余命の残りを大切な人にくれてやります

きるる

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番外編:使用人は見た!公爵家夫妻の情事と癒しの現場【永久婚姻編】2



「―――って感じでやると効率良いんですよ」
「わかる!頭の中に大体の流れを入れておいてもイレギュラーってやっぱりあることですもん」
「でも普段していることに真摯にいつも動いて誇りを持っていれば難なく対応できる術はありますよ」
「その中でもやっぱり素早く終えるだけでなく、尚且つ正確にやることで屋敷を綺麗に保てて気持ち良くより仕事ができるんです」
「へぇ。それぞれが何となくでなく、効率良くも応用も効かせてやるのは魔術と一緒なところがあるよねぇ。それでもさ、効率良くって経験だとは限らないでしょ?」
「そうなんです!それが難しいこともありますが――――」


とある昼下がり。
使用人が休憩する専用の部屋にスーランが買ってきた菓子の数々を贈り投げたことから始まった。

グェンも休憩に入ろうとすると、何やら中では仕事に関する話で盛り上がっている。覗いてみるとスーランが菓子を買ってきたらしく、テーブルにぶち撒けたように広げており、それを皆でわいわいしながら摘んでいた。

スーランはあまり外出をしないのだが、稀に街に出た時には必ず使用人にお土産と称して沢山の菓子などをこうして持ってきては使用人休憩室にお邪魔して話を聞いている。


「なるほどー。それぞれの仕事は単独でも屋敷ってでかい器を軸に動いているわけだから、周りを配慮しながらてきぱき動けるのかぁ。流石ホークル家の皆は凄いねぇ」


スーランがおべっかを話さないこと、彼女の口から出るものは全て事実のみであることを皆知っている。だからこそたまにこうして真正面から褒められて嬉しくない使用人はまずいない。しかも本当に目をぱっちり開いて楽しそうに話を聞くのだ。

バロアス国の薬開発の先駆者なのに驕らず下の者を見下すことを一切しない。
皆と同じ茶器で茶を飲みながら、皆と同じように手を伸ばして菓子を食べている。

公爵夫人らしくないことこの上ないが、スーランのスーランが故の独特な場の作り方に使用人達の口は軽くなり、あれこれ話して使用人同士互いに高め合っていっているのだ。

グェンはふっと微笑み、一呼吸いれてから自分もその話に参加した。



***************



その日珍しくスーランの体調が少し思わしくなかった。

熱はないが倦怠感が少しあるとのことだが、部屋で食べると思った食事はちゃんと食堂で食べるらしい。バウデンの抱っこで訪れたスーランはスーランの席に座らしたバウデンを恨みがましい目で見ている。

そして自分の席に座ったバウデンの元にとてんとてんと緩慢な動きで移動したスーランは、んしょんしょとバウデンの膝の上によじ登り、「手が上がらないんで」と今しがた手を持ち上げバウデンの肩を持って登っていたことなどおくびにも出さずに宣った。

僅かに眉を下げたバウデンだったが、不調のスーランへの心配が勝ったのか額と頬に手を当てて「熱は上がってないな」と言いながら「先陣にトマト仕留めてください。苛ついて熱が出ないように」と憎き敵のように指差すフルーツトマトをぷすりと刺し口に入れてあげていた。

最近ではちょこちょことこのような膝乗り給餌が増えてきており、食堂で仕えている使用人はこの日に当たると「癒され日に当たった」と話題に上がるほどたった。

遠慮のない大口を開けて待っているスーランの姿は本当に幼いというか、可愛らしい。
藍色の垂れ目をとろんと瞑り待っている姿はバウデン始めその場に居る使用人もついつい口を覆ってしまいたくなる。

だが、スーランもされるがままではないようで、んしょーっとパンに手を伸ばし、くるみパンを千切りながらバウデンの口に「お返しにでかいくるみあるところあげます」と食べさせている光景がただただ尊い。

前はやってやってばかりだったスーランが、今ではバウデンが食べやすいように少し座る場所をずれたり、届きにくいものを率先して取ったりと無意識の配慮をするようになっていた―――――膝上に乗ることが前提ではあるが。

そしてやはり今日に関しては少し不調なのか途中でうとうとし始めてしまい、バウデンは首元にスーランの頭を寄せて固定させながら、食事を少し早めに食べ立ち上がった。

去り際に「今日はー上は難しいんで、夜はバウデン主導――――もが」とスーランの言葉を途中で手で覆ったバウデンが「わかったわかった」と答えながら颯爽と食堂を去る姿も相変わらずだ。


どんな時でもいつも通り仲睦まじい二人である。





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