虐げられて右腕を失った仮面の王子 天才幼女に機械の右腕をもらってたくさんの異世界(宇宙、現代、ファンタジー世界など)で不幸な者たちを救う

渡 歩駆

文字の大きさ
2 / 119
第1の異世界ー右腕を失った仮面の王子

第2話 辛い過去

しおりを挟む
 ……俺は幼いころから鉄の仮面を被らされて生活をしていた。
 正確には10歳からだ。それは俺の母親がなにものかに殺されて間もなくことだった。

 俺の父であるマルサル王国の王を誘惑した貴族の女、サリーノのよって王妃であった母は第2夫人へと落とされ、のちに何者かの手によって殺された。

 子である俺は人を魅了して惑わす容姿をしているという理由で、サリーノの命令によって鍵付きの鉄仮面を被らされていた。

「父上」

 大臣からの問いかけに窮していた国王へ耳打ちし、助言をする。

「わ、わかっておるっ! 貴様に言われんでもっ!」

 ドンと俺を突き飛ばした国王は、先ほど俺の言ったことをそのまま大臣に伝える。

「まったく、貴様は余計なことを言わんでいい。護衛のためにそこに置いているのだからな」
「失礼いたしました」

 身体が大きいからという理由でこんなことをさせられているが、護衛などおよそ王子のすることではない。だが国王の命令ではしかたないと甘んじて引き受けていた。

「その不気味な仮面でわしに近づくな。サリーノの頼みとはいえ、貴様を護衛として側に置くななど気味が悪くてたまらん」
「申し訳ありません」

 こんなのはサリーノの嫌がらせだ。
 あの女は自分の息子であるバルドンを国王とするために、第一王子である俺を貶めて臣下からの評判を悪くしようとしている。

「暗くて陰気な声をだすな。不愉快だ」
「申し訳ありません」
「ふん。そういえば貴様はもうすぐ20歳か」
「はい」

 俺は1カ月に20歳となる。
 我が国、マルサル王国では次期国王となる者が20歳となったとき、手の甲には王家の紋章が浮かび、王位を継承できるわけだが……。

「貴様が王になど、無いだろうな」
「……」
「貴様の母は下級貴族の娘だ。美人であったゆえに王妃としてやったが、それは間違いだった。サリーノのような上級貴族の美女がいると知っていたならば、あの女を王妃になどしなかった。まあすでに死んでしまったからどうでもいいがな。がははっ!」
「……」

 こんな男が父親とは。
 反吐が出るとはこういうときに使う言葉なのだろう。

 母の殺害には国王も関わっているはず。
 しかし主犯は……。

「国王様」

 と、そのとき玉座の間へ女と少年が入って来る。

 サリーノとバルドンだ。

 サリーノは卑しい笑顔でこちらへやって来て、玉座の前へと立つ。

「おお、サリーノっ。美しき我が王妃よっ」

 サリーノを前にだらしない声音を吐く国王を見下ろし、俺は心の中で侮蔑する。

「これはこれはハバン様、相変わらず仮面がお似合いですわね」
「恐縮でございます。母上」
「ハバン、貴様はもうよい。出て行け」
「はい」

 言われて俺は玉座を離れて、扉へ向かう。

 護衛といっても形だけだ。
 不気味という理由で、ほとんどは国王の側にいない。こんなことをするなど本意ではないので、それはまったく構わないが。

「生まれの安い者にはお似合いの仮面ですね。兄上」

 背後からバルドンの声がするも、俺は足を止めない。

「バルドン、話しかけてはなりません。あのような者に」
「申し訳ありません。母上」

 いつもサリーノについて歩いている、母親には決して逆らわない異母弟のバルドン。あんな母親の言いなりな男が王になれるわけはない。

「陛下、いつまであの男をここに置いておくおつもりですか? あんな邪魔な男は辺境へと追放してしまうのがよろしいかと」
「まあ待てサリーノよ。20歳になって紋章が現れなければ、それを理由に追放してやる」
「ではもうすぐですね。ふふふ」
「……」

 そんな不愉快な会話を耳にしながら、俺は玉座の間を出た。

 こんな日々は不愉快だ。
 しかし自分の手に王家の紋章が現れれば変わるはず。

 そんな思いで俺は辛い毎日を送っていた。

 中庭に出た俺は、弓を持って的を射る。

 子供のころから弓は得意だ。
 こうして精神を集中して弓で的を射ていると、疲弊した心が癒された。

 射る矢はすべて的に命中。
 満足した俺は、側のイスに座ってしばらく時間を過ごす。

「ハバン様」

 背後から女性に声をかけられる。
 振り返ると、そこには長い金髪に赤い瞳の気が強そうな顔をした美少女が立っていた。

 彼女の名はソシア・ルン・マリアンド。
 上級貴族の娘で、俺より5つ年下の幼馴染だ。

「さあ、わたくしを連れてどこか遠くへ逃げてください」

 座っている俺にソシアが抱きつく。
 彼女の大きな胸が俺の胸板に押し付けられるが、

「なにを言っているんだお前は?」

 心を乱すことなく冷静な声音で問いかける。
 するとソシアはじーっと俺の顔を見上げ、

「ハバン様、わたくしに抱きつかれて顔を赤くしてらっしゃる?」
「いや」
「嘘。本当は仮面の奥で赤面をしていらっしゃいますわ。だってこんなに美人で魅惑的なわたくしが抱きついているんですもの。焦って赤面しているに違いありませんわ」
「そう言われてもな」

