虐げられて右腕を失った仮面の王子 天才幼女に機械の右腕をもらってたくさんの異世界(宇宙、現代、ファンタジー世界など)で不幸な者たちを救う

渡 歩駆

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第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年

第54話 ナイトルカという少年

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 ロキシニアス連合の若き少年ナイトであるルカ・モードガラットはデルマ王国の王都を城に向かって駆けていた。

 王都の至る場所で戦いが起き、家屋が燃え盛っている。

「でやっ!」

 向かい来るオーディアヌ帝国の兵をレヴァンソードで斬り倒してルカは走り進む。

 遅かった。

 オーディアヌ帝国の動きをもっと早くに察知できていれば、ここまで軍を侵攻させてしまうことはなかったかもしれないのに……。

 多くの罪なき人々が殺された。オーディアヌ帝国の愚かな暴力によって。

「しかしまだ……っ!」

 この国を滅びから救うことはできる。ロキシニアス連合の軍隊が城へと入り、オーディアヌ帝国の軍を迎え撃つ形にできれば。

「ナイトルカっ!」

 走るルカをロキシニアス連合の兵が背後から呼び止める。

「どうした?」
「は、たった今、オーディアヌ帝国のナイトであるデズター・デルガモット将軍が一隊を率いて王城に入ったとの報告が……」
「デズター・デルガモットだとっ!?」

 デズター・デルガモット。

 その名を聞いてルカの手は震える。

 デズター・デルガモットはオーディアヌ帝国の優れた3人のナイトであるヴァルキラスの剣と呼ばれる者のひとりで、その力量は数千の兵に匹敵すると聞く。

「くっ……奴が相手では」

 未熟なナイトであるルカでは到底、敵う相手ではない。

「て、撤退を致しますか?」
「……いや」

 ルカは首を横に振る。

「自分は誇り高きヨトゥナのナイトだ。相手がいかに強大でも、それを恐れて逃げるわけにはいかない」
「しかし相手があのデズター・デルガモットでは……」
「それにロキシニアス連合がオーディアヌ帝国の暴虐に背を向けるなどあってはならないことだ。デズターがいる城には私ひとりで行く。撤退は君らだけでするといい」
「あ、ナイトルカっ!」

 止めようとする兵の言葉を背にルカはふたたび走り出す。

 ヨトゥナのナイトに撤退は無い。死よりも、戦いから逃げて誇りが汚れることをもっとも恥と考えるからだ。

 たったひとりで王城に到達したルカは、オーディアヌ帝国の兵を斬り倒しながら、王のいる間へと駆けて行く。
 やがて王の間に入ったルカが見たのは、今まさに国王を殺そうとする大男の姿であった。

「デズター・デルガモットっ!」
「んん?」

 凶刃が王に振り下ろされようとしたそのとき、ルカの叫びがその手を止める。

「なんだ?」

 大男、デズター・デルガモットがこちらを振り向く。

 姿は見知っていたが、こうして相対するのは初めてだ。

「貴様は……ふん。ヨトゥナのナイトか。ひとりで来るとは良い度胸じゃねーか」

 身体の大きさはルカの2倍ほどだろう。筋肉質な全身には灰色のアーマーを纏っており、右手にはレヴァンソードが握られていた。

「なにしに来た? 殺されにか?」
「違う。お前たちを倒しにだ」

 それを聞いたオーディアヌ帝国の兵たちが一斉に嘲笑う。

「俺たちを倒しに? お前ひとりでか?」
「そうだ」

 それを聞いたデズターは大笑いする。

「ぐははははっ! 見たところナイトのようだが、まだガキじゃねーか。お守無しでここにいるってことは、ナイトのクラスはサダじゃないな。サービか」
「……っ」
「サービごときがヴァルキラスの剣である俺様を倒すだと? ヨトゥナのナイトとは難儀だな。死ぬとわかっていても、誇りとやらが邪魔をして逃げることができないからなぁ」」

