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強くなければいけない 3
しおりを挟むそしてついに目標の十杯目…マンダリンのカクテルを飲み始めた時には、リアはそれまでの酒の分でかなり出来上がっていた。
「んーこれからどうしようかなー」
「今日はもう帰れ」
「常連を邪険にしちゃ嫌。抱っこ」
両手を差し出して見ると、珍しくデュークがマンダリン色の瞳を丸くする。
「ふふ。冗談。怠惰な友人の真似してみた」
「…変わったな、あいつは」
「うん。良い意味で変わった。とても幸せそうで本当に嬉しい」
「…リアは変わらないのか」
「無理だね」
リアは即座に否定した。
「何故無理だと?」
隣に居たターニャが尋ねてくる。
「ん?何、ターニャは私のこと気になってきたの?上行く?」
「行きません。何故そんなにすぐに無理だと言ったのか気になっただけです」
「なーんだ。ターニャ色眼鏡しているけど絶対綺麗だから試してみても良いかと思ったのに」
「ノーマルなので」
「あはは。私もだよー。―――――――私は強くなきゃいけないの」
リアは残り半分になったマンダリンのカクテルの淵をなぞる。
「一人で強くならないと…一人で挑まないと終わらないの。絶対負けないんだ…最後まで」
「―――何から?」
「…トラウマ」
そこでリアはちょっと酒が入り過ぎて余計なことを言ってしまったと我に返る。
「大したものじゃないけどね。でも強かな阿婆擦れ目指しているから」
ターニャの表情がわからない色眼鏡を見ながらリアはにこりと微笑む。
「―――――――そろそろ私は帰ります」
ふと後ろの扉を見たターニャが立ち上がりながら酒代の硬貨を置こうとしたのでリアは止めた。
「ここは私の奢り。座らせたの私だからね。また機会があったら会いましょう」
そう言って微笑むと少し首を傾げたターニャが「ご馳走様です…多分会えそうな気がします」と言ったのでリアはにっこりと微笑みを深くした。
ターニャが出て行き、リアはそろそろ本格的に酒が回ったなと硬貨を置いて「帰るわーまたね」と立ち上がると、ぐらりと身体が揺れた。
咄嗟にカウンター越しに手を掴んだデュークが「ギムレットをあれだけ飲めば時間差でくる」と言い、一度リアを椅子に座らせてからカウンターから出てきて抱き上げてくれた。
「あれ。デューク?さっきのは冗談よ。スーランの真似しただけだってば」
「今日に限っては裏道を一人では通せん。送る」
「大丈夫だって。スキップで帰らなければ―――」
「何してんの?」
そこで表の扉が開き、軽快でない珍しく這うような低い声が聞こえてリアは振り向くと、そこにはにこやかでない無表情でキャメル色のロングコートを羽織ったイアンが立っていた。
「あれ、いあん?どした?」
「シュ…リアこそ何でデュークにーーー」
「飲み過ぎだ。ギムレット八杯」
デュークの告げ口にリアは何で言うんだと彼の口を覆い、ついでに眼帯の付けていないマンダリン色の瞳も覆おうとすると、即座に体がふわりと浮き同じ高さのイアンの視線が。
「何で抱っこされてんの」
「いや、私が頼んだんじゃなくてこれはスーランの真似――」
「千鳥足で真っ直ぐに歩けない。これじゃ裏道では帰れない」
「じゃあ僕が連れてくよ」
イアンはそれだけ言って颯爽と扉に向かっていったので「デューク、またねー」とリアはいつもの言葉で手だけ振った。
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