虐げられて右腕を失った仮面の王子 天才幼女に機械の右腕をもらってたくさんの異世界(宇宙、現代、ファンタジー世界など)で不幸な者たちを救う

渡 歩駆

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第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年

第87話 ルカを鍛える

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 ――することが無いからと言っては申し訳ないが、やることも無い俺はルカを少し鍛えてやることにした。

 ヨトゥナの本拠地ヘルマイムにある訓練室へ訪れた俺は、訓練用のレヴァンソードを構える。

「じゃあルカ君、始めようか」
「は、はい」

 同じくルカが訓練用のレヴァンソードを構える。

「まずは君がどれほどの剣技か見せてもらうよ。ソード以外での攻撃は無しだ」
「わかりました」
「うん」

 ソードを構えるルカの様子を窺う。

 いい構えだ。隙らしい隙も無い。剣の腕は十分に鍛えているようではある。

「では……いきますよっ!」

 斬りかかって来たルカのソードをソードで受け、そしてそのまま横に流す。

「くっ……まだっ!」

 ふたたび斬りかかって来るも、俺は同じように受け流した。

「うん。悪くない。けれど……」

 三度、斬りかかって来たルカのソードを今度はかわした俺は、素早く彼の背後へと回って、首へとソードを近づけた。

「あ……と、私の負けですね。いえ、当然ですけども」

 特に悔しそうでも無く、ルカは苦笑して負けを認めた。

「剣技の基本はできている。決して弱くはないよ。剣の腕だけで言えば、俺と君はそんなに変わらないと思う」
「そ、そんなことはありませんよ。ハバンさんのほうが私よりずっと強いです。現に私ではハバンさんに軽くいなされてしまっていますし」
「それは君の剣はまっすぐ過ぎるからだよ」
「まっすぐ過ぎる、ですか?」
「そうだ。君の剣には嘘が無い。だから相手に読まれやすいんだよ」

 ズァーグを使ってなんとか達人レベルの戦いができているだけの俺は、剣の腕だけで言えばそれほどでもない。その俺でも軽くルカの剣をいなせたのは、彼の剣があまりにまっすぐで読みやすいからだった。

「戦い方にはその人間の心が出る。まっすぐな戦い方は君の心を現しているんだろう。相手も君と同じにまっすぐな者ばかりならばいいけど、しかし実際はそうじゃない。ひどく汚い戦い方をしてくる奴だっている。そういう相手に対して君の剣はあまりに脆弱だ」
「た、確かに……。しかしその……まっすぐでない戦いとはどうしたらできるのでしょうか?」
「ふむ。これは心の問題もあるからすぐには無理かも。そういえばイライゼンは君の戦い方に関して、なにか言っていたかな?」
「特になにも……。悪いとは言っていませんでしたが」
「そうか……」

 イライゼンがどれほどに強いナイトなのかは戦いを見ていないからわからないが、弟子の欠点に気付いていなかったとしたら師匠としてはあまり有能ではないのだろうか。

「あと、君に足りないのは勝利への執念だ。絶対に勝ちたいという強い思いが君には無い。負けて悔しいという思いが感じない。君は本質的に戦いが好きではないのだろう。違うかい?」
「そ、それは……はい。私は戦いは好きではありません。戦わなくても済むのでしたら、そのほうがいいに決まっています」
「俺もそう思う。けれど守りたいものや、許せないものがあるならば戦わなければならない。戦うならば、勝たなければならない。勝つためには絶対に負けてはならないという執念が必要だ。その執念の源泉が戦う理由だけど、君はなんのために戦っている?」
「私はロキシニアス連合の平和やホーンを守るために……」
「もっと個人的な理由がいいな。名誉を得たいとかさ」
「名誉なんて、そんなものはいりません。ロキシニアス連合とホーンの未来を守ることができれば私への報酬なんていらないんです」

 強い思いを感じる声音でルカはそう言う。

 本当にまっすぐな少年だ。世界中がルカのような人間ばかりならば、きっと争いごとなど起きないのだろうなと俺は思う。

「しかしあえて個人的な理由を言えば……」

 朗らかだったルカの表情がキッと締まる。

「私にはこの戦争で殺さなければならない者がいます。その者を殺すまでは例えこの戦争が終結しても、私の戦いは終わりません」
「ルカ君……」

 まだ幼さの残る少年の表情に強い怨嗟の色が浮かぶ。

 彼のような心のやさしい人間がここまで誰かを恨むとは。
 殺したというそれが何者なのかは、きっと聞いてはいけないのだろう。

 そう察した俺は口を噤む。

「あ……すいません。変なことを言いましたね。ははは、忘れてくださいますか?」

 元の朗らかな表情に戻ったルカは困ったように笑う。

「君がそう言うなら忘れるよ。けど、そういう強い思いがあるなら、それを剣に込めるといい。それが勝ちへの執念になる」
「わ、わかりました。やってみます」
「とは言え、訓練でそれをやるのは難しいし、とりあえずはズァーグをもっと使えるようにしようか。ルカ君はどれくらいズァーグが使えるの?」
「はい。レヴァンソードが使えます」
「……ん? えっ? 他には?」
「他にはありません。これだけです」
「こ、これだけって、他にはなにも教えてもらったりしてないの?」
「はい。ナイトになったばかりの頃に訓練校でズァーグの基礎を座学にて学びました。実技での使用は師匠になる方に教えていただけるのがナイトの慣わしです」
「あ、それじゃイライゼンにズァーグの使い方を教えてもらったんだね?」
「はい。レヴァンソードの使い方を学びました」
「他には?」
「それだけです」
「……」

 彼女は本当に師匠としては無能なのかもしれない。
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