 くっくっくと低く笑うデズターを前に、ルカはレヴァンソードを強く握る。

「……ヨトゥナの誇りもあるが、私自身、戦いから逃げることを好まない。悪に背を向けて逃げることは、己の男を傷つけることになるからだっ!」

 ルカは剣を振り上げ、目前のデズターに斬りかかろうとする。

「おっと待て。これが見えないか?」

 デズターの持つレーザー銃が王の頭に突き付けられる。その隣では姫が兵に捕らわれていた。

「そこから動けば王の頭を撃ち抜く。ついでに姫様の命も無いぜ」
「ナ、ナイト様……」

 恐怖に顔を引きつらせている王と姫を前に、ルカの足はそこから動けなくなる。

「卑劣なっ! 貴様もナイトならば正々堂々、私と戦えっ!」
「戦えだと? はんっ! サービの小僧が驕りやがって。サンパークラスのナイトだったら余興に遊んでやってもよかったが、お前なんぞと戦ってもつまらん」

 兵たちの持つレーザー銃が一斉にルカへ向く。

「そこでおとなしく、ご大層な誇りとやらを抱えて死ね。そのあとで国王と姫も殺してやる。この国に存在するホーンどももすべてなぁ。ふははははっ!」
「くっ……。なんて醜い。貴様にはナイトとしての誇りは無いのかっ!」
「あるさ、敵を蹂躙できるこの強さ。これこそが俺様の誇りであり、ナイトの誇りだ」
「違うっ! ナイトの誇りとは、力の無い者たちを暴力から守り、その戦いから絶対に逃げない。そして皆の手本となる高い品性と礼節を持つことが真のナイト……ぐあっ!」

 デズターの持つレーザー銃の光がルカの足を撃つ。

「ふん。ズァーグも碌に使いこなせぬくせに、言うことだけは立派だな」
「ぐう……っ」

 地面へと膝をつくルカ。

 ズァーグをうまく使えれば、レーザー銃での攻撃など軽く防ぐことはできた。

 修業が足りない。

 ルカは己の未熟を嘆く。

「うん?」

 と、デズターはルカを見下ろしながら首を捻る。

「お前、以前にもどこかで見たような気がするな」
「……」
「……まあいい。どうせどこかの戦場でちょろちょろ動き回っていたのが横目に映ったとか、その程度のことだろうぜ」

 フンと鼻を鳴らしたデズターは、大きな身体を玉座に座らせた。

「お前に生きるチャンスをやろう」
「なに?」
「這いつくばって命乞いをするならば、見逃してやってもいいぞ」
「断るっ! 悪に頭を下げるなど、男としてナイトとして絶対にしないっ!」
「ならば死ね」
「くっ……」

 向けられたレーザー銃を前に死を覚悟するルカ。

 ここまでか。

 そう諦めた。……そのとき、

「ぐあっ!?」
「えっ?」

 不意に上がる誰かの声。
 目に見えたのは、姫を捕えているデズターの部下が前のめりに倒れる光景だった。

 うしろに誰かいる? だ、誰だ?

 頭からつま先までを真っ黒いアーマーで覆ったその何者かは、デズターの部下から解放された姫を片手で抱きかかえると、こちらのほうへゆっくりと歩いて来る。

「彼女を頼む」

 ルカに姫を託したその何者かは、すぐさま振り返ってデズターに向かう。

「あ、あなたは一体……?」

 ヨトゥナのナイト? いや、こんな人は見たことがない。

「話はあとだ。まずはこの場をなんとかする」
「なんとかって……」

 相手はオーディアヌ帝国でも最強クラスのナイトであるデズター・デルガモット。それにその部下数十人だ。その上、まだ国王を人質にとられているというのに、一体どうするつもりなのか?

「ふん。まだナイトがいたか。しかしこっちには人質が……」

 と、デズターが言ったとき、黒アーマーの彼が右手の人差し指を前へ構え、

 ダンっ!

 と、大きな音を放つ。

「な、なにいっ!?」

 その音とともにデズターのレーザー銃は奴の手から弾かれるように放れ、その隙に黒アーマーの彼が素早く接近していく。

「こ、このっ!」

 振り下ろされるデズターの剣撃をかわした彼は、国王を抱きかかえると、高く跳躍をしてルカの目前へと戻って来る。

「さて、あとは片付けるだけか」

 レヴァンソードを右手に携え、その彼は余裕の声音でそう言った。
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