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東京デート
待ちに待った土曜日、沙羅は東京駅のカフェに着いた。
カウンターで抹茶クリームフラペチーノを受け取り、駅の通路に面したカウンター席に腰をおろした。
これから久しぶりに慶太に会うかと思うと、駅構内を行き交う人々を眺めているだけでもウキウキと
楽しい。
あの服が可愛いとか、バッグが素敵だとか、以前よりもファッションに興味を持つようになったのは、慶太と並んで歩く自分を想像してしまうから。
今日の服装はパイピングデザインのワンピースに大判のスカーフ、靴はグレーのツイードパンプス、自分なりにオシャレをしたつもり。
ストローに口を付け、ミルクの甘さと少しほろ苦い抹茶の風味を味わいながら、ふと顔を上げた。すると人混みの中に慶太の姿を見つける。
細身のスーツをパリッと着こなし、背の高さも相まって、まわりの目を引いている。
慶太も沙羅に気付いたようで、肩まで手を上げ合図してくれた。
それだけで、沙羅からは自然と笑みがこぼれ、小さく手を振り返す。
抑えきれない気持ちに背中を押され、ドリンクのカップを手に慶太へ駆け寄った。
「ごめん、待たせたみたいだな」
「ううん、私が早く着き過ぎちゃったの」
「もしかして、会えるの楽しみにしてくれた?」
慶太に笑いながら冗談ぽく言われ、図星を突かれた沙羅は、気恥ずかしさで顔に熱が集まる。
「そ、そう。楽しみだったの。慶太に会えるのが……」
最後の方はもにょもにょと口ごもってしまう。
すると、慶太は少し身を屈め、沙羅の耳元で囁いた。
「俺も沙羅に会いたかった」
耳から入る声に甘く蕩けさせられて、体中に熱が駆け巡る。
こんな人混みの中で抱き合う事も出来ない。それを沙羅は恨めしく思いながら、慶太を見上げた。
「もう、人のことドキドキさせて!」
こそばゆかったのか、耳に手を当てている。身長差で自然と上目づかいになった沙羅は、頬が赤く染まり、慶太の目には可愛く映る。
「俺も沙羅に会えてドキドキしているよ」
「ばか……」
耳まで赤くして、恥ずかしそうに沙羅はうつむいた。
クスッと笑い慶太は手を差し出す。
「さあ、行こうか」
「うん」
差し出された大きな手の上に手を重ねる。
「東京駅にギャラリーがあるなんて知らなかったよ」
沙羅が行きたいと言って指定したのは、東京駅の中にあるステーションギャラリーという施設だ。
仕事で東京に来た慶太を気遣い、疲れないようにとアクセスや混み具合を考えてココにしたのだ。
「私も初めてなの。長年、東京に住んでいるのに全然知らなかった。ホームページを見てみたら建物自体に歴史があって、美術品よりレンガに興味が出て来て」
「明治から大正の頃の建築物はどれも重厚なのに優美で芸術的だよな」
「ギャラリーのシャンデリアも見どころの一つらしいの。写真で見た感じだと余計な装飾が無くて、品があって素敵だった」
嬉しそうにふわりと微笑む沙羅。
繋いている温かな手を離したくないと慶太は手に力を籠めた。
「わースゴイ、圧巻ねー」
ステーションギャラリーの壁、赤レンガに刻まれた傷は100年の歴史を間近に感じられる。
2階の回廊からは東京駅北口のドームが見渡せ、より迫力のある景色が堪能出来る。
東京駅大正3年創建当時のドーム型天井が復元されたもので、鷲のレリーフを取り囲むように十二支のレリーフが配置され、見ごたえ十分だ。
木製の階段、モダンな現代の手すり、100年も昔のレンガの壁、新古が合わさった螺旋階段を上がり3階までたどり着く。
お目当てのシャンデリアは、白木蓮の花のような、可憐で凛とした趣がある作り。上品でありながら温かみのあるデザインに暫し見惚れてしまう。
「素敵……」
「ああ、良いな。後ろのステンドグラスとのバランスも良い」
慶太が感心しながらつぶやき、指で構図を測るように四角い枠を作っている。
「仕事の事、考えていた?」
沙羅は、慶太の顔を覗き込む。
「そうだな。新しく作るホテルのヒントになりそうで」
「TAKARAリゾートがあこがれの宿として人気なのは、慶太が熱心に取り組んでいるからだよね」
「こんな時まで仕事ばっかりで、面白味もないよな。ごめん」
「ううん、自分で考えた事が形になって行くのって楽しいもの。楽しく仕事が出来るのって、すごく良いことだと思う」
大学を卒業後、あたりまえのようにTAKARAに入った。後継ぎとしての義務感から始めた仕事。仕事が楽しいかどうかだなんて、考えたこともなかった。
ホテル事業は、維持管理に骨が折れる。
けれど、新規の事業に関しては、場所の選定から始まり、何もなかったところに、社員たちと出し合ったアイディアを詰め込んだホテルが出来上がっていく様は充実感がある。
もちろん楽しい事ばかりじゃない、資金繰りに頭を悩ませたり反対意見がでたり、思わぬ横やりが入る事もある。
でも、困難を乗り越え、OPENまで漕ぎ着けた時の達成感は、何物にも代え難い。
