25 / 129
前回のお礼を 1
しおりを挟む後ろから抱きついている手と足をゆっくりと外し、リアは浴室でさっとシャワーと浴び、テーブルに宿代の硬貨を置いて部屋から静かに出て階下を降りた。
「仕留めたか」
いつものデュークの言葉。
「今回は楽勝」
「そうか」
「んー物足りないなぁ」
「まだいくのか」
「んーでも時間的に微妙」
今夜の相手は雄の形や技巧はまあまあだったが、如何せん早かった。リアの名器が云々と言い訳を並べてはいたが、それにしても早すぎた。二度致したがリアとしては物足りなかったのだ。
「止めとく。いつものちょうだい」
デュークは頷いて背を向けた。
「流石にそろそろ食い尽くして来たのかなぁ」
リアは出されたマンダリンの酒の薄いカクテルを飲みながらぼやく。
「そうか?」
「何だかね。満たされたって感じが無くて」
グラスの淵をくるくるなぞりながらリアは最近の事情を話す。
「魔力目当てなら良いんじゃないか」
「そうなんだけど。どうせなら満足してスキップ踏んで帰りたいし」
「裏道とはいえ薄暗いんだからそれは止めろ」
「わかってるって。例えよ、例え」
イアンとの情事から、リアには珍しく連日ユニュイスに来ている。それはあの時の壮絶な快感を上回るまではいかなくても通常に早く戻したい気持ちがあったからだ。
それでもイアンとの性交は上位どころか今のところリアの中では断トツ一位だ。
それが何だか癪に障って仕方ないのもある。
「イアンか?」
「ん?」
「イアンとの後だな。リアが連日ここに来ることは滅多に無い」
デュークにはお見通しなのかもしれないが、リアは認めたくない。
「まあ理由の一つではあるだろうけど、単なる飽きなのかもなー」
「エリックの店で鉢合わせしたんだって?」
「そうそう。あれは吃驚したわ。今まで会わなかったことが不思議」
「問題ないか」
そう聞いてくれるデュークのカクテルのような鮮やかなマンダリン色の片目は今夜も薄暗い店内でも美しい。
エリック同様、彼もいつもリアを気にかけてくれる。それが身体の関係無しにしてくれるのだから有り難い限りだ。
「うん。あの後会いにきたけど問題ないよ」
「…会いに来たのか」
「そ。流石特殊部隊さん。髪の香油を作ることが条件で」
実際はそれはついでで、しっかり他にもあるのだが。
「問題ないか」
リアがこの店に来た時から、いつもデュークが言ってくれる言葉。これがどれだけリアの心の安定を保たせてくれたことか。
エリック共に雄なのに雌として欲しがらないこの二人をリアは大切だからこそこれ以上迷惑をかけたくない。
「大丈夫。もう大人だよ」
リアは硬貨をカウンターに置いて立ち上がる。
「帰る。デューク、またね」
「ああ。裏口から帰れ」
「はいはーい」
これもいつも彼が言ってくれる言葉。
リアが安らげる大好きな場所だ。
********************
「ポック、だいぶ様になってきたんじゃない?」
「そうですか?シュナさんにそう言ってもらえると自信つきます!」
「シュナちゃん、まだまだだぞ。甘やかさんでくれ」
シュナは花の調達にいつもの花屋に訪れていた。
今日は朝一でポックは祖父のチェギーと仕入れに行っていたらしい。
「花の咲き方や蕾の状態、苗の良し悪しがまだまだ分かっとらん」
「お祖父ちゃん何年やっているんだよ。僕はまだ数年、お祖父ちゃんは数十年だよ!」
「うふふ。まだまだ伸び代があるからそう言ってくれているだけよ」
ダメ出しをするチェギーの表情も言い返すポックの表情もなんやかんや言いながらも楽しそうだ。
「じゃあ、まだまだ任せられないチェギーさんは腰をしっかり治してから真っ直ぐ仁王立ちして見てあげないとね」
「う、うむ。そうだな」
「そうだよ、お祖父ちゃん。薬が不味いとか言ってられないよ」
「こら、ポック」
「あはは」
楽しい会話に入れてもらいながら、シュナは次に欲しい苗などの注文をして、切り花を幾つか選んでから店を出る。
115
あなたにおすすめの小説
【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました!
※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)
狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。
突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。
だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。
そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。
共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?
自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―
喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。
そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。
二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。
最初は手紙も返ってきていたのに、
いつからか音信不通に。
あんなにうっとうしいほど構ってきた男が――
なぜ突然、私を無視するの?
不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、
突然ルイスが帰還した。
ボロボロの身体。
そして隣には――見知らぬ女。
勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、
私の中で何かが壊れた。
混乱、絶望、そして……再起。
すがりつく女は、みっともないだけ。
私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。
「私を簡単に捨てられるとでも?
――君が望んでも、離さない」
呪いを自ら解き放ち、
彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。
すれ違い、誤解、呪い、執着、
そして狂おしいほどの愛――
二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。
過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる