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イアン 11
しおりを挟むはあはあと息を乱しながら意識を失くし、こてんと横になったシュナの眠る顔は本当に二十代前半、下手したら十代後半でも通用するくらいだ。
紅潮した頬を撫で身体中の滑らかな肌を堪能しながら、ふとこんなことも他の雌にしたことないなとイアンは気づく。
(靡かないのと、煽ると好戦的な感じが新鮮なのかな。ある程度やったら飽きが来るかもしれない。まあ次回は確定してるけど)
撫でているうちにイアンも眠気が襲い、シュナを抱き締めながら掛布をかけようとすると、シュナがくるりと寝返りをうち背を向けた。
そしてゆっくりと膝を抱えるくらいに丸くなる。
何かから全てを拒絶するように。
何かから全てを守るように。
(…癖?それとも―――)
そう思いながら滅多に誰かと居て睡魔がくることも無いイアンは背を向けたシュナを抱き寄せて目を閉じた。
「―――――――、ん、…ぅ」
小さく唸る掠れた声にイアンは目が覚めた。
(…やっぱりシュナが居ると不思議と眠れる…、僕。ラベンダーの香りのせい?――――あれ)
イアンの目が覚めた理由は声が聞こえたからだ。そしてその声はシュナから発せられている。
起きてるのかと思ったが、シュナはイアンが眠る前と同じ背を向けて丸まったまま。
珍しく勘違いかと思った直後だった。
シュナの身体が更に蹲るように丸まり、ぐぐっと強張らせるように力が入る。
イアンが起きたのかと声をかけようとした時。
「…?…シュ――――」
「っ、ゃ…―――だ…―――持ち悪い…っ……ぅ、止め―――っ…!」
違う。夢だ。
ビクリとシュナの身体が跳ねた。
息を止めていたのか、荒い息遣い、鼻を啜る音が静かな部屋に響く。シュナの身体は小刻みに震え少ししてから自分の口を覆う行動。
イアンは声をかけようと思ったが、何となくシュナは見られたくないと思うような気がして、前回と同じく腰に腕を回したまま眠っている振りをした。
だが口を覆いながら呼吸を整えているシュナにイアンは目を閉じながらも、無性に抱き締めてあげたくなるが耐える。
少し震えた手がイアンの腕を退かし、緩慢に動きながら寝台からずり落ちるように降りて、その場で蹲ったシュナが深呼吸をする音。
肩を上下させながらゆっくりと落ち着かせるような呼吸と動作。
その姿は『悪女』とは正反対のまるで怖い夢を見た後の『幼い少女』のようで。
怖い夢を見て現実ではないと言い聞かせているかのような後ろ姿。
深呼吸から聞こえてくる喉が震える音。
そして頭を抱えて更に蹲ってもっと小さくなる身体。
あまりに頼りない、イアンの知らないシュナの『もう一つの姿』だ。
それを薄目で見ていたイアンは自分の呼吸が微かに乱れていたことに気づき、すぐに戻し目を閉じる。
ようやく落ち着いてきたのか、呼吸が安定し後ろを振り向く音。そしてほっと溜息が耳に届く。立ち上がりとてとてとゆっくりと浴室に向かう足音。
イアンはゆっくりと瞼を上げ浴室での流れる水音を聞きながら考える。
(起きて尋ねる?―――いや、今はしない方が良い。シュナはきっと大きな壁を作る。…まずはエリックだ)
そのままイアンは眠れないとわかってはいたが目を閉じた。
***************
「興味本位の気分とノリなら、これ以上関わらないで」
後日、イアンが遠征帰りにエリックに報告をした後にシュナの悪夢を見ているらしき現状を話した直後に言われた言葉。
イアンは首を傾げながらエリックを見る。
別に興味本位で聞いたのではない。
イアンはあの時、シュナの儚く弱々しい後ろ姿を見て咄嗟に脳内に思ったことは「安心させてあげたい」だったからだ。
それは雌に対して思ったことが一度もない感情だった。
適当に暴いて放ってしまおうと思ったわけではない。イアンなら何か解決の糸口を見つけてあげられるかもしれないと思ったからだ。
そしてそんなことを考えた自身にも内心吃驚している。
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