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イアン 2
だがイアンは特定の付き合いを誰ともすることはなかった。雌というものは身勝手で簡単に裏切り、表の皮とは裏腹に悍ましく醜い生きものであるという認識になっていたからだ。
それならばこちらも性欲発散の目的として、ちゃんとお互い合意の上で性交することを徹底した。
案の定イアンに夢中になる雌は幾らでも湧いてきたが、その度に醜いものと再認識させてもらい性欲発散の道具にしか見られなくなっていった。
こんなことを繰り返しているので巷では女性を食い散らかす『正統派のクズ』という異名をもらい、よりヤりやすくなったとイアンは喜んだくらいだ。
その後ローアンに番が現れたことで、イアンは本当に犯されて良かったと心から二人を祝福し、イアンは自ら離れに移ることにした。
兄と番絆との仲睦まじい様子を邪魔したくはなかったし、過去のことで変に気遣われるのも嫌だったからだ。
同時期に王都の街近くに屋敷に帰るのが面倒な時と、雌を連れ込む専用の部屋も借りてイアンは悠々自適な生活を送っていた。
唯一のトラウマと言うならば、元々眠りが浅かったことが余計に浅くなり、雌と事後のあとも横になって目を閉じるくらいでぐっすりと眠れることなど無かった。
部屋借りに難色を示したのは、イアンをあの時助けてくれた専属メイドだった。
彼女はイアンが特殊部隊として、将来を見据え始めた時に父親と共に社会経験として、とある奴隷市場に赴いた時に出会った。
彼女はバロアス国には珍しい蠍族の一人で、以前から仲良くしていたエリックの右腕の人物と同じ特殊な瞳をしている。
蠍族は類稀なる能力で希少価値が高く、その昔奴隷として囚われ道具として使われていたらしい。奴隷市場の檻でどんな相手にも殺伐とした視線を向ける彼女の特異な目。
それが気に入ったイアンは父親に我儘を言い、その蠍族の末裔の一人、ターニャを引き取ったのだった。
「定期的に掃除だけは伺いますが、ちゃんと帰ってきてくださいよ。イアン様が居ないと私の仕事がなくなるんで」
可愛い言い分につい噴き出してしまうが、微笑んだところを見たことがないターニャはイアンを雄と見ない貴重な存在で、日々の生活の様子から忠誠を誓うようになった変わり者だ。
だがそこそこ口煩いので辟易しながらも、雌の視線を向けないターニャとはなんやかんやで仲良くしていた。
その後イアンは無事特殊部隊に入り、学生の頃から馬の合う親友のフェリウスと共に任務に赴いてはそれなりに成果を出し楽しい生活を送っていた。
フェリウスは黒豹族で特殊部隊統括総帥を父に持つレオダッド侯爵家の嫡男だ。
癖のない漆黒に輝く髪に銀色の瞳。イアンとはまた別の美しさと色気を兼ね揃えた青年だ。
黒豹族は代々特殊部隊に属し、フェリウスの能力は特殊部隊に特化しているといっても過言ではないくらいの身体能力を持つ。
ピーフォック家と系統は違うが、国の諜報や裏で暗躍する動きに適しているのだ。
イアンは世渡り上手でうわべの付き合いが上手く、狡賢く頭が冴える。対してフェリウスは身体能力と判断力が秀でており、そんな二人が共に任務に赴くと成功率は格段に上がった。
相手を屠る能力は圧倒的にフェリウスが上だが、イアンは拷問を得意とする。
甘く微笑む顔で行われる悍ましい拷問の数々はピーフォック家直伝である。フェリウスすら内容によっては眉を寄せて嬉々とやるなと言われるくらいだ。
新人当初は色々な場所へ遠征に赴き、戦闘や小さな任務をこなした。戦いで興奮すると滾りやすくなるので、そういう時は地方の娼館で発散していた。
特殊部隊は基本王国内よりもその周辺での任務が多い。イアンは次男であるし、伯爵家はローアンがいるのでピーフォック家は安泰だ。
この先もずっと特殊部隊に属し、時折旅のようにあちこち出向けることが楽しいので、性欲がなくなるまで適当に発散しながらこのまま独り身でのんびりが一番良いとイアンは思っていた。
唯一の番ならばそのものの考えが変わるかもしれないが、今のイアンにはどうしても誰か一人という考えが無い。
そもそも雌への悍ましさが消えないので難しい。それに番に会える可能性自体そう無いこともわかっているので、この年で既に余生を楽しもうと考えていた。
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