 仮面を取って証明してやりたいが、あいにくとこの仮面は鍵付きだ。
 自分の意志ではずすことはできない。

「俺は王になるために生まれてきた男だ。女性に魅了されて心を乱したりはしない」

 どんな女性に抱きつかれようと、目の前で裸体を晒そうと心を乱さない。絶対に。

「ふーん。なんだつまらない」

 さっきまでの口調を崩してそう言ったソシアはハバンから離れる。

「子供のころの口調に戻ってるぞ」
「こっちが本来のわたくしだしー。あーあ、ハバン様がわたくしを連れてどこか遠くへ逃げてくれたらバルドンなんかと結婚をしなくて済むのに」
「そんなことをここで言うな。誰かに聞かれていたらどうする?」
「わたくしはバルドン様と結婚はしたくありません。あんなデブのマザコンと結婚をするなんて、まっぴらごめんでございますわ」

 彼女は同い年のバルドンと婚約させらているのだが、このようにひどく嫌がっている始末だ。

「あーあ。貴族になんて生まれたくなかった。もっと自由で、行きたいところへ行って、たくさんの素敵な男性と出会う人生を送りたかったなー」
「生まれは変えられない。諦めるんだな」
「むー。でも、ハバン様が王様になれば、せめてバルドンとの結婚は避けれるかも」

 と、ソシアは頬を染めて俺を見つめてくる。

「そんなにバルドンとの結婚は嫌か?」
「うん。わたくしはハバン様のほうが好きだよ」
「ふっ、こんな顔もわからない男に惚れるなんて変わってるな」

 10歳から仮面をつけている。
 もはや自分の顔がどんなだったか思い出せない。
 瞳の色は青で、髪は金色だったか。わかるのはそれくらいだ。

「ハバン様はやさしくて男らしいし」
「そんなに煽てたってお前を連れて逃げたりはしないからな。さあ、俺はこれから出掛けるからもう行くぞ」
「どこへ行くの?」
「少し遠くの領地へな、鉱石が採れるか調査へ行く」

 この国は水害が多い上、海が無いので海産物は獲れない。牧畜をやっている人間も少なく、農作物が水害であまり収穫できない年は食料自給率が極めて低くなる。
 しかし鉱山資源が豊富なので、水害のひどい年は採れた鉱石を他国へ輸出し、代わりに農作物などを輸入して食料を確保していた。

「それってハバン様がわざわざ行く必要あるの?」
「他の者に任せたいんだが、他の者じゃわからないって言うんだ。鉱石が採れなければこの国は終わる。俺が行かないわけにはいかない」
「そっか。うん。っと、えと……あの、さっき言ったのは煽ててとそういうのじゃないから、ね」
「うん? じゃあどういう意味だ?」
「それはその……。ふん。もういいハバン様なんてーっ」

 たたたと駆けてソシアは行ってしまう。

「変な奴だ」

 と、立ち上がった俺は出掛ける準備をするため自室へと戻る。
 ……そしてそれから1カ月後、20歳となった俺の右手に王家の紋章が現れた。

 玉座の間で俺は国王とサリーノ、衛兵や大臣たち、バルドンに王家の紋章を見せつける。
 国王とサリーノは絶句し、文字通り言葉を失っていた。

 これで俺がマルサルの王だ。

 辛い日々から解放され玉座へとつける。
 そう思った。

「あ、あれは偽物の紋章ですわっ!」

 不意にサリーノが叫ぶ。

「馬鹿な。これは間違いなく本物の……」
「そうだ偽物だっ! 貴様の手に王家の紋章など現れるはずはないっ!」
「ち、父上……」

 なにを言われているのかわからなかった。

「黙れっ! 貴様に父などと呼ばれたくはないわっ! この大罪人めっ! 衛兵っ! 衛兵っ! こやつを捕らえよっ! 王家の紋章を偽造した大罪人だっ!」
「お待ちください父上っ! この紋章は偽物などでは……」

 衛兵に拘束されながら俺は弁明をする。

「なるほど。偽物でしたか。国王になりたいからと紋章を偽造するなど、なんて愚かな。ハバン様には恥というものがないようですな」
「まったくです。このような恥知らずな者が王になっていれば我が国はどうなっていたか。想像するのも恐ろしいことです」

 大臣らは口々に俺を侮蔑する言葉を吐く。

「卑しい兄上だ。血が繋がっていることが恥ずかしいよ僕は」
「くっ」

 睨んだ先ではバルドンがうす笑いをして蔑むような視線でこちらを見ていた。

 ここには誰も味方はいない。
 俺の言葉を信じる者など、誰ひとりとしていなかった。

「そやつの右腕を斬り落とせっ! そして辺境の領地へと追放してしまえっ!」
「そ、そんなっ!? 父上っ!」
「死罪にしなかっただけでもありがたく思えっ! この恥知らずの愚か者めがっ!」
「こ、こんな……」

 こんな馬鹿なことがあっていいはずがない。
 紋章の現れた俺は王になるはずだ。それなのになんで……。

「ふん。国王を誘惑した下賤な女の子供らしい恥ずべき愚行ですわね。命だけは助けた国王様に感謝をなさい」
「サ、サリーノ……っ」

 この女さえいなければ。
 この女が父上を惑わしたしたりしなければこんなことには……っ。

 ……その後、俺は肘から先の右腕を切断され、辺境の領地へと追放された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...