30 / 119
第3の異世界ー死にたい魔王
第30話 怒りの勇者に勝負を挑まれる
しおりを挟む
そして最後にフルフェイスの兜を脱ぎ去ると、
「えっ?」
「ふぁっ!?」
「ほわーっ!?」
勇者の仲間である女たちが一斉に声を上げた。
「暑かった」
俺は兜を床へ置いて、ハンカチで顔の汗を拭く。
こんな重武装をして戦う兵士とはたいしたものだと感服する。
「イ、イケメンっ!」
「勇者様よりも背が高いっ!」
「筋肉質で素敵な身体ですわーっ!」
なんだか急に騒がしいな。
近寄って来て騒ぐ女たちのことは気にせず、俺は汗を拭いていた。
「イケメンを超えたイケメンをさらに超えたイケメンだっ! こっちが勇者だよっ!」
なんでだよ。わけわからん。
「あーん素敵ぃ。震えちゃう……」
「見てるだけでわたくしに中の女が強制的に引きずり出されてしまうほどに魅力的ですわぁ」
「ちょ、ちょっと……」
迫る女たちを前に俺はあとずさる。
「こらーっ! ハバンさんに近づくなっ! イケメンってだけで寄ってくる馬鹿女どもーっ!」
「お前もじゃお前も」
リュアンがあいだに入って女たちを遠ざけてくれたので、気を取り直して俺は勇者と向き合う。
……なぜか勇者はさっきと違ってものすごく機嫌が悪そうだった。
「き、貴様……くっ、俺よりイケメン……いや、そんなはずはないっ! 俺のほうがイケメンだっ! イケメンだからなっ!」
「あ、そう」
どうでもいい。
「いや、あっちのほうがイケメンだよ」
「うん。あっちのほうがイケメンだ」
「はい。あちらのほうがイケメンですわ」
「お、お前らぁっ!」
仲間の女たちの言葉を聞いて勇者は拳を震わす。
「へへーんどうだ。ハバンさんのほうがイケメンだぞ。まいったかーっ。えっへんっ!」
「なんでお前が誇らしげなんじゃ?」
なんだか嬉しそうなリュアンを前に、俺はこれからどうしようか考える。
「ぐぬぬぬっ……」
勇者はご立腹のようだ。協力してもらえるような気がしない。
さてどうしたものか……。
「おいお前っ!」
「ん? 俺?」
指を差された俺は怒り顔の勇者をじっと見た。
「俺様と剣で勝負をしろっ!」
「剣で? あ、いや、俺はお前と戦う気はなくて……」
「逃げるのか? はっ! やっぱり臆病者かよっ! 顔は俺様よりほんのちょっぴり良いみたいだが、戦いの強さは圧倒的に俺様のほうが上のようだなっ!」
「まあ別にそれでもいいけどさ」
どっちが強いとか、顔が良いとかどうでもいい。目的とは関係ないことだ。
「ぐぬぬぬぬっ!」
なぜかリュアンが唸りだす。
「ハバンさんっ!」
「なに?」
「あんなこと言われて悔しくないんですかっ!」
「悔しくないよ」
煽られて憤るほど若くはない。
「悔しいですよねっ! ならば戦うべきですっ!」
「悔しくないって」
「おいそこのクソ雑魚ブサイク勇者っ! ハバンさんに負けたらなんでも言うこと聞けよっ!」
「こ、この俺様にブサイクだとっ! い、いいだろう。俺様がそいつに負けたらなんでも言うことを聞いてやる。その代わり負けたらそいつとお前は一生、俺様に尽くすんだ。いいな?」
「いいでしょうっ!」
「よくない、勝手に決めるな」
弓ならともかく、剣術はあまり得意でない。あの男の実力がどの程度かは知らないが、勝てる確証のない戦いをするべきではないと思う。
「ハバン」
「うん?」
ツクナに手招きをされて俺は屈む。
「勝負を受けたらよい。言うことを聞かせられるなら都合がいいじゃろう」
「けど俺、剣術はあんまり得意じゃないんだよ」
「うむ。奴には剣の才能がある。剣で戦うのは不利じゃ」
「じゃあ……」
「平気じゃ。ちょっと耳を貸せ」
「うん?」
「ごにょごにょごにょ」
「えっ? そ、そうなのか? けど大丈夫かな?」
「ちゃんと調べてあるから平気じゃ。ツクナを信じろ」
「わかった」
ツクナの言うことに間違いはない。
「ほれ、剣じゃ」
「うん」
剣を受け取って立ち上がった俺は勇者を見据える。
「な、なんだその剣? どっから出てきた? なんか突然、そのガキの手に現れたような……」
「そんなのどうだっていいだろ。お前も剣を抜けよ」
「ふん。まあいい。勝負を受けたことを後悔させてやるぜ」
腰の剣を抜いた勇者と向かい合って相対する。
「ふっ、一瞬で終わらせてやるぜっ!」
「やれやれ」
剣で勝負を挑んできたということは、剣術に自信があるからだろう。剣の扱いが得意でない自分が普通に剣術で戦っても、たぶんこの男には勝てない。しかし、ツクナの言うことが真実ならば、剣術を使わずに剣で勝つことができる。
「いくぞっ!」
「むっ!?」
勝負が始まった瞬間、目の前で勇者の姿が消えた。
