りについたようだ。眠る表情は精悍さが潜まりあどけなく見える。

それなりには体力を使ったスーランだが、バウデンが眠るまで頑張って起きていたのには理由がある。

ゆっくりと顔を上げバウデンの首元にお返し…いや逆襲の如く頑張って口を窄ませてしっかりと鬱血痕を付けた。それはバウデンの魔術服から絶対的に隠せない場所であり、スーランはしてやったりと鬱蒼とした笑みを溢し胸元に潜り込んだ。





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