「そうだな。大変だけど楽しいよ」
カウンターで抹茶クリームフラペチーノを受け取り、駅の通路に面したカウンター席に腰をおろした。
これから久しぶりに慶太に会うかと思うと、駅構内を行き交う人々を眺めているだけでもウキウキと
楽しい。
あの服が可愛いとか、バッグが素敵だとか、以前よりもファッションに興味を持つようになったのは、慶太と並んで歩く自分を想像してしまうから。
今日の服装はパイピングデザインのワンピースに大判のスカーフ、靴はグレーのツイードパンプス、自分なりにオシャレをしたつもり。
ストローに口を付け、ミルクの甘さと少しほろ苦い抹茶の風味を味わいながら、ふと顔を上げた。すると人混みの中に慶太の姿を見つける。
細身のスーツをパリッと着こなし、背の高さも相まって、まわりの目を引いている。
慶太も沙羅に気付いたようで、肩まで手を上げ合図してくれた。
それだけで、沙羅からは自然と笑みがこぼれ、小さく手を振り返す。
抑えきれない気持ちに背中を押され、ドリンクのカップを手に慶太へ駆け寄った。
「ごめん、待たせたみたいだな」
「ううん、私が早く着き過ぎちゃったの」
「もしかして、会えるの楽しみにしてくれた?」
慶太に笑いながら冗談ぽく言われ、図星を突かれた沙羅は、気恥ずかしさで顔に熱が集まる。
「そ、そう。楽しみだったの。慶太に会えるのが……」
最後の方はもにょもにょと口ごもってしまう。
すると、慶太は少し身を屈め、沙羅の耳元で囁いた。
「俺も沙羅に会いたかった」
耳から入る声に甘く蕩けさせられて、体中に熱が駆け巡る。
こんな人混みの中で抱き合う事も出来ない。それを沙羅は恨めしく思いながら、慶太を見上げた。
「もう、人のことドキドキさせて!」
こそばゆかったのか、耳に手を当てている。身長差で自然と上目づかいになった沙羅は、頬が赤く染まり、慶太の目には可愛く映る。
「俺も沙羅に会えてドキドキしているよ」
「ばか……」
耳まで赤くして、恥ずかしそうに沙羅はうつむいた。
クスッと笑い慶太は手を差し出す。
「さあ、行こうか」
「うん」
差し出された大きな手の上に手を重ねる。
「東京駅にギャラリーがあるなんて知らなかったよ」
沙羅が行きたいと言って指定したのは、東京駅の中にあるステーションギャラリーという施設だ。
仕事で東京に来た慶太を気遣い、疲れないようにとアクセスや混み具合を考えてココにしたのだ。
「私も初めてなの。長年、東京に住んでいるのに全然知らなかった。ホームページを見てみたら建物自体に歴史があって、美術品よりレンガに興味が出て来て」
「明治から大正の頃の建築物はどれも重厚なのに優美で芸術的だよな」
「ギャラリーのシャンデリアも見どころの一つらしいの。写真で見た感じだと余計な装飾が無くて、品があって素敵だった」
嬉しそうにふわりと微笑む沙羅。
繋いている温かな手を離したくないと慶太は手に力を籠めた。
「わースゴイ、圧巻ねー」
ステーションギャラリーの壁、赤レンガに刻まれた傷は100年の歴史を間近に感じられる。
2階の回廊からは東京駅北口のドームが見渡せ、より迫力のある景色が堪能出来る。
東京駅大正3年創建当時のドーム型天井が復元されたもので、鷲のレリーフを取り囲むように十二支のレリーフが配置され、見ごたえ十分だ。
木製の階段、モダンな現代の手すり、100年も昔のレンガの壁、新古が合わさった螺旋階段を上がり3階までたどり着く。
お目当てのシャンデリアは、白木蓮の花のような、可憐で凛とした趣がある作り。上品でありながら温かみのあるデザインに暫し見惚れてしまう。
「素敵……」
「ああ、良いな。後ろのステンドグラスとのバランスも良い」
慶太が感心しながらつぶやき、指で構図を測るように四角い枠を作っている。
「仕事の事、考えていた?」
沙羅は、慶太の顔を覗き込む。
「そうだな。新しく作るホテルのヒントになりそうで」
「TAKARAリゾートがあこがれの宿として人気なのは、慶太が熱心に取り組んでいるからだよね」
「こんな時まで仕事ばっかりで、面白味もないよな。ごめん」
「ううん、自分で考えた事が形になって行くのって楽しいもの。楽しく仕事が出来るのって、すごく良いことだと思う」
大学を卒業後、あたりまえのようにTAKARAに入った。後継ぎとしての義務感から始めた仕事。仕事が楽しいかどうかだなんて、考えたこともなかった。
ホテル事業は、維持管理に骨が折れる。
けれど、新規の事業に関しては、場所の選定から始まり、何もなかったところに、社員たちと出し合ったアイディアを詰め込んだホテルが出来上がっていく様は充実感がある。
もちろん楽しい事ばかりじゃない、資金繰りに頭を悩ませたり反対意見がでたり、思わぬ横やりが入る事もある。
でも、困難を乗り越え、OPENまで漕ぎ着けた時の達成感は、何物にも代え難い。
「そうだな。大変だけど楽しいよ」
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