「えっ?」
「ふぁっ!?」
「ほわーっ!?」
勇者の仲間である女たちが一斉に声を上げた。
「暑かった」
俺は兜を床へ置いて、ハンカチで顔の汗を拭く。
こんな重武装をして戦う兵士とはたいしたものだと感服する。
「イ、イケメンっ!」
「勇者様よりも背が高いっ!」
「筋肉質で素敵な身体ですわーっ!」
なんだか急に騒がしいな。
近寄って来て騒ぐ女たちのことは気にせず、俺は汗を拭いていた。
「イケメンを超えたイケメンをさらに超えたイケメンだっ! こっちが勇者だよっ!」
なんでだよ。わけわからん。
「あーん素敵ぃ。震えちゃう……」
「見てるだけでわたくしに中の女が強制的に引きずり出されてしまうほどに魅力的ですわぁ」
「ちょ、ちょっと……」
迫る女たちを前に俺はあとずさる。
「こらーっ! ハバンさんに近づくなっ! イケメンってだけで寄ってくる馬鹿女どもーっ!」
「お前もじゃお前も」
リュアンがあいだに入って女たちを遠ざけてくれたので、気を取り直して俺は勇者と向き合う。
……なぜか勇者はさっきと違ってものすごく機嫌が悪そうだった。
「き、貴様……くっ、俺よりイケメン……いや、そんなはずはないっ! 俺のほうがイケメンだっ! イケメンだからなっ!」
「あ、そう」
どうでもいい。
「いや、あっちのほうがイケメンだよ」
「うん。あっちのほうがイケメンだ」
「はい。あちらのほうがイケメンですわ」
「お、お前らぁっ!」
仲間の女たちの言葉を聞いて勇者は拳を震わす。
「へへーんどうだ。ハバンさんのほうがイケメンだぞ。まいったかーっ。えっへんっ!」
「なんでお前が誇らしげなんじゃ?」
なんだか嬉しそうなリュアンを前に、俺はこれからどうしようか考える。
「ぐぬぬぬっ……」
勇者はご立腹のようだ。協力してもらえるような気がしない。
さてどうしたものか……。
「おいお前っ!」
「ん? 俺?」
指を差された俺は怒り顔の勇者をじっと見た。
「俺様と剣で勝負をしろっ!」
「剣で? あ、いや、俺はお前と戦う気はなくて……」
「逃げるのか? はっ! やっぱり臆病者かよっ! 顔は俺様よりほんのちょっぴり良いみたいだが、戦いの強さは圧倒的に俺様のほうが上のようだなっ!」
「まあ別にそれでもいいけどさ」
どっちが強いとか、顔が良いとかどうでもいい。目的とは関係ないことだ。
「ぐぬぬぬぬっ!」
なぜかリュアンが唸りだす。
「ハバンさんっ!」
「なに?」
「あんなこと言われて悔しくないんですかっ!」
「悔しくないよ」
煽られて憤るほど若くはない。
「悔しいですよねっ! ならば戦うべきですっ!」
「悔しくないって」
「おいそこのクソ雑魚ブサイク勇者っ! ハバンさんに負けたらなんでも言うこと聞けよっ!」
「こ、この俺様にブサイクだとっ! い、いいだろう。俺様がそいつに負けたらなんでも言うことを聞いてやる。その代わり負けたらそいつとお前は一生、俺様に尽くすんだ。いいな?」
「いいでしょうっ!」
「よくない、勝手に決めるな」
弓ならともかく、剣術はあまり得意でない。あの男の実力がどの程度かは知らないが、勝てる確証のない戦いをするべきではないと思う。
「ハバン」
「うん?」
ツクナに手招きをされて俺は屈む。
「勝負を受けたらよい。言うことを聞かせられるなら都合がいいじゃろう」
「けど俺、剣術はあんまり得意じゃないんだよ」
「うむ。奴には剣の才能がある。剣で戦うのは不利じゃ」
「じゃあ……」
「平気じゃ。ちょっと耳を貸せ」
「うん?」
「ごにょごにょごにょ」
「えっ? そ、そうなのか? けど大丈夫かな?」
「ちゃんと調べてあるから平気じゃ。ツクナを信じろ」
「わかった」
ツクナの言うことに間違いはない。
「ほれ、剣じゃ」
「うん」
剣を受け取って立ち上がった俺は勇者を見据える。
「な、なんだその剣? どっから出てきた? なんか突然、そのガキの手に現れたような……」
「そんなのどうだっていいだろ。お前も剣を抜けよ」
「ふん。まあいい。勝負を受けたことを後悔させてやるぜ」
腰の剣を抜いた勇者と向かい合って相対する。
「ふっ、一瞬で終わらせてやるぜっ!」
「やれやれ」
剣で勝負を挑んできたということは、剣術に自信があるからだろう。剣の扱いが得意でない自分が普通に剣術で戦っても、たぶんこの男には勝てない。しかし、ツクナの言うことが真実ならば、剣術を使わずに剣で勝つことができる。
「いくぞっ!」
「むっ!?」
勝負が始まった瞬間、目の前で勇者の姿が消えた。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる