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害悪の全ては虚構也 4
しおりを挟むアーロは腫れ上がった目元をこれでもかと見開き、目の前の円形から見える部屋の様子を瞬き一つせずに見ていた。
そこに映っているのはアーロの愛しのリアと無駄に顔の整った華やか過ぎる男。
何故かアーロのリアが仲良さげに話しながら男に抱きかかえられ、頬に口づけされていることに激昂するが、ふとリアがそれに対し受け入れている様子に違和感を覚える。
あれは本当にリアか?と。
リアはとても難しい子なのだ。
アーロの愛情を当初幼かったリアは理解出来ずに、なかなか受け入れなかった。だからこそ素直になれる『おくすり』で手助けをしてあげたのだから。
それでもリアは身体は従順に開いても心が中々成長せずに、アーロを翻弄してくれた。勿論それを解していくのは愉しくはあったが、それでも僅かでも寄り添ってくれても罰は当たらないだろうと思っていた。
それでも目の前に映っているのはリアだ。
アーロが唯一彼女の中で一つだけ気に入らない箇所、バターブロンドの髪。
ジュリアとほぼ同じ色。媚びて擦り寄り女という武器を最大限に最悪な使い方をする阿婆擦れ。いつかあの髪色をアーロ好みにしようと思っていた。
十年以上前、媚薬密売の件でアーロに疑いが向けられようとし始めた頃。
ある仲間の一人がリアの態度に対して幼い云々以前に本当に嫌われているんじゃないかと酒の席で笑い話程度に言われた。
アーロは恐ろしい程に心が凍り、例え冗談だとしても許せずにそいつを首謀者として仕立て上げ、捕まった日の夜に牢番を暗殺者に変えて殺した。その男の戯言は許し難いことだったが、それで何とか自分に嫌疑を向けられずに済んだから許してやった。
だが。
目の前に見えるのはリアであることは確かなのに、何故そんなにもアーロにただの一度も見せたことのないような穏やかな表情で男に愛しそうに触れているのだろう。
それはアーロに対してするべきもののはずだ。
リアにずっと尽くしてきたアーロのはずだ―――――――。
アーロの疑問など関係なくリアは男と寝台で性交を始めた。
何故。
何故そんなにリアは嬉しそうに幸せそうに男を受け入れている?
それはアーロに向けるもの。
アーロだけのものだ。
男がシュナを覆って腰を巧みに動かしている。
まるで自分のものだと主張するかのように。
何よりもリアの表情が。
恍惚として快感と幸福に満たされている。
幸せそうに相手を見つめている。
アーロが見たことのない笑顔で。
何故。
それはアーロに全て向けられるものなのに。
リアはいつもアーロの雄をこれでもかと―――――。
ここでアーロは己の雄が全く反応しないことに気づく。
リアがアーロでない男を性交しているからか。いや、アーロはリアを見るだけでいつも滾っていたのだ。男が居たところでそれは変わらない。それなのにリアを喜ばす雄は全く反応しなくなっている。
何故だ。
そこでリアが果てて仰け反りアーロは瞠目する。脚を痙攣させながらも必死に男に絡みつき、身体を倒してきた男をそれは愛しそうに撫でている。
愛しい唯一に対する幸せそうな満たされた表情で。
アーロに向けるはず――――――。
アーロはただの一度も。
ミタコトノナイ、エガオ
アーロの脳内が目まぐるしくぐちゃぐちゃに様々なことが駆け巡る。
媚薬入りのホットミルクを飲ませた時のシュナの驚いた…恐怖のような表情。
沢山可愛がってあげたのに、いつも唇を噛み締めて顔を背けていた…嫌悪する表情。
身体を開いてくれる以外にアーロに会いにも近くにも…避けられていた。
一度も――――――――――微笑んでくれなかった。
(……え?私は、…もしかして…本当に、嫌われて…いた?)
そんな訳ない。あの子は難しい子で――――。
なら今目の前にある幸せそうに男と睦み合うリアは何だというのか。
(まさか――――――――う、…違う)
アーロは頭の中が最悪の事実に拒絶するかのように腕が折れていることなど忘れこれでもかと暴れ絶叫した。
「ぅぅぅぅうううううううううぁぁぁあぁぁぁぁああああ!!!」
目の前で未だに見せられるリアと男との『愛する者同士の性交』みたいなものが再度始まった。目を背けたいのに釘付けになって目が離せない。
(違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う……!!!)
アーロは頭を振り乱し、鎖をガチャガチャけたたましく鳴らしながらその円形の所に突撃する勢いで前のめりに暴れた。
その時近くで座っていた女が一言。
「お前は何一つ見てないし見られなかった」
その言葉にピタリと止まる。
「全部お前の身勝手なまやかし。この子の最高に可愛い笑顔は一生見られない」
エガオ――――――
リアがアーロに向けてくれたことは
イチドモナカッタ
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