トラウマ克服の為にクズに徹します

きるる

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破裂する前に空気抜きを 1

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シュナは数月ぶりに友人のスーランと大衆酒場に来ていた。

スーランは公爵家のメイドにより腰まである琥珀色の長い髪を綺麗に編み込まれ、一つの三つ編みに組み込ませて横に垂らしている。無頓着で本人はしたことがない化粧は薄めでスーランの元々の素質をこれでもかと引き出している見事な腕前だ。

その髪は艷やかで、ずっと昔からシュナが作っている髪の香油を使ってくれている古客でもあるのだ。

大してシュナは夜ではあるが、リップ以外の化粧をせずに服装も『シュナ』のままだ。少しだけ伸びた髪はハーフアップして後ろで留めてあるだけ。


「今回も沢山作ってくれてありがと。マジうちの専属香油師になってくれ」
「あはは。こちらこそご贔屓にありがと!スーランだけでなく公爵家の面々にも使って貰えるなんて有り難い限りよ」
「だってそこいらのものより断然香りも質も最強。幾ら大事な友人だからってその辺は忖度なく言うし」
「ふふ。今後もそう言われるように精進します」


エールで乾杯し、最近スーランの伴侶から教えてもらったというお薦めの蒸留酒を二人で瓶ごと頼み、既に半分近く減っている。


「美味しいとは思うんだけどさ。酒のこれってものが相変わらずわからんのよ。酒は酔う為にあるからね」
「スーランは前からそうだよね。公爵様は蒸留酒好き?」
「うん。何か味わいながら飲んでるよ。さっさと飲み終える私を見て毎回複雑な顔してるけど」
「あはは!スーランはスーランだねー」
「シュナは最近も良くユニュイス行ってるの?」


元常連のスーランは番絆の伴侶と婚姻してからは、もう一夜専用のユニュイスには顔を出していなかった。


「行ってるよーデュークがもう顔忘れそうって言ってた」
「まあ、もうユニュイスには行かないよね。それ専用だし。違う所ではまあそのうち会いそうだけど」
「そうなんだ。たまには顔見せてあげなよ。エリックにもね」


シュナは酒場のマスターとしてのデュークしか知らないが、エリックと繋がっているのだから、恐らく他の顔があるのだろう。そこはシュナには関係ないことだし、知ろうとも思わない。

デュークはマンダリンのカクテルをずっと作ってくれるマスター。それでシュナには十分なのだ。


「あー…エリックはこの前久々に会ったな。私の職業柄ちょっと聞きたいことがあったみたい。あれはどっちかって言うと王子寄りの案件なんだけどさ。私単独で請け負うなら高いとは言っておいた」
「確かに!スーランの専属料ってやつね。もう一人は研究熱心な王子サマだっけ」
「うん。研究しか興味のない王子」


濃度のある蒸留酒を飲みながらちょっと味の濃いつまみを摘みつつ、ほろ酔いが心地良くなる。そんな頃にスーランがふと言ってきた。


「シュナの匂い」
「え?匂い?」


香油をつけ過ぎただろうかと髪を引き寄せてみるが、「そうじゃなくて」とスーランが言う。


「人族はあまりわからないと思うけど私はちょっとだけ魔力量多いから何となく感覚で」


スーランが蒸留酒をくぴりと飲む。


「前のシュナからは色々な雄の匂いがした。でも最近は一つの匂いが濃く感じる」


その言葉にシュナは目を丸くする。

確かにあれからもシュナはユニュイスに行っている。でもここ最近はそのまま帰ることが増えているのだ。

その原因は今ではもう嫌でも分かっていた。





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