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135.小学校最高学年後編10
しおりを挟む部屋を出てナルア達と少し距離ができたところでエルが尋ねてくる。エルなりに心配してくれていたのだろう。無表情を装っているが、いつもよりも少しだけ眉根が寄せられているし、口角も下がっているようだ。
「ちゃんと話せましたか?」
「ああ…振られてしまったがな」
「そりゃあそうでしょうね。ナルアには愛しの人がいるらしいですから。」
「…ああ、そのようだ。…だが、約束もできた。また会いに来てくれる、と。」
「それは良かったですね。」
「ああ、だから俺は必ずこの国を良いものにしてみせる。」
「ご助力します。」
「ありがとうエル」
「いいですよ。」
心強いな。エルが居てくれるなら俺はきっとやりきってみせるだろう。ずっと文句も言わずついてきてくれているのだ。俺がしっかりしなくてはな!くよくよしている暇などない。この国が廃れていっているのが分からない程俺は馬鹿ではないつもりだ。
「なぁエル、俺は第一王子につこうと思う。」
「…良いご判断だと思います。」
「…そうか…」
今の支持を失い力をなくした王を廃し、第一王子に王として立ってもらう。もとよりその計画はあったが、本格的にその計画に協力しよう。今の王のままでは、近いうちにこの国は崩壊するだろう。早めに隠居してもらうのがいい。
しかしながら、素直に従うとも思えない。武力行使をすることになるだろうな。けれどそれは問題ない。たとえ王が抵抗しようとも、魔道士団も、騎士団も第一王子派なのだから。そうなったのも第三王子がナルアに攻撃し、王が罰をくださなかったことが発端だが気付いてはいないのだろうな。
王族特有の傲慢さ故に、自身の言うことには必ず従うと考えているようだからな。この国は変わらねばならない。
「放課後、少しお側を離れます。」
「ん?まぁいいが、気を付けて行けよ。」
「はい」
エルはヨルクの許可を得て、側を離れナルア達の家を訪ねていた。最も用があるのはナルア達にではない。
「お邪魔します。ナルア達と同じクラスのエルと申します。」
「おう!ナルア達なら裏にいるぜ?呼ぼうか?」
「いえ、今日はコイルさんに用があって伺いました。」
「ん?んー…今は居ねぇけど…待つか?」
「ならばウェンさんはいらっしゃいますか?」
「おう、多分聞こえてるからすぐ来るだろ。」
「もう来たっすよ」
「お!じゃあ任せたぞ」
「はいっす。じゃあこっちに来てくれるっすか」
「はい」
ウェンさんについていけば、辿り着いたのはウェンさん達が住んでいるらしい家だった。部屋の中に迎え入れられたあたり、そこまで邪険にもされていないようで良かったと思う。
「お茶用意してあげるっすから、ちょっと待っててほしいっす」
「ありがとうございます」
「どうぞっす。…それで…話ってなんっすか?」
「…こちらの事情から話させていただきます。まずは自己紹介から。私は第四王子、ヨルク様の騎士をさせていただいております、エルと申します。」
「俺はウェンっす。」
「今回お話に上がったのは、簡潔に言えば我々に協力をしていただきたいのです。私は第四王子のお付になり、ずっと側で見てきました。小学校への入学し、ナルアたちと出会ったことで変わられ、今ではご立派になられたと思っております。その第四王子が第一王子につく判断を致しました。」
「なるほど。それで?」
「出来れば、王と第三王子の排除のご助力を頂きたい。」
「不敬罪っすよ?とはいえ俺しか居ないっすからいいっすけど。」
「あの時の恨み、忘れているとは思えません。…テスラ様にも話を通していただきたいのです。」
「…まぁ確かにあのクソ王やクソ兎は大嫌いっすよ。でも俺達は国を出るっすからね。正直この国がどうなろうがどうでもいいんすよ。」
「…そうですね…今日は帰ります。」
「検討はしておくっすよ」
「ありがとう、ございます。それでは失礼致します。」
「送るっすよ?」
「いえ、それには及びません。」
話をさせてもらうことは出来たが…反応はあまり良くないように感じた。これは失敗だったか…。いや、何もしないよりマシだろう。第一王子に付くものは多いので問題はないといえば無い。しかしそれでも仕えている主が傷ついて欲しくないと思うのは傲慢だろうか。
頭を振り、少し考え直す。第一王子のお考えもあるからな。あまり勝手は出来ないか。これ以上は…動かない方がいいだろうな。変に勘ぐられたくはない。痛くもない腹を探られるのは本意ではない。
望んだ結果は得られなかったが、元々分を弁えていない願いだったのだ。早くヨルク様のところに戻らないとな。おそらく今頃は素振りを終えて、騎士団と模擬戦でもしている頃だろう。私もさっさと戻って訓練をしなくてはな。
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